マンガ「ジャイキリ」に学ぶ、“変化に強いチーム”の作り方サイボウズ式(1/2 ページ)

会社は社員に対して、新人研修やOJTといった「学び」の機会を与えています。個々の学びは、企業という組織の成長や発展に必須の要素となります。今回はマンガ『GIANT KILLING』を読みながら「学び」について考えます。

» 2014年05月08日 11時00分 公開
[サイボウズ式]
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本記事は「サイボウズ式」で掲載した記事「これからの時代を生き抜くための『学びかた』とは――変化に強いチームを作り出すコツ」を一部抜粋・編集して掲載しています。


 会社は社員に対して「学び」の機会を多く与えています。よくある「新人研修」のような社員それぞれの役割や職歴に応じた研修プログラムもあれば、現場で上司や先輩、同僚を通じて仕事のやり方を学んでいくオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)、実際に任された仕事を進めていく中で、本人が成長をしていく過程も重要な学びです。

 個々の従業員の学びは、企業という組織の成長や発展に必須の要素となります。しかし、旧来の会社組織を支えていた終身雇用という前提が崩れるなか、組織の成長のために必要となる学びの姿にも、変化が求められているようです。

 今回取り上げるマンガは、講談社『モーニング』で連載中の『GIANT KILLING』(綱本将也原案、ツジトモ作、以下「ジャイキリ」)。法政大学キャリアデザイン学部准教授の梅崎修先生と、ジャイキリを読みながら考えてみましょう。

「学び方を学ぶ」重要性

 ジャイキリでは、監督の達海が選手たちにちょっと奇抜な練習をさせるシーンが出てきます。例えば、158話(17巻)では、メンバーのいつものポジションを入れ替えて練習試合をさせています。達海自身は、そのことで選手たちに「何を教えたいのか」について、ほとんど説明をしません。

梅崎: 実は、スポーツを題材にしたマンガや映画ではよくあるパターンです。

 最終的に意味がある練習や謎の特訓でも、やらせる側は最初にその意味について教えないのが定番ですね。ジャイキリでは、「理由を告げずにいきなりヘンなことをさせる」というのが、達海のキャラクターの一部になってますね。

 それが原因で、選手から不満が出たりします。ストーリーとしては盛り上がりますが、現実的には、もうちょっと論理的に意図を説明することで誤解を防ぐようなやり方をしたほうがいいかと思ったり……。

梅崎: あながちそうとも言い切れないんですよ。実は、達海のこのやり方には、頻繁に変化する組織での「学び」のヒントがあるんです。それは「学び方を学ぶ」という視点です。

 いわゆる「学校」の教育では、その人が考え、答えを導き出す基礎中の基礎となる「知識」を教えることに大半の時間が割かれます。達成度を測るテストの「問題」には対となる「答え」があり、それを正しく導き出すことが求められるわけです。

 しかし、実社会で起こる問題には、一対の答えなどほぼありません。さらに、変化のスピードは速くなっており、前にうまくいったやり方が今回は通用しないといったことも増えてきます。

梅崎: 変化のスピードが速まれば速まるほど、一対の答えを出す知識ではなく、汎用的な「学び方」を身につけておく必要性が高まってきます。でないと、状況に適応できなくなってしまう。実は、ジャイキリの中では、かなり頻繁、かつ細かく、そのための示唆が描かれています。

視点を変えて「気付き」を待つ

 梅崎先生によれば、その大きなヒントとは「俯瞰の視点を与えること」なのだとか。

梅崎: メンバーのポジションを変えてプレーさせる話(158話、17巻)や、試合に出場していない選手が、スタンドから試合を見て、ピッチの選手に向けたアドバイスをプラカードで出すエピソード(168話、18巻)がそうです。

 このあたりは一貫して「俯瞰の視点で仲間のプレーを見る」ことで何かに気付くことの大切さが描かれています。

 「気付いていない状態」とは、自分単独の視点、つまり狭い視野でしか物事を見ていない状態とも言えます。

 ジャイキリでは、その視点そのものを半ば強制的に変化させることで、本人に「何かを気付かせる」描写が多くあります。この気付きによって、本人は一気に成長します。視点の変化や視野の広がりによって、全体の状況に気付くことが「学び方を学ぶ」上で大切な要素というわけです。

 ――でも先生、それって実際の組織の中でやろうとすると、結構難しいですよね。

梅崎: 確かに簡単ではないですね。マンガの中ではそんな状況の中でも、だれか1人、達海の「真の意図」に気付く人がいて、「監督が教えたかったのはこういうことなんじゃないか」ってセリフで説明してくれるんですけどね(笑)。

 ただ、人はある環境を与えられると急激に成長する可能性があり、その成長を促すためにいろんな経験をさせることが有効な「学びの場」になることは、会社でも生かせる考え方だと思います。

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