誰しも夢はあるものです。あなたが夢をかなえたいと思うなら、「いつか」ではなく、達成するまでの期限を具体的に決めることが大事です。
本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。
休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。
・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される
不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。
本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。
西川きよしさんが参議院議員に当選したときだったでしょうか、「小さなことからコツコツと」と言っていました。流行語のようにもなり、評判になったことを覚えています。
これはとてもいい言葉! 夢に向かって人生を歩む人すべてが、この言葉を胸に刻んでおくべきだとさえ思います。
というのも、「ラクして夢をかなえよう」などと、ムシのいいことを考えている人が意外と多いからです。
極端な例ですが、私の知り合いにも「僕は小説家になる!」と豪語しながらも、800字の文章すら書いたことがない、小説もろくすっぽ読んだことがない、という人がいます。こういう人は言い換えれば、
「欲張りなくせに、努力をしない」
人でもあります。昔から、
「ローマは1日にしてならず」とか、「千里の道も1歩から」と言われるように、何事もとにかく手近なところから始めて、コツコツと努力を重ねなければ夢は達成できません。何の努力もせずに大事を成し遂げ、一足飛びで夢をかなえることなど不可能と言ってもいいでしょう。だから、成果を欲張ってあせってはダメ。
「小さなことからコツコツ始める」覚悟を決めなければなりません。
ただ、夢は一朝一夕にかなうものではないだけに、どこから手をつけていいやら途方に暮れてしまう人もいるでしょう。何をしていいか分からないから行動できない、というわけです。
ならば、決めればいいだけのこと。まず「いつか、夢をかなえる」なんてあいまいな考えを捨ててください。そして、
「いつまでに、夢をかなえる」
という期限を設けるのです。これだけで、夢に対してかなり本気になれます。
次に、夢をかなえるためには何が必要かを考え、だいたいのプロセスを計画します。その際、小さな目標の旗を立てるといいでしょう。随所に「達成感」というご褒美ポイントを設けておくと、現状の自分と夢を達成した自分との距離感がつかみやすいし、「次はあそこ、その次はあそこ」と常に前を向いて進んでいきやすいのです。
逆に、このご褒美ポイントがないと、給水ポイントのないマラソンコースを走るようなもの。ゴールまでの距離がとてつもなく遠く感じられ、「ここまで達成した」という実感も持てず、それだけ挫折の危険が高まります。
具体的には、例えば「7年後に小説家として独立する」というゴールと期限を設定した作家志望の人がいます。そのために必要な行動はたくさんありますが、次のような計画を立てたそうです。
かなりおおざっぱですが、こうして書き出してみるだけで自分がいま何をすべきか見えてきます。行動するうちに、新たにやるべきことも見つかるでしょう。そうしたら、それをまたプロセスに加えればいいのです。
また、なかなか目標通りに進んでいけなくても、落ち込むことはありません。随時、プロセスを見直して軌道修正をするまでのことです。
とにかく、行動しなければ何も始まりません。あまり欲張らずに、あせらずに、ムリのない範囲で夢達成プロセスを描き、最初の1歩を踏み出しましょう。
夢に向かうとき、その道のりはどれほど遠くとも、苦になりません。
「惚れて通えば千里も一里」ではありませんが、夢という恋人を手に入れるためなら、どんなに遠いところから歩み始めても、どんなに険しい道であろうとも、嬉々として歩いて行くことができるはずです。
(次回は、「よい神経質、悪い神経質」について)
斎藤茂太(さいとう・しげた)
1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。
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