局長時代、部下にビジョンを繰り返し伝えているのに、なかなか浸透しないと愚痴をこぼすマネジャーがよくいました。大きなビジョンを掲げていても、現場がリアルに感じられなければどうしても浸透は浅くなります。
「自分には関係ない」「誰かがやってくれるだろう」ではなく、ビジョンを実現させるために「自分が何とかしよう!」という意識をメンバー全員にきちんと持たせる必要があるのです。
部下がビジョンをリアルに感じていない原因は、部下にはありません。
リーダーにあります。
なぜなら、リーダーが「ビジョンを言っているだけ」で終わらせているからです。ビジョンを浸透させるには、リーダーと部下の信頼関係がしっかりと築けていることが重要です。
そこで、次の行動を取ります。
部下との関係を築くには、1〜5のすべての行動が必要です。
1がなければ、部下はリーダーに何も意見を言わないでしょう。部下は普段、リーダーに対して気を使っているからです。部下との距離を縮めるには“本音で”語りかけることが欠かせません。
そこで、「自分が感じていること」を部下に素直にさらけ出します。例えば、情報共有を目的とした面談の場合には、
「最近、じつはかなりキツイんだよね。今月の数字がヤバイから。これで達成できなかったらどうしようとか考えると、なかなか寝つけない」
「最近、チームに元気がないように感じるんだよね。俺が何かよくない雰囲気をつくり出しているのかな?」
などと、「自分の弱い部分」を話すのも1つです。
また、査定面談や振り返り面談、トラブル案件時の面談など、目的がはっきりしている面談の場合には、
「今日の面談、○○君は俺に何か怒られるんじゃないかって思っているでしょ? 実はそうなんだよ。今日は○○君を怒らなきゃいけない」
と、相手が気にしていることを先に切り出します。
最初に結論をズバリと言うことによって「お茶を濁さずに腹を割って話したい」という意図が部下に伝わります。
4については、リーダーが同意した意見がチームにまったく反映されないと、部下はそのリーダーを「何を言っても動いてくれない人」だと判断します。
すると、部下は「自分が何を言ってもチームは変わらない、言っても意味がない」と感じるようになって、最終的にリーダーに何を言われても当事者意識を持とうとしないという状況が生まれてしまうのです。
1〜5の作業をひと言でまとめると、部下と「向き合う」作業ということになります。リーダーと部下が「向き合う」チームになると、部下の1人ひとりの意識と態度が少しずつ変わり始めます。
ビジョンを語り、自らの行動でも示すことによって、ビジョンは確実にチームに浸透していくはずです。
近田哲昌(ちかた・のりまさ)
株式会社サイバー・バズ取締役。
1977年生まれ。兵庫県宝塚市出身。関西学院大学を卒業後、大手都市銀行に就職。2004年にサイバーエージェントに入社。
営業マンとして名古屋営業所の売上拡大に貢献した後、営業マネジャー、営業局長として大阪支社の売上拡大に貢献。大阪支社では営業個人として9カ月連続受注総額・粗利目標ダブル達成、営業チームとしては11カ月連続受注総額・粗利目標ダブル達成という当時のサイバーエージェントで圧倒的な実績を残す。他にもサイバーエージェントグループ総会の新人賞の受賞者を部下から計4回輩出。
現在は、サイバーエージェントのグループ会社であるサイバー・バズで取締役を務めている。
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