限られた時間と人員で最高の「カイゼン」を実現するフレームワークナレッジワーキング!!

日常的に発生するさまざまな意見や要求に対して、場当たり的に対応するのは上策とはいえません。限られたリソースで最高のパフォーマンスを発揮するには、優先順位付けが肝心なのです。

» 2014年04月16日 10時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 世界共通のビジネス用語となった「KAIZEN」。私たちの仕事やプライベートでも日常的にカイゼンは実行できます。今回はカイゼンを成功に導くための便利なフレームワークを紹介します。

アンケートを基に商品をカイゼンする

 筆者の会社では、企業向けのマーケティング支援ツールをクラウド型で提供しています。クラウド型の場合、月額の利用料金をいただくビジネスですから、売り切りではありません。なるべく長い期間使ってもらうため、日々、商品のカイゼンを行う必要があります。

 みなさんの会社でも、商品やサービスのカイゼンに向けて顧客の声、販売担当者の声などを拾い集めていることでしょう。「デザインを見やすくしてほしい」「新しく○○の機能を入れてほしい」「不具合を直してほしい」など、その内容はさまざまです。

 しかし、こうして集められた「声」を合理的に分析しないで、商品やサービスのカイゼンにとりかかっているケースをよく見かけます。とりあえず受け取った要望から順に対応したり、発言力の強い顧客や販売担当者の意見がゴリ押しされたりすることもしばしばです。

ペイオフ・マトリクスを使って効率的に優先順位をつける

 前述したような顧客や販売担当者の「声」を整理し、合理的に優先順位をつけるのに最適なフレームワークがあります。それがカイゼンの「ペイオフ・マトリクス」です。

 まず、アンケートなどから得られた要望点を2×2のマトリクスにマッピングします。その際、縦軸を「効果」、横軸を「リソース(費用・手間)」に分けます。

 「効果」とは、その要望を実現した場合に得られる期待できる効果です。例えば、ある動作を行うために5ステップ必要だった機能を、1ステップでできるようにすれば、大きな効率カイゼンが得られるでしょう。顧客の90%が不満に思っている機能をカイゼンできれば、多くの人の満足度が向上するでしょう。このように、期待される効果が高いか、低いかを相対的に判断します。

 もう一方の「リソース」は、その要望を実現するために必要なコストや手間です。ソフトウエアでいえば開発工数ということになるでしょう。これが大きいか、小さくて済むかを相対的に判断します。

 効果やリソースの大小は主観的になりがちです。ですから、利用者の何パーセントが期待しているのか(もちろん想定でもかまいません)、実現に要する日数は1週間以内なのか、1カ月以内なのか、6カ月以内なのか、それ以上かかるのかといったように数値換算できると良いでしょう。

ペイオフ・マトリクス ペイオフ・マトリクス

ホワイトボードに、ポスト・イットでマッピング

 ホワイトボードにペイオフ・マトリクスを描き、縦軸と横軸を見ながら、要望を書いたポスト・イット(必ず1枚に1要望とする)を貼っていきます。このとき、色の異なるポスト・イットを用意して、要望の種類を分けると便利です。例えば、不具合対応はピンク、改善要望は黄色、新機能追加要望は青といった具合です。こうすれば、ホワイトボード全体を見渡したときに、どんなタイプの要望が多いのか、分かりやすくなります。

 貼り終わったら、「効果」×「リソース」の4つのゾーンの優先順位を決めます。通常は、なるべく費用が少なく効果は高い「効果・大×リソース・小」ゾーンがもっとも優先されます。次に「効果・大×リソース・大」とするか、あるいは「効果・大×リソース・小」を優先とするかは悩むところです。

 「効果・大×リソース・大」のゾーンは、投入可能なリソース(人、金)にある程度余裕があれば、着手すべきでしょう。しかし、そうでなければ、このゾーンにマッピングされた要望点のいくつかに絞り込む必要があります(例えば、より効果の高いものに絞る、あるいはよりリソースのかからないものに絞る、など)。

 リソースが非常に厳しければ、効果は低いものの少ないリソースでできるカイゼンの数を多くすることで、全体的に「やっている感」を出すのもひとつの手です。こうして、種々雑多な要望に対して、大まかな優先順位を合理的に決めることができます。

点ではなく、面で見る習慣づけを

 こうした商品カイゼンの要望に限らず、私たちは、日常業務の中で受けたさまざまな意見や要望に対して、「これはどう対処すべきか?」と意見ごとに処理しようとするクセがあります。

 しかし、私たちのリソースもまた限られたものです。限られた時間、限られた人員で最高のパフォーマンスを出そうとすれば、やはり全体像を見て、優先順位をつけるべきです。

 今回紹介した、ペイオフ・マトリクスは普段の仕事だけでなく、プライベートも含めて「費用対効果」を客観的に判断しながら、物事の優先順位をつけるのに便利な考え方の「型」です。ぜひ、会議で、そして個人でも、使ってみてはいかがでしょうか?

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

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