体を動かすことが、脳にとって一番の疲労回復法あせらない練習

体を動かすことは眠ることと同様、脳にとっては非常にいい「疲労回復法」になります。煮詰まってあせってしまったときの対処法として、とても効果的です。

» 2014年05月28日 11時00分 公開
[斎藤茂太,Business Media 誠]

集中連載「あせらない練習」について

本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。

休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。

 ・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
 ・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される

不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。

本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。


煮詰まったら体を動かす

 職場で「クマさん」と呼ばれている男性がいます。彼には、「煮詰まるとオフィスを歩き回る」クセがあるからだそうです。

 「デスクにじっと座って考えていると、頭のなかがグチャグチャになってくるんです。ああでもない、こうでもない、あれがいいかな、これがいいかなと、いろんな考えが現れては消え、現れては消え――。頭だけではなく気持ちまでモヤモヤ、イライラしてくるんですよね。

 そんなとき、ちょっと歩くと、不思議と考えが1つに収束していくことが多いのです。だから僕は、煮詰まったらまず、デスクで1つ大きな伸びをして、その後うろうろとオフィスを歩き回ることにしています」というのが彼の言い分です。歩いている途中で彼が、「よし!」と叫んであわててデスクにもどる姿は、同僚たちにしょっちゅう目撃されているそうです。

 必死になって考えるとき、脳には大きなストレスがかかっています。そのために“機能不全”というか、頭がよく働かなくなることがあります。このストレスを軽減してあげるには、体にストレスを与える、つまりちょっと運動すると効果的なことが多いようです。体へのストレスが頭にかかっていたストレスを相殺してくれるのです。

 心に悩みを抱えているときも同じ。体を動かすと、ウソのようにあせりとストレスが消えることはよくあります。

 あなたにも経験があるでしょう? 体を動かすことは休むことと同様、脳にとっては非常にいい「疲労回復法」になるのです。

 しかも、煮詰まってしまうほど一生懸命考えていたことは、考えるのをやめたからといって、簡単に消えてなくなりはしません。脳の緊張が解けることによって、バラバラに混在していた考えが自由に動き始め、やがて有機的に結びついて1つの考えにまとまっていくことが期待できます。

 体を動かすことなら、何だってかまいません。

 キッチンまでコーヒーをいれにいくとかデスク周りの掃除をする、ロッキングチェアに座って体を揺らす、ベランダに出て深呼吸をする、近所に買い物に出かけるなど、ちょっとした気分転換になることをすればいいでしょう。

「寸暇を惜しんで頭を使う」のではなく、「寸暇を作って体を動かす」ことをすれば、頭を非常にいい状態に保つことができるはず。煮詰まってあせってしまったときの対処法として、とても効果的ですよ。

(次回は、「失敗を真摯に認める」について)

 →連載「あせらない練習」バックナンバーはこちら

著者プロフィール:

斎藤茂太(さいとう・しげた)

1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。


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