ビジネスにおいて「ムダだなあ」と思うことを放置していませんか。ムダな部分にこそ新たなビジネスチャンスの種があるのです。
トヨタでは「ムダをなくそう」とは言わないそうです。「ムダを探せ!」です。
ところで、「ムダ」とは何でしょう? 本来は必要ないのにコストがかかっているもの。もし、そのコストを別のことに使えれば、もっと成果が出たかもしれません。そうした意味で、ムダとは機会損失、機会費用でもあるのです。そして、機会損失を見つけることは、大変大きなビジネスになります。
みなさんは、ネット通販の購入画面や航空券の予約画面、企業のお問い合わせ画面などの入力フォームで、次のような入力支援を見たことはありませんか?
入力した内容に不備があったり入力規則に合わなかったりすると、自動的にアラートを表示して正しい入力を促します。半角/全角の違いなどは自動的に読み取って修正します。郵便番号を数文字入れると住所の候補を表示します。
実はこれ、筆者の会社が特許を持つEFO(入力フォーム最適化)という技術なのですが、この技術を製品化したフォームアシストを導入するとWebの最終購入者が平均6.3%増加します。スマホサイトで12.5%も成約率がカイゼンしたケースもありました(参照リンク)。
なぜなら、入力が面倒くさい、入力の仕方がよく分からないといった理由で入力フォームを離脱する人が非常にたくさんいるからです。これは大きな機会損失です。機会損失を埋めれば、非常に大きなメリットが生まれます。
筆者の知人が経営している「ラクスル」というネット印刷サービスの会社を紹介しましょう。この会社はネット印刷というスタイルからも想像できるとおり、普通の印刷会社に発注するより安い(カラー名刺100枚で500円、チラシ1枚1円程度)のですが、ここにユニークなビジネスモデルがあります。
一般的な印刷会社では、印刷機の稼働率は平均40%程度しかありません。それ以外の時間は遊んでいるわけです。まさに機会損失です。ラクスルは、その機械の空き時間にラクスルのオーダー分を印刷してもらうことで、通常稼働時の価格よりもずっと安い金額を実現しています。こうしたアイドルタイムを利用したビジネスは非常に伸びており、印刷市場全体が6兆円あることを考えると大変、将来が有望な会社です。
最近、新製品のロゴを「ランサーズ」というクラウドソーシングを使って発注しました。ランサーズには全国のフリーランサーが登録しており、発注側が仕事の内容と条件を提示すれば、それに応じられるフリーランサーが手を挙げるという仕組みです。
これまでのロゴ作成はプロトタイプも含めて自社内で行っていました。ほかの業務の合間に行うため1〜2週間かかっていたうえ、1人のデザイナーが制作するとどうしても偏りが出てしまうという課題がありました。
しかし、ランサーズを使うと2日で79件の応募がありました。クオリティの高いものも多く、たった2万円で多くのバリエーションを比べられ、その中からロゴを決めました。
フリーランサーに限らず、事情があってフルタイムで働けない人、定年で優れた能力を眠らせることになる人、田舎に住んでいて都心にある企業の発注を受けられない人など、能力やスキルがあるのに使うチャンスを失っているという機会損失をこうしたプラットフォームができることでなくせば、発注側・受注側双方に大きなメリットがあります。
機会損失を「なくす」のではなく、「見つける」ことで大きなビジネスチャンスになるのです。冒頭で紹介したトヨタの生産方式では、主に7つのムダがあると言われています。
ぜひ、みなさんも身の回りのムダを探してみませんか?
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
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