選ばれる人には「選びたい」と思わせる空気感があります。これは、新卒の採用でもまったく同じです。今回は、私が何千人もの学生と面接して、どのような基準で合格者を選んできたのかを紹介します。
本連載は、山元賢治著、書籍『選ばれ続けるリーダーの条件』(中経出版)から一部抜粋、編集しています。
グローバルの波の中で、仕組みや慣習もものすごいスピードで変わっていきます。日本企業のあり方や個人の働き方も、従来のままではいられない。刻々と変化する世界で、変わらず求められる真のリーダーの条件とは何か? 外資系トップ企業で30年活躍した経験を、次世代のリーダーに伝える1冊です。
アップル、オラクル、IBMやEMCなど、30年間外資系トップ企業で働き、ビジネス界の巨人と肩を並べてきた山元賢治氏が大切にするのは、誰からも「選ばれる」人が持っているルールです。
「選ばれる人は、目先のテクニックに走らず、もっとも守るべき“原則”を理解し、日々実践できるかどうかで決まる」
未来のリーダーを目指す人、リーダーとして頼られる人間になりたい人に読んでほしい1冊です。
ビジネスマンとしてのキャリアを始める前に、就職活動で「選ばれる」があります。
日本オラクルのコンサルティング部門のGM(ジェネラルマネジャー)を務めたときからアップル・ジャパンの社長時代まで、私は何千人もの学生と面接しました。そこで私が、どのような基準で合格者を選んできたのかをお話しします。
選ばれる人には選びたいと思わせる空気感があります。これは、新卒の採用でもまったく同じです。
こういったことは、会った瞬間に伝わってきます。
この空気感は、付け焼刃で身につくものではありません。普段の生きる姿勢から、自然と出てくるものです。ですから、一夜漬けの就活のテクニックはアテにしないほうがいいでしょう。
最低限の清潔さがあれば、どんなスーツを着ているかなどは選ぶ側はまったく気にしていません。それよりも、背中をピンと伸ばして堂々と生きているか、社会に出ることの期待感に目を輝かせているかといったことのほうが大切です。
最初の印象が特に不可ではない場合、面接で人物を見ていくことになります。ここでのチェックポイントは4つです。
まずは、(1)の柔軟性について。
会社に入って起こることはそれまでに経験したことがない、本人にとっては新しいことばかりです。ですから、新しいことを柔らかく受け止める柔軟性が必要です。被害者意識で「こんなことばかりやらされている」と思うのではなく、「こんなに面白いことができる」「これで自分は成長できる」と取り組める人かどうかを見ます。
ここで大切なのは好奇心、それも偏見を持たずに新しい事態や状況に入っていける健全な好奇心です。直面する物事をどう意味づけるのか、また性格の素直さと健全な好奇心は関連していますので、そうした面が浮かび上がるような質問を投げかけます。
次に、(2)の論理的思考力があるかどうかも重要です。トップビジネスマンがもっているロジカルシンキングの力は学生になくて当然ですが、そこに行ける素養があるかどうかは、ある程度判断します。
ここでは、本人が知らないことを質問として振っていきます。例えば「僕はこれが専門領域です」と言われたら、知っていそうもない、少しハードルを上げた質問をします。
ここで見ているのは、どこまで知っているかではなく、どう話をまとめてくるか。「すみません。知りません」というのは素直ではありますが、思考がそこでストップしていることになります。
知らないことでも「経験していないので分からないですけど」「仮定の話ですが」などと言って話をまとめてくると、こちらとしても手応えがあります。そういう場合、「じゃあ、こういうケースだとどうなると思う?」などとさらに質問を重ねると、論理的に考える力があるかどうかはだいたい見えてきます。
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