眞山: 簡単にいうと、「誰かの真似をする必要はない、自分ができたところを見つけて伸ばせばいい」ということです。
「下手とは言っても、そんな君にでもうまくいっている場面があるはずだ。家族や友人といるとき、お酒が入っているとき……色々だろう。それを振り返って真似すればいい。これなら絶対にできる。だって自分自身なんだから」と。
――な……、なるほど。
眞山: このときから、私の思考回路の悪循環は、逆に回り始めました。「ああ、今日もコミュニケーション下手だった」とダメな自分を責め続ける日々だったのが、「おっ、さっきはうまくできたな」と、自分の良いところを覚えておこうという意識に変わったんです。
――それは鮮やかなパラダイムシフトですね。
眞山: そうなんです。何ができているかって、意外と自覚していなかったりするんですよね。でも気がついてみると、「自分には、こんな良いところがあったのか。……じゃあ、こんなこともできるんじゃないか?」と思えるようになりました。それがダメでも、「でも、今度はうまく行くだろう」と、またチャレンジできるようになりました。
――すばらしいです。5年前にそんなことがあったんですね。今の眞山さんからは想像もつきませんが……。
眞山: ええ、繰り返しになりますけど、最近初めて会った人には信じられないと思います。ぶしつけなメールにもかかわらず応じてくれた講師の先生が、寿司屋でくれたアドバイスが、すごい効果を生んだんです。
――私もそうでしたけど、同じようにコミュニケーション下手で悩んでいる、特に若い人には大いに勇気づけられる話だと思います。ありがとうございます。
眞山: 実はその「悩んでいる若い人」に向けてですね、もう一言、言っておきたいことがあるんです。いいですか?
――はい、何でしょう?
眞山: 5年前にそのアドバイスをくれた先生は、何の得もないのに私のぶしつけな依頼に答えて話を聞いてくれました。おかげで今の私があります。当時の私のように悩んで、思考が袋小路に陥ってしまっている若い人は、今も大勢いると思うんです。
――そうですね、間違いなく。
眞山: 当時の私は、自分にはできないと思い込み、できないことにだけ目を向けて自信をなくし、結果、足がすくんでしまって何もやらずに足踏みしていたようなものだと思います。それが変わったのは、できる方に目を向けたから。それだけなんですよね。できたことだから、その真似をする気になれました。そして今度はこうしてみよう……と、やっているうちに「できること」がだんだん広がっていったんです。
思えば、それ以前の私はメンタルブロックに縛られていました。「できないことにだけ目を向けてしまう」のが怖いのは、知らず知らずに気持ちが萎縮して、何も行動しなくなってしまうことです。
行動していれば、そこから学ぶことがあります。でも足踏みしていたら何も進みません。
――「成せば成る」ということでしょうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.