音読で危機を脱した若い編集者明日から「朝型人間」になる!

ある男性編集者と打ち合わせをしたときのこと。何だか元気もないし、声もかすれているので風邪でも引いているのかな、と思っていました。しかし意外にも別の理由がありました。それは……?

» 2013年11月25日 09時00分 公開
[美波紀子,Business Media 誠]

『明日から「朝型人間」になる!』について

 典型的な夜型人間だった著者。心機一転、朝型生活に挑んだ。試行錯誤のうえ見つけたのは、とっても簡単な早起きメソッド。その日を境に、毎朝6時起き。しかも半年で体重12キロ減、体脂肪率10%減という効果も! 風邪やインフルエンザにもかからず、いいことずくめ。本連載ではシンプルな早起きの方法を紹介するとともに、早起きがきっかけで舞い降りた数々の幸運の事例も紹介する。

 この記事は2012年7月19日に発売されたソフトバンククリエイティブの『明日から「朝型人間」になる! リバウンドなし! 人生が好転する早起きメソッド』(美波紀子著、新書)から抜粋、再編集したものです。


 入社したての若い男性編集者Fさんと打ち合わせをしたときのこと。何だか元気もないし、声もかすれているので風邪でも引いているのかな、と思っていました。打ち合わせが終わり、帰り支度をしている彼に「風邪が早く治るといいですね、お大事に」と声を掛けました。

 すると、ちょっと照れたように頭をかいたあと、急に情けなさそうな顔になり小さな声でこんなことを言うのです。

 「風邪じゃないんです。ちょっと喉を傷めちゃいまして……。1人カラオケで」

 Fさんは見るからに神経質で内向的な文学青年タイプ。その彼が1人カラオケとは、人は見掛けによらないものだと思いました。

 「歌が好きなんですね」

 と、差し触りのない言葉を掛けた私に、彼が一気に話した内容は涙なしでは聞けないストーリーでした。

カラオケが歌えないと仕事をしてくれない

 Fさんは大学時代、仲間とカラオケに行って歌う経験がほとんどなかったそうです。ところが入社したとたん、歓迎会や飲み会などの2次会で必ずカラオケに連れていかれるそうなのです。これが、内気な彼には地獄の苦しみ。上司に「お前も歌え」と命令されるたび、顔が真っ赤になって歌い、何とか切り抜けてきたそうです。

 ある日、恐れていたことが起きました。

 上司に呼ばれ、近いうちに売れっ子作家の打ち合わせに同行させるが、その作家は大のカラオケ好き。カラオケが下手な編集者は露骨に嫌われるから練習をしておけ、との指示。しかもその作家は、演歌を歌う人が大好きなのだそうです。

 「それで時間を見つけて練習してるんですけど、私が歌っても演歌にならなくて……」

 Fさんは真剣に悩んでいるようです。声がかれているところを見ると、かなりの努力をしているのは分かります。線の細い文学少年が、こぶしのきいた演歌を歌いこなすにはどうしたらいんだろう、と私までが考え込み、ふと音読のことを思い出しました。

 この青年は、まず超えに問題があると気が付いたのです。かつての私と同じように小さな声しか出ていません。それに性格も内気で、万事控えめ。演歌を歌うならもっとずうずうしく堂々と振る舞わなくては……。

 そこで毎朝15分の音読をしてみたら、とアドバイスをしました。「大きな声で音読をすると、腹式呼吸が自然に出てきて音量も増えるし、度胸も付くと思うから」

 彼はキョトンとしていましたが、「やってみます」と小さな声で言って帰っていきまいた。それから1カ月、打ち合わせにやってきた彼はすっかり表情が明るくなっていました。

 物は試し、と音読を続けていたら、本当に声が大きくなったというのです。1人カラオケを歌ってみると、前とは違って迫力のある声が出て、何より恥ずかしいという感情がなくなったといいます。

 演歌の心をつかんだ彼は、大先生の前で堂々と歌い、後から上司にほめられたそうです。おかげで仕事の自身も付きました、とうれしそうに言っていました。

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