仕組みや制度だけでモチベーションは上がらない――社員を前向きに導くコミュニケーションの全体像ボクの不安が「働く力」に変わるとき(2/2 ページ)

» 2013年10月25日 14時00分 公開
[竹内義晴,Business Media 誠]
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相手を望ましい姿に導くコミュニケーションの全体像

 同僚や部下を前向きに導くために必要なかかわりや会話の流れをイメージとして記憶しやすくするために、図に表してみました。アルファベットのUの字に似ているので、「コミュケーションU」と名付けました。

 今回は、相手を望ましい姿に導くための全体像についてお話します。相手を望ましい姿に導くためには、大きく分けて2つのステップがあります。そのステップとは、

  1. 相手に合わせ信頼関係を築く
  2. 望ましい姿に導く

 です。

相手に合わせ信頼関係を築く

 一般的に、相手を望ましい姿に導こうとするとき「○○はこうあるべきだ」「○○はこうしなければならない」などのように上から目線で指示、命令し、相手を力づくで引っ張り上げようとします。しかし、指示、命令されるのは誰もが嫌なので、あなたとの間にシャッターをガラガラと降ろされてしまい、聞く耳を持たれなくなってしまいます。

 また「本当はこうあるべき」と頭の中で分かっていても、恐れや不安を抱き、なかなか行動できないこともあります。このようなシーンで「いやいや、そうじゃなくて、もっと前向きに考えようよ」といわれても、否定されている感じがするだけで前向きにはなれません。

 相手を望ましい姿に導く前に必要なのが、相手との信頼関係を築くことです。そのための基本は、「相手と状況を合わせる(相手に寄り添う)」ことです。

 例えば売り上げが低迷している営業マンを望ましい姿に導こうとするとき、いきなり、「お前、営業なんだから、もっと積極的に提案しなきゃだめだろ」と上から目線でダメ出しさせると、あまりいい気分はしません。むしろ、「そんなこと、分かっているよ」と反感を抱かせ、聞く耳を持ってもらえなくなってしまいます。

 そこで、まずは相手との信頼関係を築くことを優先し、相手の状況に合わせてみます。例えば「一生懸命頑張っている営業マンほど、売り上げが上がらないと責任を感じちゃうよね」のように。相手が不安や恐れを抱いているなら、「初めてのことにチャレンジするときは、誰もが怖いよね」のように。

 「合わせる」を意識すると、「○○さんは私のことを分かってくれている」のように、状況を共有し、相手と一体感を作ることができます。イメージとしては、相手がネガティブな状況に居るなら、上から指示、命令するのではなく、相手がいるところまで歩み寄る感覚です。

 信頼関係ができれば、こちらの話を聞きいれてもらう可能性がグンとあがります。

相手を望ましい姿に導く

 続いて、相手を望ましい姿にリードします。

 いくら、相手に合わせることによって信頼関係が築けたとしても、「お前、営業なんだから、もっと積極的に提案しなきゃだめだろ」上から目線で指示、命令されては面白くありません。ここは、どんなに苦境に思える現状にも前向きな意味や価値があることに気づくよう、導きたいものです。

 先ほどの、売り上げが低迷している営業マンを望ましい姿に導くなら、

 「売り上げが低迷している今こそ営業の力の見せ所だね。大変なことも一杯あるけど、一緒にがんばろう」

 「この苦しい状況を乗り越えたら、営業マンとして貴重な体験になるね」

 のように伝えることで、営業マンも、「これはピンチではなく機会なんだ」と気持ちも前向きに変わっていくでしょう。


 「お前、営業なんだから、もっと積極的に提案しなきゃだめだろ」と言われるのと、「一生懸命頑張っている営業マンほど、売り上げが上がらないと責任を感じちゃうよね。この苦しい状況を乗り越えたら、営業マンとして貴重な体験になるね」と言われるのでは、同じ状況でも抱く気持ちは全く違いますよね。

 同僚や部下を望ましい姿に導くコミュニケーションの基本の流れは「相手に合わせ信頼関係を築く」と「望ましい姿に導く」のシンプルな2ステップです。この基本はどんな時でも変わりませんので、覚えておいてください。

 次回以降は、「相手に合わせ信頼関係を築く」「望ましい姿に導く」についての、さらに具体的なコミュニケーションスキルについて触れていきます。多くのビジネスパーソンにコミュニケーションスキルを身に付けていただいて、少しでも取り巻く環境や取り組む仕事を前向きに考え、互いに協力しながら、職場をよりよくしていっていただけたらうれしいです。

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