なぜ「やめたい」のか――分析して元から断つ「やめる」習慣

やめたいと思っていても、なかなかやめられないのは、その必要性を自覚していないからかもしれません。今回は、なぜやめたいと思っているのか、またその習慣の分類について分析する方法を解説します。

» 2014年01月29日 11時00分 公開
[古川武士,Business Media 誠]

集中連載『「やめる」習慣』について

 本連載は、2013年12月21日に発売した古川武士著『新しい自分に生まれ変わる 「やめる」習慣』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。

 「嫌なことを先延ばしにする」「ネットサーフィンにハマってしまう」「夜更かしで次の日に影響が出る」など、長い目で見たらデメリットなのに、目先の誘惑に負けて、ついやってしまう習慣はありませんか?

 それらの「悪い習慣」を放置しておくと、人生に「負のスパイラル」をもたらします。本書では、2万人以上を導いた習慣化コンサルタントの著者が、誘惑に打ち勝ち、悪い習慣を確実に手放せる「やめる習慣メソッド」を紹介します。

 NLP(神経言語学的プログラミング)とコーチングに基づいたこの科学的メソッドで、悪い習慣を断ち、人生に好循環を起こしましょう!


「本当にやめる必要があるのか」を自問する

 私は、さまざまな方に「やめる習慣」のコンサルティングをしているのですが、必ず最初に「なぜその習慣をやめたいのか」と聞くようにしています。

 例えば、こんなケースがありました。夜更かしをやめたいという女性(OL)の相談です。

古川: 「なぜ、夜更かしをやめたいのですか? 朝起きられないからですか?」

相談者: 「ちゃんと起きられています」

古川: 「では、もっと早く起きて朝型に生活スタイルを変えたいのですか?」

相談者: 「基本的には今のままでいいです。30分ぐらい早起きができればいいですね」

古川: 「では、睡眠不足になっているのが問題なのですか?」

相談者: 「いえ、短時間睡眠でも結構大丈夫な方なんです」

古川: 「ならば、なぜ夜更かしをやめたいのですか? やめるとどんなメリットがあるのですか?」

相談者: 「うーん、そうですね。お肌に悪いし、夜更かししていると、電気代がかさむので」

 もう1つ例を紹介しましょう。今度は晩酌をやめたいという男性(経営者)の相談です。

相談者: 「夜ついつい晩酌をしてしまいます。なんとかやめたいのですが……」

古川: 「なぜ、やめたいのですか?」

相談者: 「体に悪そうだしね」

古川: 「どれぐらい飲むのですか?」

相談者: 「ビールを2本ぐらいですね。3本ぐらい飲むときもあります」

古川: 「なるほど、ちなみに晩酌から得ている心理的なメリットって何ですか?」

相談者: 「いやー、毎日の楽しみなんですよ。これで1日が終わったぞっていう快感があって。あと、NPO法人の代表もやっているので、いつもちゃんとしてなきゃと思っているから、それから解放されるひと時でもあるんですよね」

古川: 「だとしたら、やめる必要ってありますか?」

相談者: 「実はやめたくないんですよね。本当は」

古川: 「リラックスの習慣として、認めるのはどうですか?」

相談者: 「そう言われてみれば、そうですね」

 実は、こういうケースはたくさんあります。「なんとなく、やめたい」「なんとなく、悪い習慣だと思っている」残念ながら、これでは長続きはしません。やめる理由が不明確だと、結局、言い訳が出てきて挫折してしまいます。

 だからこそ、まずスタートラインで「なぜ、その習慣をやめるのか」「本当にやめる必要があるのか」を問い直し、明確なやめる理由があるのか、確かめることが重要です。

 本当にやめるべきか、次の5つの質問に答えることで判断してください。

質問1 : なぜその習慣をやめたいのですか?

質問2 : その習慣を放置するとどのような問題がありますか?

質問3 : その習慣をやめるとどんな副作用が出そうですか?

質問4 : それでもあなたはその習慣を本当にやめたいですか?

質問5 : やめることで将来どのような効果がありますか?


やめたい習慣は3つに分類できる

 やめたい習慣といっても、食べ過ぎ、飲み過ぎ、夜更かし、ムダ遣い、ネットサーフィンなど、いろいろなものがあります。しかし、これらの習慣は「期間」によって、行動、身体、思考の3つの習慣に分類できます。それぞれ、やめるための期間が異なるのです。

 まず、行動習慣としては、ネットサーフィン、ムダ遣い、先延ばしなどです。これらは、1カ月でやめることができます。

 次に身体習慣は、タバコ、食べ過ぎ、飲み過ぎ、夜更かし、ギャンブルなどです。これらの習慣をやめるには、3カ月の期間が必要です。

 最後に思考習慣です。イライラする、クヨクヨする、完ぺき主義で考え過ぎるなどです。思考習慣をやめるには、6カ月の期間が必要です。

やめたい習慣の3分類
レベル1行動習慣 •期間:1カ月
•ネットサーフィン、ムダ遣い、先延ばし ダラダラ休日 など
レベル2身体習慣 •期間:3カ月
•タバコ、食べ過ぎ、飲み過ぎ、夜更かしなど
レベル3思考習慣 •期間:6カ月
•イライラする、クヨクヨする、完ぺき主義で考え過ぎる など

 よく考えると、これら3つの習慣は相互に関係し合っているのが分かると思います。例えば、イライラするから、食べ過ぎてしまったり、お酒の量が増える。ネットサーフィンをやり過ぎて夜更かしする、片づけができないからイライラしてしまう、クヨクヨ考えるからギャンブルで苦痛を忘れるなど、1つの悪い習慣が、他の悪い習慣を引き起こすのです。

 このように、1つ1つ見ていくと、負のスパイラルが起きていく様子がよく分かります。

「やめる習慣メソッド」の全体像

 ここからの項目では、「やめる習慣メソッド」の全体像をご紹介します。基本は身体習慣(3か月)のロードマップをもとにお話しします。行動習慣(1か月)のロードマップは身体習慣の短縮版だと思ってください。本連載の最後に解説をします。

やめる習慣のロードマップ(身体習慣) やめる習慣のロードマップ(身体習慣)

 「やめる習慣メソッド」を一連の流れとして提示する目的は2つあります。

 1つめの目的は、習慣化までの流れを鳥の目で俯瞰することが大切だからです。いざ「習慣化」を始めると、苦しい時期がずっと続くかのように感じますが、ゴールまでの道のりの中で、今がどんな時期か分かっていれば、客観的に状況をとらえることができます。これが「習慣化」を挫折しにくくする1つの要因になるからです。

 2つめの目的は、「習慣化」するまでの期間によって、挫折するポイント、起きる症状が違うため、それぞれの対策を知っておく必要があるからです。

 本メソッドは、私が200人を超える習慣化のコンサルティングをした中で検証し、一般化したものです。それらに裏づけされた対策を行うことで、難局を乗り越えやすくなります。


 次回は、「やめる習慣」の3原則についてお伝えします。

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