「もの作りに革命をもたらす」といわれている3Dプリントサービス。「もの作りをしている業界じゃないから関係ない」と思っていませんか? 新たな市場が立ち上がろうとしている今、あなたにもチャンスがあるかもしれません。
今、世間で注目を集めている3Dプリントサービス。3Dモデルのデータから立体物を生成できるというこのサービスは、“もの作りを変える”革命的なものとして期待されている。
それもそのはず、これまで何日もかけて削ったりくりぬいたり磨いたりして作っていたオブジェクトが、3Dプリンタを使えば、ものの数時間でできてしまうのだ。3Dプリンタは、素材となる金属や樹脂を少しずつ積層しながら3Dデータ通りの物体を生成する仕組みで、本来ならパーツを組み合わせて作る物体を完成形のまま1回の出力で仕上げたり、継ぎ目のない球体の中に物体が入っているような中空構造のものを作ることも可能。素材もアクリル、ナイロン、石膏、チタン、シルバーなど、さまざまなものから選択できる。
このように、さまざまな物体を短時間で作り上げてしまうのが魅力の3Dプリントサービスだが、現状では課題も多い。海外のサービスに比べると、日本の3Dプリントサービスは、まだまだ出力代金が高く、仕上がりまでの期間も長いという。また、出力に必要な3Dデータの作成もハードルが高く、簡単に作成したり入手したりする仕組みが求められている。こうした中、海外なみの出力代の安さと納品の速さをうたうサービスとして登場したのがDMM.comの「DMM 3Dプリント」だ。
東京・西麻布の3Dプリンティングセンターには、米3Dシステムズのプロ仕様の3Dプリンター5台が用意され、大阪にあるセンターにも複数台の3Dプリンターを用意している。素材は「石膏フルカラー」「アクリル樹脂」「ナイロン」「シルバー」「チタン」から選んで出力することが可能。料金もサイトに掲載されているサンプル例の場合では石膏フルカラーが2600円、ナイロン(ポリアミド)が1600円と安価に抑えられているようだ。
申し込みから出力までのフローもシンプルだ。すでに3Dデータを持っているなら、DMM 3Dプリントのサイトからデータをアップロードすれば、モデルデータをチェックした結果と見積もりがメールで送られてくる。修正が必要な場合はDMM.comに依頼することも可能だ。見積もりに問題がなければ、あとは出力の素材を選んで支払い手続きを行う。送料は日本国内であれば全国どこでも無料。あとは出力結果が自宅に届くのを待つだけだ。発送の目安は7〜9日ほどで、同社によれば「同種のサービスの中でも短いほう」だという。
3Dデータを持っていない場合も、同社サイトからフィギュアやアクセサリー、雑貨の3Dモデルを選んで購入することが可能。また、サイトでは無料の3Dソフトを紹介しており、自分で3Dデータ作りにチャレンジすることもできる。
DMMの代表取締役社長を務める松栄立也氏は、同社の3Dプリントサービスについて「国内でこれだけの機種と素材をそろえているところは少ない」と胸を張る。今後は、「出力の精度と価格、納期の3つで一番を目指す」考えだ。
DMM 3Dプリントは、安価で短納期のサービスをうたっていることから、業務での利用がしやすいのも特徴だ。今回、製品の金型作りを手がけているモールドテックの落合孝明氏にサービスを試してもらい、3Dプリントサービスに期待することを聞いてみた。
3Dプリントサービスの登場は、金型製作現場の効率化にも一役買っていると落合氏。これまで、かたまりを削ったりパーツを張ったりして何日もかけて作っていた試作品が数時間で作れるようになり、この時間の短縮が最終製品のできばえをよりよいものにしているという。
「丸みの角度が気に入らない、角ばっているところを丸くしたい――というのは、画面だけではなかなか伝わらず、実際に手にとってみないと分からない。これが例えば、昼に打ち合わせをして、その日の夕方に試作品ができるようになれば、すぐに細かい検討に入れる。大量生産するまでに、何度も細かい部分のブラッシュアップや検討ができるので、それが最終製品の質の向上につながる」(落合氏)。DMM 3Dプリントについては、仕上がりや価格は業務用途でも使える水準だといい、素材を複数から選べるのがいいという。
同氏がDMM 3Dプリントに期待するのは、DMMの得意分野である流通との連携だ。3Dプリントサービスのキモになる3Dデータは作るのが難しく、それが普及のハードルになっていると落合氏。しかし最近では、デザイナーやモデラーが自身の作品を公開して販売するケースが増えていることから、比較的早い時期に新たな市場が立ち上がるのではないかと予想する。
「デザインする人、モデリングをする人、作品が欲しい人をマッチングするプラットフォームが登場して、データを買った人が好きなところで好きなようにプリントできるようになれば面白い。これからは、ショップで流通していないような珍しいデザインの雑貨を、最終製品ではなくてデータで売り買いするような市場が立ち上がってくるのではないか」(同)。
DMM.comが安価な3Dプリントサービスをスタートさせた背景にあるのは、「新たな市場の創出」だ。
サービスの立ち上げにあたってDMM.comの松栄氏は「3Dプリントは、プロダクトを作っていただくにあたっての一要素でしかない」と説明。DMMでは、今回の3Dプリント事業を市場創出に向けたスタート地点と位置付けており、「今まで3Dにかかわったことがない業種の人たちでも使えるようなアプリ、サービスを開発していきたい」と意気込む。また、APIの公開や、クリエイター自身がDMMのサイト上でモデルを販売できる仕組みを用意していく予定で外部サービスとの連携による新サービスの開発や、クリエイター自身がアイデアを事業化するための支援にも積極的に取り組んでいく考えだ。
3Dプリントといえば、「もの作りをしている人だけが関係する」と思われがちだが、実は、この市場の創出に必要とされる技術、企画、商品、サービスは幅広い分野の多岐にわたっている。チャンスは必ずしも「もの作りに関わっている人」だけのものではなく、あなたのビジネスにも関わりがあるかもしれない。
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提供:DMM.com
アイティメディア営業企画/制作:誠 Biz.ID編集部/掲載内容有効期限:2013年10月31日