新しいことをしたいなら、新しいことをやろうとしない発想をカタチにする技術

NHKで「サラリーマンNEO」や「あまちゃん」を担当したディレクターが、企画やアイデアの作り方、特に、新しいアイデアをいかに多くの人に受け入れてもらうか、そのコツをまとめました。

» 2014年01月30日 11時00分 公開
[吉田照幸,Business Media 誠]

集中連載『発想をカタチにする技術』について

 本連載は、2013年11月14日に発売した吉田照幸著『発想をカタチにする技術 新しさを生みだす“ありきたり”の壊し方』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。

 どんな会社でも、面白いことは始められる! あの「サラリーマンNEO」を生み出し、「あまちゃん」を担当した異色のNHKディレクターの仕事術!

 面白いアイデアを思い付いても、それを伝えて思惑通りに実現していくのはなかなか難しいもの。ともすると「前例がない!」「そんなのできない!」という声にかきけされてしまいます。

 そんな中で、会社からも多くの人からも認められるものを作るには「きちんと人に伝えること」「自分の意思を通すこと」でも「独りよがりにならないこと」が大事です。

 さらに、そのアイデア自体が画期的であれば、一番です。本書では、30代まで芽が出ず退職を考えていたという、異色のNHKディレクター吉田照幸氏(2013年9月よりNHKエンタープライズ)の番組制作での経験を交えながら、尖っているのに愛される企画の作り方や通し方、アイデアの発想法などを紹介します。


枠から出ることを目的にしない

 これまでにない斬新なアイデア募集!

 よくあります。だからといって斬新なアイデアを出したら、「こんなのできるわけないだろう」って否定される。結局そんなもんだって、あきらめてませんか?

 それはもう一歩足りてないだけです。「サラリーマンNEO」の企画については、僕は、「NHKではやったことのない、NHKにしかできない番組」というスローガンを挙げていました。NHKではやってないけど、NHKにしかできない、矛盾してますね。

 「NHKでやってないこと」といって、ふざけたバラエティの企画が出ることもあります。でもこれ、NHKではやってないけど民放ではやってるわけです。視聴者にとっては何も新しくない。なのにサラリーマンって不思議なもので、長年勤めていると、どうしても社内の基準で物事を判断するようになりがちです。この場合、斬新なつもりが会社の枠に収まっている状態です。「あの会社ではあんなことをやっているから、うちも!」と言ってはじめてみても、お客さんの側から見たら、ただの「二番煎じ」です。

 ならばと、無理やり枠からはみ出た企画。NHK初現役AV嬢出演! みたいな、もはや「枠を外れている」ということだけが、企画のようになっている。こういうのは成功しません。そりゃそうです。「うちの会社にない」「NHKでやったことがない」だけで終わっているわけで、それはエゴです。視聴者には、まったく関係ありません。

 だから、「NHKではやっていないけど、NHKにしかできない」なんです。会社から見て異物なものを、どう会社につなげるかってことですね。

 例えば、会社を大きな惑星だとすると、そこから飛び出し、まず「衛星」を見つけます。そして、惑星の周りを回る軌道にのせるために、他人に分かったもらえるパイプを作るというイメージです。

新しいことをしたいなら、新しいことをやろうとしない 新しいことをしたいなら、新しいことをやろうとしない

 このパイプ作りが、「NHKにしかできないもの」にあたります。役者でコントをやることもサラリーマンをネタにすることも、視聴率を第一に考える民放にはできないことです。実際フジテレビでコントを作っているディレクターに、「本当はキャラ優先じゃなく、NEOみたいな台本のしっかりしたコントが作りたい」って言われました。

枠からはみ出した「直感」を信じる

 「枠をはみ出したものを見つけるのが難しいんじゃないの」と思うかもしれません。だからこそ、直感で「面白い!」と思ったら、それは大切にしましょう。せっかく「面白い!」と思ったのに、すぐそれを手放してしまうことは本当に多いんですから。

 会社に長くいると、直感で面白いと思ったものをすぐ疑うようになります。「うちの会社じゃちょっとムリかなあ」「前にも似たようなのがあって失敗したよな」なんて、もう無意識のうちに考えています。

 でも、そのときあなたが「ワクワクした」ものというのは、必ず、会社の中にはないものなんです。だって、すでにあるものなら、そこまでワクワクしないでしょう?

 直感で「面白い!」と思ったものは、自然と枠から離れているはずなんです。繰り返しますが、今までやっていたことの殻とか枠を破ろうとしてはいけません。

 何か新しいことをはじめたいなら、必ず、直感で見つけた「衛星」のほうからはじめることです。本体の方から、どこかに向かおうとするのは、無駄な努力だと思います。

 必要な努力は、衛星から、本体へのパイプを作ること。「これ、面白いぞ!(直感)どうしたら、会社の枠に収まる?(パイプ)」という方向です。ただただ、本体から離れようとすると、どの方向を目指せば良いのかも分かりませんが、衛星から本体へというのは目標が定めやすく、努力もしやすいのです。

今回のPOINT

枠からはみ出そうとしない。面白いものを、「枠」につなげるパイプを見つける


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