ドラえもん、オバケのQ太郎、パーマンなどの代表作をもつマンガ家、藤子・F・不二雄さん。彼の発想術を紹介する本を読むと、起業や新規ビジネスにも通じるところがあります。
興味本位で読んだ藤子・F・不二雄さんの発想術に関する本。事業や製品のアイデアを考える際にも非常に有効ないくつかの考え方がありました。ドラえもん、オバケのQ太郎、パーマンなど児童マンガの草分けである藤子・F・不二雄さんのマンガ道と起業や新規ビジネスの共通点とは?
藤子・F・不二雄さんを知らない人はいないでしょう。ドラえもん、オバケのQ太郎、パーマンなど児童マンガの草分けで、多くのメガヒットを生み出したクリエイティブの殿堂のような人です。
自身の少年期はのび太そのものであったということですが、のび太のイメージとは裏腹に、何の保証もないマンガの世界に飛び込みます。小学校のときに出会った盟友、安孫子さんと2人で富山から上京。46年のキャリアで5万ページのマンガを描いてきました。そして、みなさんがご存じのとおり、彼らが住んだトキワ荘は有名マンガ家の聖地として知られるようになりました。
その藤子さんが考える発想術が、事業やサービスの企画にも役立ちそうなので、ぜひ紹介したい。それが今回の記事の趣旨です。
これって事業企画にも同じこと言えますよね。飲み屋なんかで盛り上がってふとした瞬間に出たアイデアはとても面白くても、会議室にこもって合議制で決めていったアイデアは角がとれて面白くなくなってしまう。ビジネスプロセスっていうのは、アイデアを面白い部分をどんどん削っていく傾向にあるのです。
筆者自身も長らく新規事業畑を歩んできたのですが、提案が役員会で回されたときに、どんどん角が削れて面白くなくなってしまうのを何度も見ました。
「これはいかん。このままではアイデアがどんどん廃れてしまう。自分でやらなきゃ」
そう考えたのが、起業のきっかけでした。何かカッコいいことやってやろうとか、大義があったわけではなく、自分のアイデアを誰も拾ってくれないのであれば、自分で孵化(ふか)させてあげようと思ったのが、筆者のアントレプレナーシップの出発点だったのです。
人気のマンガというものは、個性と一般性が非常に高い次元で両立したもので、こうすれば人気が出ると考えて小手先でやったものは結果としてうまくいかないものだと藤子さんは説明しています。
「こうやればいいだろう」「子供だからこれでいいだろう」。そうした考え方は上から目線です。子供になりきり、そして、まんが家自身がのめり込むほど面白いと思ったものが、幸運にも多くの人も共感できたときに、ヒット作品というのが生まれるということです。
しかし、クリエイター自身の世界観が強すぎるとひとりよがりになってしまうし、共感性ばかりを気にすると、どこにでもある面白みのない作品になってしまう。バランスが難しいですね。
でも、基本的には自分自身が楽しめないものはうまくいかないのかもしれません。オーディエンスの共感は後からついてくるものであって、前もって予測することはできません。自分自身が楽しめ、なおかつそれを客観的に見る目を養うことが大事ですね。
藤子さんも、自身の体験などをベースに、これまで夢中になった「アラビアンナイト」「西遊記」などの冒険ものの断片的なエッセンスを取り込んでいます。その結果、ロボット(ドラえもん)や幽霊(お化けのQ太郎)など、子供たちを主人公にした日常生活に登場する摩訶不思議な世界感を生み出しているのですが、その一方で、その時代の子供たちを取り巻く環境(お小遣いの額、生活スタイルなど)を反映したり、多くの人の目に触れさせたりしてブラッシュアップすることもやっています。
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