年収を上げたい! でも、上司とどう交渉すればいい?プロが教えるビジネス交渉術 第1回

次年度に向けた業績評価の時期が近づいてきた。1年間がんばってきたが、来年はもっといい給料を――。そんな交渉を上司とする場合、どのようなアプローチが良いのだろうか。

» 2014年01月30日 10時00分 公開
[PR/Business Media 誠]
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 仕事に対するモチベーションは人それぞれだが、給与というのは多くの人にとって、大きなモチベーションといえる。

 「もっと給料が多かったら……」

 こう思うビジネスパーソンは多いはずだ。年度末も近づき、そろそろ次年度の給与を決める業績評価を行う会社もあるのではないだろうか。できることなら来年の年収を上げたい、しかし下手なことを言って人事にニラまれるのも嫌だ――今回はそんな人に向け、昇給を交渉する際にどのようなアプローチが有効か考えてみよう。

交渉の「目標」は複数用意しなければならない

photo 交渉の目標は複数用意しよう

 まずは会社側の立場で、この問題を考えてみる。会社にしてみれば、一度上げた報酬を下げるのは、とても難しい。仮に当人に問題があっても「給与を下げる」なんて話は切り出しづらいし、下げられた当人のモチベーションはだだ下がりだ。そんな話が従業員の中で広まれば、当然、会社の雰囲気も悪くなる。

 それだけに、会社側は給与を上げるのに慎重になるはずだ。会社にとって従業員の報酬を上げるためのコストは、単に上げた分の現金支出が増えるだけではすまない。今後何年にもわたって(業績が厳しい時期でも)、上げた分の報酬を払い続けるからだ。

 このように相手の立場で考えれば「会社から自分への支払いを増やす」という自分の目標は、自分が思っている以上にハードルが高いかもしれない。だからこそ、満足できる結果が得られないときに備えて、代替案を用意しておくことが重要だ。

 例えば、今すぐに月給やボーナスが上がらなかったとしても、やりたい仕事に就かせてもらうというのはどうだろう。数年後には自分の市場価値は上がっており、給与アップのチャンスを見据えた転職も見えてくる。年収が上がるタイミングが数年後でもいいなら、給与だけではなく、このような機会を手にすることも有力な選択肢となるのだ。

 交渉で目標を設定する際には、1つの大きな目標を見つめるのではなく、複数の選択肢を用意するべきだ。これは最低限必要な準備と言える。

交渉における“アメ”と“ムチ”を把握する

 目標を設定したら、次に交渉を行うときの材料、つまり相手と話す内容を考える。交渉では、相手が自分の話に耳を傾けてくれることが大事だ。こちらの目標を相手に聞いてもらうためには、“アメ”と“ムチ”を使い分けることが交渉を成功させる近道なのだ。

 アメを与える方法は簡単で、相手にとって“いい”話をすればよい。今回の交渉においては、上司に対して「給与を上げてくれれば、こんなにいいことがある」と提案することだ。例えば次のような発言が考えられる。

交渉における「アメ」の例

  • 「給料が上がると、やっぱり責任を感じます。部署全体の利益のために貢献したいです!」(部下のモチベーションが上がり、部門全体=上司の業績が上がる)
  • 「やっぱり自分のがんばりを見てくれる人がいるんだな、と思います」(上司の評価が上がる可能性)

 ムチを振るう方法は比べて少し難しい。それは相手にとって望ましくない話、つまり相手にとって脅威となる事柄を切り出すことだ。「給料が上がらなければ、こんな悪いことが起こる」という脅しに近い。例えば次のような発言だ。

交渉における「ムチ」の例

  • 「下世話な話ですけど、給料ってやる気につながるところもあるんですよ。飲み会で周りのみんなと話していても、そんなことを聞きます」(モチベーションが下がり、それが周りに波及する)
  • 「個人的にはこの会社でがんばりたいんですが、やっぱりお金が上がらないと転職とかも考えることがあって……」(自分のミスで人材が減る)

photo 交渉では“アメ”と“ムチ”を使い分けるのが大事だ

 こうしたアメとムチをどう使い分けるかは状況によるが、今回のケースは自分が働く組織内での交渉なので、なるべくなら相手との信頼関係にキズをつけたくない。ならばアメをベースに少しだけムチを使うのがいいだろう。ムチは交渉の最初に一度だけ振るうといい。

 「去年結構がんばったんです。これが評価されないと、これからがんばれるだけのやる気が起きるか不安で……」。このような内容を早い段階で注意深く、一度だけ口にしよう。このムチが効いていれば、相手はこの不安要素を解決しようと尋ねてくる。そうすれば「もちろん、私もこの会社でがんばっていこうと思っているんです。そのために一緒にどうするか考えたい」と、ともに課題を解決するペースに持っていけばよい。

 とはいえ、このアメとムチは設定された目標や環境によって変わる。例えば有能なスタッフが来月配属されるなら、上司はあなたが離れることをさほどリスクと捉えないかもしれない。仮に給与アップが決まったとして、その額をどうするか――となればどうか。交渉の段階によってもアメとムチは変化する。最初に考えたアメとムチは、絶えず更新していく必要があるのだ。


 いかがでしたか? こうしたアメとムチは両方を使いこなして始めて、効果を発揮するものですが、多くの人はこのうちの片方、特にアメしか使えない人が多いと言われています。これで本当に給料が上がるの? と思った人もいるかもしれません。それはそのはず。これ以外にも記事では書けなかったテクニックがたくさんあるのです。

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提供:スコットワーク株式会社
アイティメディア営業企画/制作:誠 Biz.ID編集部/掲載内容有効期限:2014年4月30日

著者プロフィール:増倉洋

スコットワーク株式会社 代表取締役コンサルタント。英国発、世界34カ国24言語で20万人以上をトレーニングしてきた交渉トレーニングの専門家集団スコットワークの日本における代表。同社初の日本人講師として、2013年より日本語で交渉トレーニングを実施している。

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