常に、妥協しない――“モテる”マッキンゼー流の共通点マッキンゼー流仕事術(1/2 ページ)

仕事は自分が目指すレベルに達するまで妥協せず、朝まで仕事をして、また普通に出社してくる。そんな人がマッキンゼーの仕事でも「モテる」のですが、その姿は、修行僧にも似たストイックさがあったかもしれません。

» 2013年10月04日 09時00分 公開
[大嶋祥誉,Business Media 誠]

『マッキンゼー流仕事術』について

なぜ、マッキンゼー出身者は各業界で活躍できるのか? その秘密はマッキンゼーの新入社員研修にありました。本連載ではマッキンゼーの厳しい新人研修を著者のエピソードと共に紹介しながら、そこで叩き込まれるマッキンゼー流問題解決の基本を解説しています。

 この記事は2013年4月27日に発売されたソフトバンククリエイティブの『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(大嶋祥誉著)から抜粋、再編集したものです。


 入社1年目であっても、「あなたのバリューを出しなさい」ということを言われるのがマッキンゼー。

 例えばミーティングの場でも、新人だからと黙っているのは許されない空気があります。何か、周りの人たちの気付きになる発言をすることでバリューを期待されるわけです。

 パッケージと呼ばれる資料を作るときも「バリュー」を出すのが当然。学卒でマッキンゼーに入社した社員はBA(ビジネスアナリスト)と呼ばれます。そして、いろいろなプロジェクトやリサーチにアサインされるのですが、あるとき海外の支社から「日本の小売店戦略について調査して欲しい」というリクエストがありました。

 「大嶋さん、頼んだから」

 「は、はい」

 そんな簡単なやりとりで私が担当することになり、海外の流通小売業の日本進出に関連したリサーチの一環で、銀座のデパートなどで売り場面積の実態を調べることになったのです。

 ところが──。デパートで調査を行っても、消防法などの関係で売り場ごとの詳しい面積は教えてもらえないのです。恐らく書類上の面積と実際の面積が違っていたりすると問題になるのでしょう。

 そこで「そうですか」と終わらせてしまっては、「何をやっているのだ?」ということになります。デパートを歩き回りながら、いろいろ考えて「あ、これかも」と思いました。

 自分の歩幅を測って歩いた歩数を掛ければ、大体の数字は出せる。まだ、そのころは、スマートフォンのモーションセンサーを使ったアプリなんてものはなかったので、苦し紛れの極めてアナログな方法ですが、それでも「いいデータだよ」と評価してもらったのです。

 こういった行動というのは、非ロジカルな面もあるかもしれません。個人の「発想」や「行動センス」といった要素も含むからです。

 「なぜ、そんなことを?」と聞かれても、その人にしかつかめないセンスで行ったことには、どんな理由も後付けにしかならないでしょう。

 でも、それで正解なのです。

 マッキンゼーというと、あまりにもロジカルシンキングのイメージが強すぎて、皆が皆、定量的なデータしか相手にしていないように思われていますが、実は本当にすごい人は、ある種のアーティスト的センスを身にまとっているものです。

 もちろん論理的思考・分析のセンスも卓越しているのですが、逆にレベルが高いとアーティスト的なセンスで物事を扱っても、きちんとロジカルでも成り立っているようなアウトプットが出せたりします。

 そういった人たちにとっては、もはやロジカルとは「説明するために必要」なものでしかないのかもしれません。チャートやフレームワークをこれでもかと、いくつも使って説明に説明を重ねないと伝わらないものには、人を動かす本当の意味でのパワーというのはないと思います。

 それよりも「なぜか分からないけど、すごい!」と心をつかまれるものは、何も説明がない状態でも存在感が際立っています。

 マッキンゼーには、そんなふうに人の心をつかめる仕事をする先輩がたくさんいて、皆から評価されていました。ロジカルであるということは、仕事をするうえで必要条件ではあるのですが、十分条件ではないのです。

 だって、皆さんの周りを見てもそうじゃないですか? あの人、言っていることはロジカルで正しいけれど、なんだか冷たい感じがする。あるいは、ぐっとこない。そんな人と一緒にプロジェクトを組みたいとは思わないですよね。

 ロジカルで正しい方向に導いてくれて、心にぐっとくる、しかも一緒にチームにいるとなんだか安心できる。仕事は自分が目指すレベルに達するまで妥協せず、朝まで仕事をして、シャワーだけ済ませて、また普通に出社してくる。そんな人がマッキンゼーの仕事でも「モテる」のですが、その姿は、修行僧にも似たストイックさがあったかもしれません。

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