持ち物が仕事をしてくれるわけではないのは当たり前。けれど、細部にまで気を使い、相手に与える印象にも気を配るという姿勢は、結局、仕事のクオリティにもつながりクライアントにも影響を与えるのです。
なぜ、マッキンゼー出身者は各業界で活躍できるのか? その秘密はマッキンゼーの新入社員研修にありました。本連載ではマッキンゼーの厳しい新人研修を著者のエピソードと共に紹介しながら、そこで叩き込まれるマッキンゼー流問題解決の基本を解説しています。
この記事は2013年4月27日に発売されたソフトバンククリエイティブの『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(大嶋祥誉著)から抜粋、再編集したものです。
マッキンゼーというのは、1つの確立されたブランド。その名前の中に、仕事への基本姿勢やクオリティなど、あらゆるものが凝縮されています。
入社1年目の新人であっても、そのブランドを体現することには変わりありません。服や持ち物、クライアントの前で使うペン1本でも「適当」なものは持たない、身につけないという空気がありました。
持ち物が仕事をしてくれるわけではないのは当たり前。けれど、細部にまで気を使い、相手に与える印象にも気を配るという姿勢は、結局、仕事のクオリティにもつながりクライアントにも影響を与えるのです。
マッキンゼーの人たちは、そこを理解しているからこそ持ち物にも一流の物にこだわる人が多くいました。
私たち新人のビジネスアナリストも、各国のBAがニューヨークに集まる機会があったときに、あこがれのHARTMANN(ハートマン)のアタッシュケースを買いそろえたのを覚えています。
ブランドを体現するものという点では、プレゼンテーション資料の作り方にも「マッキンゼー流」が随所にあらわれています。マッキンゼーでは資料の作り方にも、世界のマッキンゼー共通のノウハウやルールが隠されているのです。
例えば資料のメッセージへの理解を促進させるためのチャートの時間軸も左から右に流れるのが基本。さらに、グラフのデータには必ず因果関係が書かれていることであったり、チャートなどには必ず出典が記載されていることだったり、チャートの何がポイントなのかを簡潔に言い表したリード文が必須だったりするのは絶対的なルール。
細かく挙げていくと、こんなところにまで!? というような細部へのこだわりがびっしりあるのですが、そこまでこだわるからこそ「一目見ただけで、何が伝えたいのか分かる」といわれるマッキンゼー流の資料ができ上がるのです。
入社1年目の新人にも、資料へのこだわりは強く教え込まれます。もちろん、最初から「いい資料」なんて作れません。私が、悪戦苦闘して描いたチャートを当時“チャーティスト”と呼ばれていたチャートのプロに見せると、「何が言いたいの? こんなのはチャートとは呼べないよ」と、ことごとくダメ出しされました。
そして、チャーティストが「この場合なら、こういうチャートのほうが、理解が早いよね」と、赤字で手直ししてくれたチャートを見ると、確かに私が描いたものより何倍も分かりやすくて、力強いのです。
パワーポイントなどを使えば、誰でも、とりあえず「それらしいチャート」は簡単に作れます。けれど、そのチャートが相手にとって一発で飛び込んでくるような磨きこまれたチャートになっているかどうか。
大切なのは「自分が作りたいチャートを作る」のではなく、「相手が理解できるチャートを作る」ことです。私もいろいろなプレゼン資料のチャートを目にしますが、ほとんどはチャート自体の情報が多く、しかも複雑に描かれていて理解するのに苦労します。
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