商品名に「意味」があると、自動的に売れていく「売らない」から売れる!

通販サイト「タオルはまかせたろ.com」では、「お客さんは神様ではなく、王様」だと考えています。お客さんの声に耳を傾ければ、商品開発につながるアイデアをいただくこともあるのです。

» 2014年01月21日 10時00分 公開
[寺田元,Business Media 誠]

連載『「売らない」から売れる!』について

 小さな会社でも「新規性」「話題性」「社会性」の3つがあれば、ブランドを作れる!

 著者は自ら動き、学び、実践した結果、ブランド構築に必要なものは、「新規性」「話題性」「社会性」の3つという答えにたどり着きました。本書ではその真意とともに、独自の「マーケティング哲学」、すなわち、

  • 「インターネットはモノを売る場ではない」というセミナー講師の言葉から学んだエッセンス
  • 「私に似合うタオルって何ですか?」という1通のメールで悟った商売の本質
  • タオルを生産している工場に行って初めて分かった「三方よし」という考えの大切さ
  • ネット通販で「肌ざわり」まで伝える方法や、お客様が感動する梱包のやり方など具体的なノウハウ

 などなど、どの商売にも通じる「売ろうとしなくとも、売れる」法則を公開しています。

 この記事は2013年11月14日に発売された日本実業出版社の『「売らない」から売れる! どこにでも売っている商品を「ここにしかない」に変える5つの法則』(寺田元著、単行本)から抜粋、再編集したものです。


 「タオルはまかせたろ.com」のサイトで一番のヒット商品は、お客さんからのある何気ないメールから生まれました。そのタオルの開発を通して感じたのは、商品に「意味」があると、売ろうとしなくても自動的に売れていくということでした。

 2007年のある日、翌年の春から幼稚園に通う予定のお子さんを持つお母さんから、「13センチ四方のタオルを作ってくれませんか」というお問い合わせのメールをもらいました。詳しく聞くと、その幼稚園では園児の持ち物として白のハンカチが指定されているのですが、通常の大きさのものではお子さんの制服のポケットに入らないということでした。ちょうどいいサイズのタオル地のハンカチがどこにも売っていなかったため、私のサイトにメールをくださったようです。

 このお母さんが探していたのは、いわゆる「ハンカチタオル」という商品ですが、当時、園児の制服の小さなポケットに四つ折で収められるような大きさのものを作っているメーカーはありませんでした。

 そこでお世話になっているメーカーのタオル職人の方に「できますか?」と相談してみると、「断裁した切れ端の商品として使えない部分の生地がちょうどいい大きさだね。すぐにできるよ!」と快く引き受けて、作ってくれました。

 そのタオルの商品名を考えるとき、「お母さんは子どものどんなことを一番不安に思うだろうか?」と想像しました。やっぱり親としては、お母さんの手を離れて「友達ができるかどうか」が一番不安だろうと思いました。

 だから、そのハンカチタオルは「ともだち」というネーミングにしました。それからしばらく経ったある日、別のお母さんから「うちの子が通う幼稚園の指定に合う16

センチ四方のハンカチを作ってほしい」という声をいただきました。

 どうして続けざまにタオルのサイズを指定したお問い合わせをいただいたのか、不思議でした。調べてみると、半ば推察ですが、その理由が分かりました。インターネット経由で「ともだち」タオルを知った方で一番多いのは、「13センチ ハンカチ」と検索してたどりついたケースです。

「タオルはまかせたろ.com」のトップページ

 これまでは、「13センチ ハンカチ」と検索しても、ヒットするサイトは1つもなかったのでしょう。「16センチ四方のハンカチ……」というメールをくれた方も、「

13センチ ハンカチ」と検索して「タオルはまかせたろ.com」のサイトを見つけて問い合わせいただいたのかもしれません。こちらも商品化し、今度は「ともだち」のお仲間だから、「おなかま」という名前を付けました。

 どちらも何げなく付けたものですが、あらためてネーミングは大事だと思っています。タオルの機能以上に、「ともだち」と「おなかま」というフレーズが、親元から離れる子の親にとって心強いイメージを喚起したのではないでしょうか。

 その後、「10センチ四方のハンカチを作ってほしい」という声もいただき、これも商品化しました。ただ、10センチ四方のハンカチタオルは四つ折に畳むのは難しいので、これには「まんま」と名付けました。

お客様の声から生まれたハンカチタオル「おなかま」(左)と「ともだち」(右)

 これらの園児向けの商品を購入してくださったお母さん方からは、よくお礼のメールをいただきます。そのメールの1つには、「自分が手にしたときは小さいと思ったけれども、子どもが使うのにはちょうどいい大きさでした。ピッタリのサイズのハンカチタオルを作ってくれてありがとうございます」と、喜びと感謝の言葉が綴られていました。

 小さいサイズのハンカチタオルは、大人から見れば「こんなコースターみたいに小さいものは使いづらいのではないか」と思ってしまうかもしれません。私にしても、そのことに気づけたのはお客様の声から、普段の自分では思いもつかないヒラメキをもらうことができたからです。

 私は「お客様は神様ではなく、王様」だと考えています。お客様を「神様」のようにただただまつりあげてしまうと、本当の声が聞こえてきません。そうではなく、もっと近い存在としておつきあいをして、その声に耳を傾ければ、商品開発につながるアイデアをいただくこともあるのです。

 おそらく商品開発のためにマーケティングリサーチとしてアンケートを行ったとしても、このような新たな商品開発につながる声は聞こえてこないと思います。心の中でなんとなく不便に感じていても、明確な言葉としてはなかなか出てきにくいものです。

 けれども、必要なものがしっかりと頭の中にある消費者は、それを実現してくれるであろう人を探しています。それを相談でき、信頼できる窓口を探しているのだと思います。

 「ともだち」タオルが誕生し、続いて「おなかま」「まんま」タオルが誕生しました。これらのタオルは、ほかにはないオンリーワンの商品になっています。結局、お客さんが不便に思っていたから、商品自体が世の中になかったから、これだけ売れているのだと思います。

 「ともだち」「おなかま」タオルは、そうした商品を求めるお客さんのネット検索にヒットするだけでなく、いつも子どものそばにいる存在を意味したネーミングの効果も手伝い、お母さん方の口コミで広まり、これまでに3万5000枚以上を売り上げる当店の人気商品となりました。

 これらの商品の定価は、1枚140〜170円です。「1枚だけ買って、送料が600円かかってしまうのは……」ということで、同じ学校や幼稚園に通う子どものお母さんたちが何人かでまとめて、一度にたくさん購入してくださるケースも少なくありません。1つの学校に広まって、また別の学校へと広まっていったりするようです。図らずも、お客さんが商品の存在を勝手に広めてくださるわけです。

 常識的に「売れないだろうな」と思われるものが、インターネットでは思わぬヒット商品になることもあります。私の商品化の判断基準は、「誰かが不便に感じているもの」「世の中にないもの、どこもやっていないもの」、かつ「汎用性のあるもの」です。

 そういう商品の場合は、「もしかして売れないかもしれない」という躊躇(ちゅうちょ)はなく、「いける!」と思ったら、すぐに実現すべく動いています。例えば「タオル地のティッシュケースカバーを作ってほしい」という声もありました。しかし、それは商品化していません。先の判断基準に照らし合わせて、売れると直感したからです。

 こうやってお客さんの要望に応えながら、お客さんと一緒に進化していくのも、インターネットの特性を生かした「タオルはまかせたろ.com」の特徴かもしれません。

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