グロースハッカー――急成長の「仕掛け人」になろう!ナレッジワーキング!!

ハッカーと聞いて「怖い人?」と思うのは勘違いです。最近話題のグロースハッカーが活躍できる現場は非常に多いのですが……。

» 2014年06月25日 13時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 最近、「グロースハッカー(Growth Hacker)」という言葉を聞く機会が増えたと思いませんか? 「ハッカー」という言葉を含むせいか、何だか怪しいイメージも持つ人もいるようです。

 日本でハッカーといえば、勝手にシステムに侵入して悪さを行う違法行為者のイメージですが、実は正反対。ハッカーとは深いコンピュータ知識などを持ち、課題をクリアする仕掛け人のことです。

 グロース(Growth)は「成長」という意味ですから、グロースハッカーは「コンピュータ技術を用いて成長を仕掛ける人」であって、決して怖い人ではありません。また、IT業界だけの人かといえば、そうでもありません。グロースハッカーの仕事現場は、あらゆる業種のあらゆる課題に及びます。

1000円カットはなぜ自販機なのか?

散髪

 例えば、1000円カット。店に入るとまず自動券売機でチケットを買います。しばらく待つと席に通され、カット開始。シャンプーはないので代わりに掃除機のようなホースで毛を吸い取ります。

 1000円均一なのにわざわざ券売機でチケットを買わせるのはなぜでしょうか? 1つは店員(スタイリストと呼ぶらしい)がお金の処理をしなくて済むというメリットがあります。しかし、実はもう1つのメリットが重要なのです。

 券売機でお金を支払った瞬間、「入店」時刻が記録されます。カットを始めるときには、店員が「カットスタート」のスイッチを入れます。カットした毛を吸い込む掃除機のような器具のスイッチが入ると「カット完了」時刻が記録されます。この結果、「待ち時間」「カット所要時間」が本部で一元管理できるのです。

 1000円カットにおいて、1人当たりのカット効率は生命線です。1人の店員が月に何人の客の髪をカットできるかで、売上が変わりますからですね。「日経情報ストラテジー」誌の記事によれば、1人当たり11分52秒でカットが完了し、店員1人当たり月間800人の客の髪をカットしているとか。

 本部は、待ち時間を少なくするためのオペレーション最適化、カット時間を効率良くするための技術の共有に力を入れることで、顧客満足度の向上と売上の最大化を図ることができるわけですね。

あのFacebookが2年間も新機能追加を封印?

 もともとはIT業界に端を発するグロースハックのコンセプト。そのお膝元である米国にはさまざまな事例があります。例えば、Facebookのユーザー獲得チームのグロースハッカーだったアンドリュー・ジョンズ(Andrew Johns)氏が、2013年7月26日にOpen Network Lab主催セミナーで語った内容はとても興味深いものです。

 彼によれば、Facebookはサービス開始直後に有名メディアに紹介されるや否やユーザー数が増え、資金を得られたそうですが、すぐにユーザーの多くが非アクティブになって定着しなかったそうです。

ともだち

 その後、さまざまな新機能をリリースしますが、やはりユーザー獲得につながらず。全機能を対象に新規ユーザーの獲得とその後の継続率につながっているかどうかを検証したところ、効果がないことが判明します。

 そこで、ユーザーの獲得と継続率上昇に一番影響するものは「友人とつながること」と仮定し、KPI(重要業績評価基準、目標を達成するために定めた特に重要な指標)を「登録10日以内に7人以上の友人とつながる率」に設定しました。

 具体的な施策として、登録したことを友達に知らせる機能、友達検索機能、知り合いかもリストなど「友だちとつながる」ための仕様変更を実施し、ほかの新機能は2年間封印したそうです。彼がユーザー獲得チームに入ったときには7500万人だったユーザーは、ミッションが完了するときには5億人まで膨れ上がっていました。

ビッグデータの前に、グロースハッカー的視点を持とう

 今回紹介した2つの例に限らず、グロースハッカーが活躍できる現場は非常に多いはずです。それは読者のみなさんの仕事現場も然りです。

 グロースハッカーは、数字を重視します。過去の経験や主観的ノウハウにかたよることなく、状況を数値で分析し、目的(売上や顧客数の増加)を達成するための合理的な施策を作り、実行します。

 グロースハッカーは、単なる統計解析者ではありません。マーケティング、接客、商品仕様に精通し、トータルとして会社を急成長させる仕掛け人です。

 グロースハッカー的な仕事の視点はこれからますます重要視されていくことだと思います。「ビッグデータ」という言葉が連日のように使われる今日ですが、データをどう使うか、その舵取りを行う人にかかっています。

 読者のみなさんも、こうしたグロースハッカー的視点を持って、まずは身の回りの業務改善をはかってみませんか?

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

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