「おもしろい」と思えば、おもしろくなるあせらない練習

ほとんどの物事は、おもしろいと思えば、だんだんおもしろくなってくるのです。

» 2014年06月18日 11時00分 公開
[斎藤茂太,Business Media 誠]

集中連載「あせらない練習」について

本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。

休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。

 ・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
 ・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される

不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。

本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。


 世の中には、おもしろくないことがたくさんあります。そういう「おもしろくないこと」「つまらないこと」にわずらわされて、人はグチをこぼします。

 「仕事なんて、ちっともおもしろくない」
 「何をやってもうまくいかず、おもしろくない」
 「飲み会に行っても、ちっとも楽しめない」
 「映画を見てもテレビを見ても、本を読んでも、つまらないものばかり」
 「家事なんて同じことの連続。全然、おもしろくない」

 さまざまな「おもしろくないこと」が世の中に蔓延しているようです。私自身、おもしろくないと感じることはないわけではありませんが、長年の経験から、

 「物事は『おもしろくない』と思ったとたんに、本当におもしろくなくなる」

 ことを知っています。だから、たとえ「おもしろくない」と感じても、「やる以上は楽しもう」とする習性が身につきました。また、やらなくてすむことなら、

 「おもしろくないことに、わざわざ時間を費やすこともない」

 と、そのおもしろくない行為自体から、さっさと身を引くようにしています。

 たったこれだけのことで、「おもしろくないこと」をかなり減らすことができます。要は気の持ちよう。たいていの物事は「おもしろい」と思えばおもしろくなるものなのです。

 どうせならおもしろさを見つける名人になってみませんか? 心を「おもしろくない」という思い込みから解放し、「おもしろい」という逆の思い込みで満たすのです。そうすれば、心が「イヤだ、イヤだ」とあせるのを防ぐことができます。

 広告代理店に勤める女性は、そんな「おもしろさ探し」の達人です。彼女が言うには、

 「例えば、期待していたドラマがすっごくつまらなかったとします。ほかにやることがあればスイッチを切りますが、なければそのまま見続けます。『このくだらなさがおもしろいのよ。こういうつまんないドラマを観てつぶす時間がおもしろいのよ』と自分に向かって言うのです。すると、ドラマに突っ込みを入れる楽しみとかが出てくるんですよね。

 仕事だって、そう。正直、つまらない仕事も多いですよ。でも、探せばおもしろいことはたくさんあります。

 例えば、処理スピードの自己記録に挑戦するとか、宴会の幹事を押しつけられたらイベント・プロモーター気分でやる、社内報の原稿を頼まれたら『類語大辞典』を駆使してふだん使わない表現に挑戦する、大量のコピーをするときは『資料を読む時間ができた』と喜ぶ、経費精算をしながら『ここを切り詰めれば、会社の経費節減に貢献できたわ』と反省点を見つけながら節約の楽しさを味わう、おつかいを頼まれたら相手の顔や対応をクイズ感覚で予想するなど、その気になればいろいろな楽しみ方があります。

(画像と本文は関係ありません)

 あと家事もね、目的さえ忘れなければ楽しいものですよ。家がきれいになると思えば掃除も楽しいし、お日様のポカポカ感が残る布団にくるまる瞬間の幸福感を想像すれば、布団干しも苦ではなくなります。料理だって、味をクリエイトする気で取り組めば、たちまち楽しくなります。

 仕事も日常の雑用も、目的を見失うからつまらなくなっちゃうのではないでしょうか。どんな目的でも、ないよりあったほうがいい。モチベーションが上がりますよ」

 どうせ仕事をするのなら、彼女のように目的を持って前向きに楽しみたいもの。あせりからくる後ろ向きの思い込みは心から一掃してしまいましょう。

(次回は、「私ならできます、と言える人になる」について)

 →連載「あせらない練習」バックナンバーはこちら

著者プロフィール:

斎藤茂太(さいとう・しげた)

1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。


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