那覇空港や国際通りで、リクルートポイントを軸にした観光地O2O施策が実施中だ。導入無料のモバイルPOS「Airレジ」を導入した、かりゆしウェア店に話を聞いた。
那覇空港に降り立ち、スマホの電源を入れるとプッシュ通知が届いた。1000円分のリクルートポイントが付与されたのだ――。
これは、リクルートライフスタイルが沖縄で2014年8月末まで実施している観光地O2O施策の1つ。「ジオフェンス」という位置情報を活用した技術を用い、同社の「Airウォレット」アプリをインストールしたスマホが特定のエリアに入ると通知する。旅行の起点となる空港でポイントを付与することで利用者に“気付き”も与え、来店促進を狙う。
沖縄での取り組みは、那覇空港や国際通りなど、約40の物販店(土産物屋)で展開している。観光地O2Oとしては、2014年2月から実施している熱海エリアに続き2件目だ。
観光客が使うAirウォレットは、リクルートポイント(1ポイント=1円相当)を貯めたり、使ったりするためのアプリだ。ポイントが使える店をジャンル別、距離別などで検索でき、各店舗ごとに営業時間、電話番号、所在地、コメントなども表示する。
もっともアプリそのものは特定の観光地に属さない汎用アプリであり、普段からリクルートポイントを活用しているユーザーにとっては「地元のカフェで貯めたポイントで、観光地のお土産を買う」といった使い方もできる。宿泊や移動手段の予約を「じゃらん」で行えば、そのポイントも活用できる。
一方、店舗側は、モバイルPOSレジアプリ「Airレジ」を導入している。一般的なPOS端末は初期導入費用が100万円超、毎月の保守費で5〜10万円というコスト面がネックとなるが、Airレジは初期費用も月額利用料金も不要だ(iPadの無償レンタルも実施)。
また、集客を担うAirウォレットと連動するだけでなく、クレジットカード決済のSquareとも連携している。SquareがJCBに対応していないという不利はあるが、こちらも初期導入費や保守費といったランニングコストが不要なうえ、カード決済手数料は3.25%と他社よりも安く、最短で翌営業日入金というサービス体系は、利ザヤの少ない小売店にとって大きなメリットをもたらす。
リクルートは、リクルートポイントを基軸にさまざまなサービスを急速に連動させている。その中でAirレジの“完全無料”戦略は、リクルートポイント利用可能な店舗を増やすという点で、ユーザーのライフイベントを横串にしてより多くの収益を得るという同社のビジネスモデルに合致する。今後、Airレジは、「ホットペッパーグルメ」などとも連携し、集客力を強化する予定だ。
国際通りにある、かりゆしウェア専門店「PAIKAJI」は、沖縄在住の職人が1枚1枚を手作りで仕上げた天然素材のアロハシャツを販売している。商品の価格帯は1万〜2万円が中心で、生地から選ぶオーダーシャツも手掛けている。
「Airレジの操作は思っていた以上に簡単でした。お客さんからは『iPadでこんなことができるんだ、面白いね』という驚きの声が寄せられます」というのは、ショップスタッフの新見碧さん。個人でもタブレット端末を使っているといい、モバイルPOSにも違和感がなかったそうだ。
普段の来店者の半数以上はリピーターというPAIKAJIだが、Airウォレットを使った観光地O2Oを始めてからの約2週間で、1日2人程度の新規客の取り込みに成功している。1点当たりの単価が高いということもあり、Airウォレットを使ったリピーターはまだいないそうだが、今後の利用者増を期待する。
多くのアロハシャツが展示され、取材陣が6人も入ると少し手狭に感じる店内。オーダーシャツの打ち合わせにも使うのだろう、レジスペースは少し広めのカウンターテーブルになっている。
「お店自体が小さいということもあり、レジがiPadになるとスペースが有効活用できます。また、ホテルの会場を借りた販売会などのイベントも実施していますので、持ち出せるAirレジは便利ですね」(新見さん)
いくつかの課題が残っていることから、PAIKAJIでは既存のPOSレジも併用している。例えば、クレジットカード利用者が多く、JCBが利用できないSquareだけでは対応しきれないのも課題の1つだ。購入者がVisaやMasterCardを使う場合は、決済手数料が安いSquareが使えるAirレジを積極的に使うという。
「例えば、顔は覚えていてもパッと名前が出てこないお客さんが来たときに、Airウォレットをかざすと名前が表示されるこのシステムは便利です。いままでのPOSレジと同じレベルの顧客管理がAirレジでもできるようになれば乗り換えたいですね」(新見さん)
一般的に、小売店が顧客向けのポイントサービスを実施すると、顧客満足度の向上につながるものの、利用者が使うポイント分は店舗側の持ち出しになる(ポイント引当金)というジレンマもある。その点、リクルートポイントを採用すれば、ポイント消費分はリクルートから入金されるので収入が減ることはないというメリットもある。
リクルートライフスタイルの担当者によれば、今後、顧客管理機能の強化や商品データの移行支援などの体制作りを進めていくそうだ。
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