「ここだけは譲れない」――そんな“弱点”を抱えた交渉の突破法プロが教えるビジネス交渉術 第4回

ここだけはどうしても譲歩できない……。そういった弱点を持って交渉に臨むと、交渉相手から弱点を突かれて、不利になってしまうことはよくある。そんなとき、どうすればよいのだろうか。

» 2014年04月17日 10時00分 公開
[PR/Business Media 誠]
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 ここだけはどうしても譲れない、という条件を抱えて交渉に向かうことはないだろうか。もう価格は下げられない、もう部署の人は減らせない、もう納期を先延ばしにできない――そんなギリギリの場面も、もちろんビジネスでは起こりうる。

 交渉とは、互いが譲歩できるポイントを交換していくものなので、本来は譲歩できない事柄を持つのはよくない。スムーズな交渉ができなくなるし、場合によっては相手に有利な材料となってしまう。はっきり言ってしまえば、厳しい状況だ。こんなときはどうすればいいのだろうか? 今回はとある部品メーカーの営業を例に考えてみよう。

会社の命運をかけた値上げ交渉、どう突破する?

 株式会社誠パネルに勤める営業、西村治、30歳。誠パネルは長年ノートPCのディスプレイを生産してきた部品メーカーで、大口の顧客はPCメーカーのB社だ。西村がB社の担当になってから2年。何度も壁にぶつかりながらも、売り上げのノルマをどうにかクリアしていた。

 さて、来週の頭にB社との定例会議が設定されたが、西村の気は重い――というのも、会議において重要な交渉を部長から任されたからだ。

部長: 次週のB社との定例会議だが、取引価格について先方と交渉してほしい。具体的には、価格を1割上げることを目標にしてくれ。

西村: え、ここ10年ほどパネルの取引価格はずっと変えていませんよね。どうして今のタイミングで1割も上げるんですか? さすがに先方も受けてくれませんよ。

部長: 君も知っていると思うが、今の会社をめぐる状況は厳しい。ギリギリまでがんばってきたが、やはり価格を上げなければ会社が立ち行かなくなると、役員会議で決定した。難しい交渉だと思うが頼む。会社の経営に関わるので、必ず成功させてくれ。

西村: は、はい……。

photo ノートPCの売れ行きが落ちこみ、部品メーカーにもしわ寄せが……という状況だ

 西村が入社した当初は、会社の業績もよかったが、最近はノートPC自体の需要が減り、会社全体の業績は落ち込んでいた。さらに原材料費が円安で少しずつ値上がりしている。このままでは会社は立ち行かなくなってしまう、と会社の経営陣はある決断をした。健全な最低限の利益が確保できる価格まで、取引価格を上げるという方法だ。会社の命運がかかった価格交渉。このピンチを西村はどう切り抜ければいいのだろうか。

 価格、納期、予算、仕様など「これだけは、どんなに相手が粘っても変更しようがない」というポイントは、自らが設定したものではなく、他者から課せられた制限であることが多い。このケースのように、会社や部門全体が何らかのポリシーに基づき、外部との取引条件を変更するときなども“交渉不可”な事柄が出てきがちだ。

 交渉不可の事柄を抱えている場合、多くは頭を下げてお願いすることになるだろう。相手がそれで受けてくれれば問題ないが、Noと言われた場合は一転して窮地に陥る。なるべくならば、そういった状況は避けたい。

“交渉できる”事柄で、交渉不可の事柄を取り囲む

photo 交渉不可の事柄がある場合、事前の準備がより一層大切になる

 交渉不可の事柄がある場合、事前にできるだけ“交渉できる”事柄を用意することが大事になる。例えば「価格は550円から下げられない」が、「注文のリードタイムを3週間から2週間に早める」「貴社専任のサポート要員を割り当てる」「配送センターではなく、指定の場所に指定の荷姿で納品する」「現在B社が他社から購入しているほかの製品を、他社よりも安い価格で提供する」などだ。

 交渉において、交渉できない要素はアウト・オブ・バウンズと呼ばれる(ちなみにゴルフでは略してOBと書かれる。これは競技区域外という意味)。交渉課題にアウト・オブ・バウンズが含まれる場合、それを交渉できる事柄で取り囲めるように用意して、交渉に臨もう。両者を合わせて相手に提示することで、相手が交渉不可な条件を“強いられている”と感じさせないようにする。

 もちろん、交渉可能な事柄を提示する際には「どのような内容なら、相手は関心を持つか」をよく考え、情報を集める必要がある。相手にとって意味のないことをいくら示しても、このような状況では交渉が前に進まない。

 「御社から製品についてお問い合わせを頂いたときに、ご回答をお待たせしてしまっていることはないですか?」というようなやりとりを経て、相手に関心があると分かれば「この条件に同意していただければ、それを解決するために、御社専任のサポート要員を配置することができます」と交渉可能な事柄をセットでぶつける。これを繰り返していくことで、交渉不可という“弱点”を攻略できるのだ。


 いかがでしたか? 譲れない条件も、考え方によっては交渉を進める材料になるのです。交渉術というのは頭で分かっていても、実践ではなかなか上手くいかないもの。実際にトレーニングを行い、練習をしなければ身につきません。記事では書けなかったテクニックもたくさんあるのです。

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提供:スコットワーク株式会社
アイティメディア営業企画/制作:誠 Biz.ID編集部/掲載内容有効期限:2014年7月13日

著者プロフィール:増倉洋

スコットワーク株式会社 代表取締役コンサルタント。英国発、世界34カ国24言語で20万人以上をトレーニングしてきた交渉トレーニングの専門家集団スコットワークの日本における代表。同社初の日本人講師として、2013年より日本語で交渉トレーニングを実施している。

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