話し上手に必要なのは、語尾のコントロール。感じがよい、話が分かりやすいと言われる人が実践していることとは? よくある「落とし穴」と対策をご紹介しましょう。
プレゼンテーションが苦手だと思っている人、ちょっとしたコツを知っておくだけで、プレゼン上手になれるのをご存じですか?
この連載では、プレゼンテーションスキルを磨くためのテクニックをご紹介します。といっても、ただビジネスに役立つテクニックを紹介するのでは面白くないので、私生活で役立つテクニックも合わせてご紹介することにしました。
これまで本連載は、月曜日にオンタイム編(ビジネス)、金曜日にはオフタイム編(私生活)で役立つプレゼン術を公開してきましたが、11月からは隔週木曜日にオンタイム編とオフタイム編を交互に公開します。
プレゼンテーションの前には、話の内容を論理的に構成したり、口に出す文章を見直したりとさまざまな準備をして本番を迎えます。もちろんこれらの事前準備はとても大切なプロセスですが、さまざまな準備をしても、実際のプレゼンテーションでは内容の良さが伝わりきらないことも少なくありません。
プレゼン内容の伝わりやすさは、話し手の印象が大きく影響します。今回はプレゼンテーションの印象を左右する「やりがちなNG語尾」とその対策をご紹介しましょう。自分ではやっていないと思っても、他人からはそうみえる場合もありますし、自分は気にしなくても、他人は気にすることもあります。いつもより少し厳しい視点で、自分を振り返ってみてください。
まず、よく見かけるのが「聞き取りにくい語尾」です。聞き取れない理由はさまざまで、単純に声が小さくて聞こえなかったり、早口すぎて内容が聞き取れなくなる人もいます。また、「○○なんですけど……」と文章の途中で言葉が終わってしまい、語尾そのものがなくなることもあります。
話の途中まではテンポよく元気にしゃべっているのに、語尾だけ急に小さくなったり、しゃべるにつれてだんだんとペースアップし、猛スピードで話し終えたりすることは意外と多いものです。聞き手は小さい声に対しては「自信がない」、早口に対しては「落ち着きがない(つまり自信がない)」という印象を持ってしまいます。
プレゼンターが自信なさげに見えると「プレゼン内容に自信がない」と思われてしまいますし、聞こえにくい言葉は、聞き手のストレスを生みます。「え、今なんて言ったの?」と思いながら聞き続けたり、確認のために質問したりするのは、聞き手からすれば手間がかかる行動です。
日本語は、語尾で肯定文か否定文かが決まります。例えば「今期の売り上げは予算達成しました/しませんでした」「今回の施策を採用します/しません」など。「したのか、しなかったのか」と恐ろしいことに逆の話になってしまいます。聞き手に誤った認識を持たせないように、相手が聞き取れない話し方は、避けなければなりません。
ちなみにご自分の声は会場全体に聞こえていますか? ひょっとしたら語尾だけでなく、全体に声が小さい可能性もあります。聞こえないプレゼンは聞き手のストレスを生み、途中から眠気をさそうこともあるので注意しましょう。
先ほど述べたように、語尾までしっかり聞こえるように声を出すのは大切です。しかしその音が強すぎると、聞き手にきつい印象や失礼な印象を与えることになります。代表的な例としては「語尾だけ音が高くなり、ボリュームがぐっと大きくなる」、「“○○なんですよねー”“○○なんですけどー”など、語尾を不用意に伸ばすことが多い」、質疑応答など聞き手からの発信に対して「“○○っすか?”(での声が小さく“っ”に聞こえる)と反応する」などです。
このような語尾を使うプレゼンターからは、勢いを感じる反面、粗雑な印象を受けやすいのです。「こんな雑な対応をする人は、仕事に対してもいい加減なのではないか」など、聞き手に不信感を持たれてしまっては損です。特に聞き手からの質問や反応に対して、雑に見える反応をするのはいただけません。聞き手は自分の存在を大事にしてもらっていないように感じ、プレゼンターへの好感度が下がってしまうでしょう。
語尾が雑な話し方をしている時は、口が半開きになっていることが多く、聞き手にだらしない印象を与えることもあります。文章の終わりには自然に口を閉じ、内容の区切りや段落の区切りでは、口を閉じる+口角を上げるをセットで行うようにしましょう。笑顔で説明できるので、自信をもった印象を聞き手に与えることができます。
文章の最後が、いつも同じ言葉の人がいます。例えば「今回ご紹介する内容は〜〜になっております。1つめは〜〜になっております。次は〜〜になっております」という“おります派”や、「今回は〜をご紹介させていただきます。1つめに〜〜をご紹介させていただきます。まずは特徴からご説明させていただきます」の“させていただきます派”、他には“なります派”が代表格といえます。
これでは話が単調になってしまい、聞いているのがつまらなくなり、聞き手の集中力が欠けてしまうのです。また話の重要なポイントもあいまいになってしまいがちです。良い内容のはずなのに、どこがポイントなのか掴んでもらえず、聞き手の眠気を誘ってしまう結果となります。
上記の例でも、上手に組み合わせれば言葉の躍動感が出てきます。「今回は〜〜をご紹介させていただきます。1つめは〜〜です。まずは特徴からご覧ください。以前よりサイズがコンパクトになっております……」など。ボキャブラリーは、他人やアナウンサーから、自分にあったものを取り入れると効率がいいですよ。
語尾の使い方で、プレゼンの印象は大きく分かれます。ていねいに発音したり、言葉を使い分けたりして、上手にコントロールしてみてくださいね。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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