「名刺100枚もらってこい」なんて精神論は有害無益 ライフネット生命 出口氏に聞く、最強チームの作り方【前編】ベストチーム・オブ・ザ・イヤー(2/2 ページ)

» 2014年02月28日 11時00分 公開
[ベストチーム・オブ・ザ・イヤー]
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出口氏: そうです。あなたに部下が2人いるとします。1人はいつも勉強をして、いろんなことを知りたがって、社外研修にも参加する。もう1人は合コンばかり。あなたならどちらをマネジャーにしますか? 子どもでも分かりますよね。

 米国の大学生は1年間に400冊もの本を読むといいます。日本の大学生は100冊だそうです。同じ会社に入ったらどちらが上司になるか、決まっていますよね。勉強もしない、自分で考えない、努力をしない――そんな人にポストが与えられるはずありませんよね。

 人間は本来、楽をしたい生き物なのです。しかし、楽をしていては楽しい人生は送れません。自分に力があればいいポストにつけるということは、今の大学生にも分かることです。

―― 出口さんはどのように「勉強」をしてきたのでしょうか?

出口氏: 人間は「人に会う」「本を読む」「旅をする」という3つでしか学べないと、僕は常々言っています。この3つから人と社会を学ばないと、マネジメントの力は身につきませんよ。赤ちゃんにマネジメントはできませんよね。

 勉強をして、準備をしておかなければ、いざマネジメントやチーム長になっても役に立ちません。準備がなければできないものだからこそ、事前に勉強をしておく必要があります。勉強をしていると会社でポストが得られ、その後は現場で経験しながら学んでいけますよね。

「とにかく頑張れ」「名刺100枚もらってこい」なんてチームワークはナンセンス

―― 出口さんにとって「チームワーク」の定義とは?

出口氏: 「チーム」をうまく「機能させること」でしょう。人はみんな変で、個性が強くて、とがっていて、ほっておいたらお互い傷つけあってしまうという前提に立って、リーダーはメンバーの間に入り、うまく人を組み合わせる。メンバーという石があり、その石と石の間に小さな石となって入り込み、石垣を作っていく必要があるということですね。

 単に石垣を組み立てても、自動的には動かないんです。人はメンテナンスしないと動かないものですから。家を作っても、1年何もしなければボロボロになるでしょう。窓を開けたり掃除をしたりして、家を「使う」から、家が機能するのです。チームも建築と一緒です。チームを作って、人を使うからこそ、機能するのです。

―― チームワークは「絆」や「つながり」といった精神論的な文脈で語られることが多いです。

出口氏: 「とにかく頑張らなければならない」「絆が大事」――こんな精神論的な説教は、聞いている方が疲れるだけで、何の意味もありません。

 精神論ほど有害無益なものはないのです。「東京駅で名刺100枚もらってこい」などと言ってする研修は、みんなに大迷惑をかけているだけです。パワハラであり、そのことに何の根拠もありません。

―― 精神論が不毛な理由とは?

出口氏: 精神論が不毛なことは、日本の株価を見れば分かりますよね。科学的な裏付けを持たない精神論でやってきた結果が、今の経済の惨状です。2013年の日本の国際競争力は24位で、これは日本の経営がグローバルでは負けているということ。精神論ほどビジネスに有害なものはないという教訓は、事実が証明しているんですよね。

 あるブログに「何でお父さんやお母さんの時代は高度成長をした?」「お父さんやお母さんがしっかり働いたからだよ」というやりとりが書かれていました。違いますよね。高度成長する条件がそろっていただけで、一生懸命働いたというのは何も関係ない。これが真実の姿です。

 日本は1940年体制のもとで人口増加という条件があったために、高度成長ができました。みんなと同じことをやっていれば企業が大きくなっていく時代だったのです。このような超ラッキーな世界だから、精神論が通用したのです。一生懸命働いた、長時間労働した。それだけで株価や売り上げが上がれば、そんなラクなことはあり得ないですよね。(談)

出口治明氏

(取材・執筆:藤村能光、撮影:橋本直己)

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