成果を問われる場面でのコミュニケーションでは、まず自分自身が話す目的を理解している必要があります。「何についての話」で「現在どうなっていて」「どうしてほしいのか」が明確になると、相手も話の内容を理解しやすくなります。
本連載は、金子敦子著、書籍『「で、結局何が言いたいの?」と言われない話し方』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。
「そんなつもりじゃないのに……」
「なんで、分かってくれないの!」
「聞いてないよ、って言われても」
一生懸命話しているのに思った通りに伝わらない、話しているうちに伝えるべきことが分からなくなる……。こう感じたことがある人は少なくないのではないでしょうか。
本書では、「打ち合わせ」や「会議」「プレゼン」など、さまざまな場面におけるコミュニケーションのポイントを紹介。仕事で必要な「本当に使えるコミュニケーション能力」を身につけるコツをやさしくまとめました。
・伝わらないほうがあたりまえ
・表現だけでなく、中身も大事
・打ち合わせのゴールは、「誰が」「いつまでに」「何をするのか」
・プレゼンのゴールは、聞き手の成果につながること
・飲み会は「楽しむのが目的の会議」
「誤解なく、確実に自分の言いたいことを伝える力」が身につく1冊です。
成果を問われる場面でのコミュニケーションでは、まず自分自身が話す目的を理解している必要があります。
上司に相談するにしても、「困りました」とか「どうしましょう?」では困ります。上司への相談や報告であれば、「○○のプロジェクトについてなのですが、問題が起こる可能性があります。対応についてご相談するお時間はございますか?」というようにです。
「何についての話」で、「現在どうなっていて」「どうしてほしいのか」が分かると、相手も話の内容を理解しやすくなります。
お客様との商談でも「どうしましょうか」などと漠然とした入り方ではなく、「○○をご提案したいと思います。理由は●●です、いかがでしょうか?」というように、あなたがどんな話をするのか、相手にどう関わる話なのかをきちんと示しましょう。
コミュニケーションには、何かしら目的があります。「状況を知らせたい」「助言がほしい」「調整したい」など、本人が話の目的をしっかりと理解していないと、相手がうまく答えることができません。
自分が「何を求めているか」を明確にしよう
例えば、次の2つの文章は事実でしょうか?
1つめは判断(意見)です。価値判断が入れば意見になります。2つめが事実です。
ビジネスで戦略を決めるなどの意思決定に関わるような場面では、「事実」と事実に基づいた妥当な「意見」を述べる力が重要になります。「事実」と「意見」は分けて伝える必要があります。
話の構成の基本は、「主張(提案)」+「根拠2、3点」というスタイルです。例えば、次のようになります。
【主張】
「当社は欧州ブランド品を10%値上げすべきです」
【根拠】
「なぜならば、
(1)円安ユーロ高で仕入値が上がっている
(2)円安ユーロ高による値上げは、顧客の理解が得やすいとみられる
からです」
ここで「値上げの提案」について考えてみましょう。「主張」の10%の値上げは、もちろん意見です。根拠(1)は事実ですが、根拠(2)は推論ですから意見の仲間です。ビジネスでは、相手が納得できる妥当な推論なら、根拠として挙げることはよくあります。
しかし、もしその推論が妥当でなければ、思った通りの成果は得られにくくなります。さらに、無理のある推論を示せば話し手の信用が下がるでしょう。
また、人から聞いた話や新聞、雑誌、テレビなどによる情報を伝えることもあるでしょう。その際には、「営業部の○○さんから聞いたのですが」「××新聞で読みましたが」など、出所を明らかにします。
「事実」と「意見」は分けて話そう
(次回は、「話を組み立てる」について)
金子敦子(かねこ・あつこ)
東京大学文学部卒業。英国インペリアル・カレッジ・ビジネススクール(MBA)修了。
アクセンチュア(コンサルタント・マネージャー)勤務、MBA留学を経て、UBS証券株式調査部(アナリスト・ディレクター)として業績予想および投資判断リポートの作成、国内外機関投資家へのプレゼンテーション業務を行う。
その後、武蔵野大学グローバル・コミュニケーション学部(専任講師)においてビジネス・コミュニケーションをはじめ、ビジネス英語、財務諸表分析・企業分析を担当。
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