会社とは、利害が一致するメンバー同士でのシェアと切磋琢磨の場そろそろ脳内ビジネスの話をしようか(1/2 ページ)

「VPNあるし、Skypeを使っていれば会社に来なくてもいい?」。もしそうなら会社は存在意義がありません。

» 2013年11月06日 11時30分 公開
[島田徹,Business Media 誠]
誠ブログ

 先月、オフィスを移転しました。

 思えば代々木上原で14年ほど営業をしていまして、いい時もありつつも悪い時もありました。いざ離れるとなるとなかなか感慨無量のところがありましたが、そういえば移転直前に高校の先輩の経営者から「おたくは一生代々木上原でやっていくんだと思ってたよ」と言われたときには、「ああ、やっぱり移転してよかったな」と思いましたね。

 これまでそうした「成長する気がまったく感じられない」ところが、とてもよくなかったです。対顧客的にも対社員的にも。

 ただし今回、単に「成長してる感」のアピールのために会社を移転したわけではありません。例によっていろいろと考える転機でしたので、それらを少し記しておきます。

エンジニアにとって会社とはなんだろう?

 他の業界に比較して雇用の流動性の高いエンジニアは、基本的に会社への帰属意識が薄いです。しかし「VPNあるし、BackLogやGitHubなどのコラボレーションツールや共有ツールを使っていれば会社に来なくてもいいじゃん?」と思われるとそんなことはないわけで。

 もしそうなら会社は存在意義がありません。クラウドソーシングに集うフリーランスさんたちの形態に無条件降伏です。組織で仕事をするということは、1人ではできない大きな仕事を協力してできるということです。

 社員同士は、フリーランスの共同体とは違います。利害が相当著しく一致するからこそ、別のメンバーができないことに関して惜しみなく(見積りなく)協力できるし、遠慮なく協力を要請できます。

 1人で何でもできる必要はない変わりに、強く組織から役割を託され、そこで能力を伸ばしていかなければいけない厳しさもあります。お互いに尊敬するところは尊敬しつつも、ダメなところはダメだと言い合える仲であることが求められます。

 会社は、利害が一致するメンバー同士でのシェアと切磋琢磨の場です。

出来上がったオフィスを使うのではなく、作るところから始めようというコンセプト

フリーアドレスについて

 前の狭いオフィスでもフリーアドレスを試行していました。組織で仕事をする上で大事なことは情報やノウハウのシェアです。

 「これについて先輩が前にやっていたような……。ちょっとこのソースでなぜ動かないのか、ここへ来て見てもらう?」

 「今日はサーバーセットアップ。俺たちだけでもできるけど、念のためインフラに詳しい彼に横に座っててもらおう。」

 そんな柔軟な席の移動ができてほしいものです。せっかく一カ所で顔を合わせて仕事をしているのですから、「席が遠くて交流がない」なんて、あまりにもったいないです。

執務スペースは真ん中に巨大なフリーアドレススペースを配置

 一方で、フリーアドレスは周囲の人の集中力を削ぐデメリットがあります。前のオフィスでも確かにありました。ただ、それはおそらく以下のようなことが原因です。

  1. パーソナルスペースがあまりに狭い
  2. 今ここで話さなくてもいいようなどうでもいい会話をしている
  3. 確保したワークスペースに進出して来られたり、強制的に移動を強いられる

 距離が他からある程度離れているところで、誰からも進出される心配もなく落ち着いて仕事ができ、遠くでちゃんと意味のある会話をしていると意外と気にならないものです。それどころか「あ、それは前にやったことあるよ。ソース、探そうか?」と口を挟みたくなります。そういう行動がフリーアドレスの最もよいところですね。

 デメリットはゼロではないですが、メリットがそれを上回る(ことが十分に期待できます)。また「今日の昼どこで食事した」とか「連休はどこ行くの?」とかどうでもいい話はフリーアドレス席ではなく、カフェスペースでやるべし!それはそれで親睦を深めるために必要です。

1段高くしたカフェスペースでON-OFFは明確に切り替える

 そして技術情報のシェアなどは社内SNSでやるべきです。後から検索できますし、その会話に参加していなかった人も情報を得られます。

今、黙ってはいられない業務だけ口にせよ。

 ちなみに、当社プラムザは基本的に誰もしゃべっていません。ですのでフリーアドレスはあまり他の人の作業を邪魔しないようです。

仕事場に格好良さはいらないのでは?

 仕事場に格好良さはいらない――。そうした主張で15年やってきました。しかしふと最近、クライアントやパートナー企業の目が気になってきました。「15年もやってきて、まだ学生スタートアップのマンションオフィスのようなところですか」「きっとうまくいっていないんですね。苦しそうですね」と。

 実際うまくいっていないし、日々苦しいのですが、そういう雰囲気を漂わせてしまうのは何かとよろしくありません。シンクロナイズドスイミングのように水面に顔を出しているときだけでも、笑顔を見せてないといかんだろうと思いました。

カッコイイオフィスでうまいこと新入社員を釣ろうという魂胆?

 これは悩みどころでした。いや、操作主義的なテクニックや詐欺的な手法は大嫌いなのでハナから「釣ろう」なんて気はないのですが、「ちゃんと頑張ってますよ。将来見据えてますよ」と無理した笑顔を見せることで、「なんかプラムザ、調子に乗って派手になった。本業を忘れてんじゃないのか?」と思われるのはつたないです。

 以前、経営者の知り合いから聞いたエピソードが心に残ってます。

 「あるベンチャー企業が、採用にとても苦労していて、上場したらもっとよい人材がきてくれると思い、頑張って上場を成し遂げた。果たして採用をかけてみると、やはりとても優秀な人が集まった。よかったよかった。と思ったのもつかの間、ふと気づけばベンチャー魂を持った人は応募して来なくなってしまった。それどころか、ベンチャー魂を持った昔からの社員は次々辞めてしまった」

 上場ほどではないですが、オシャレなオフィスにはそういうよろしくない効果がありそうです。

 という理由から、いや、そもそもお金がないという理由から、無駄なお金をかけず「工夫」でオシャレに見せようと考えました。

 たとえばサイン。エレベータ降りてオフィスの敷地に入ったところにある看板ですが、これは会社としてのアイデンティティをアピールするために必要だとは思っていたのですが、何社かの内装会社に相談したら、壁からロゴを浮かび上がらせて天井からスポットライト当てて影作るとか、そういうよくある系の作りだと、最低20万くらいはかかるとのこと。

 ただ、そういうのは確かに格好いいのですが、イケイケベンチャーの真似する意味はないです。うちはベンチャーではないですし。どちらかというと「地味だけど意外とやる」くらいの方がいい。

 そういうことに金を使ってると、そういう「見てくれ重視」の人ばかりが集まるし、今いる社員は「社長くだらないことに金使い始めた」と言い出しかねません。しかし元気でやってる感は出したい。そんな難しいことを内装のヒトバデザインさんに相談しました。この会社とても頼りになります。

 それででき上がったのが以下のものです。総工費1〜2万円。これで十分ですよ、うちクラスは。

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