コミュニケーションが上手くいかない? 笑顔が“真顔”になっていませんか田中淳子の人間関係に効く“サプリ”

部下とコミュニケーションする上で大事な“笑顔”。部下が報告や相談をしやすい雰囲気を作るためにも、“ほのかな笑顔”を絶やさないように心がけたいものだ。

» 2013年09月26日 11時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]

田中淳子の人間関係に効く“サプリ”:

 職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。

 本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。

 明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。


 世の中にはいつ見ても、にこにこしている人がいる。話しかけると、振り返った時には既に笑顔。仕事の話をしている時も、打ち合わせの時も笑顔。こういうタイプの人を私は「にこにこさん」と名付けていて、とても羨ましく思っている。

 私は、気づくと真顔になっていることが多い。人の話を聴く時、「笑顔で」と心がけてはいるものの、すぐ真顔に戻ってしまう。お客様にヒアリングする時も、自身がプレゼンする時も、いつのまにか無表情になってしまうのだ。それに気づいたら、すぐに口角を上げて極力笑顔に戻すようにしているが、どうも長続きしない。無愛想に見えるかもしれないから気をつけないと、と思いつつも、無意識のうちに笑顔になるまでには至っていない。

 不機嫌なわけではなく、熱心に話を聴き、伝えているつもりだ。表情筋が「笑い顔」に慣れていないせいなのかもしれない。こんな風に表情を意識するようになったのは30代からだ。周囲に何人か「にこにこさん」がいて、彼らを見ているうちに「いいなあ、こういう風な表情で会話してくれるととてもリラックスできる」と感心した。そして自分もそうありたいと強く願うようになり、以来、できるだけ笑顔を意識するようになったのだ。とはいえ、長年の表情の癖があって、まだまだ修業中である。

教え甲斐があるのは「にこにこ」と「なんでもやる」新人

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 先日、30代の女性からこんな話を聞いた。

 「新卒で入社した時、あまりに専門外の企業に入ったので、これはとにかく“先輩たちにかわいがられる存在にならなくては!”と思いました。私にできることは何だろう? と真剣に考えて決めたことがあります。“3年間”は、どんな仕事でも“はい!”と返事をして、取り掛かること。仕事をえり好みしないこと。常に“笑顔”でいること。自分にそれ課して意識して過ごしていると、上司や先輩たちがあれこれとかまってくれるようになりました。仕事も教えてもらえるし、困った時は助けてもらえるし、成長につながったのです」

 なるほど。

 未熟で経験のない時分に、「どんな仕事でもやること」と、それを「笑顔で応じること」というのは、多くの若手にヒントになるように思う。

 彼女はこうも言っていた。

 「何もできない新人なのだから、先輩から言われたことをまずは嫌な顔をせずに引き受ける。そして、どんな簡単なことでも手抜きせずに一生懸命やる。そういう人でないと、教えたりかまったりしたくなくなるだろうなあ、と想像して、自分にその2つを課しました」

 新入社員の時にこう考えられるのはすごいことだ。上司や先輩が若手について「この人に教えてあげよう」「この人を助けてよう」と思うのは、彼女の言うように「どんな仕事でも笑顔で取り組む」姿勢を示している場合だろう。何かを頼んだときに不機嫌そうな表情をされたり、「え、私がやるんですか?」などと、仕事に対して好き嫌いを言われたりしたら、先輩側も人間だから指導が面倒になることもありうる。

 キャリアなどに造詣の深い大久保幸夫さんがその著書の中で、「20代に必要なのは、反応力と愛嬌力」と書いている。(参考:日経BP刊『仕事のための12の基礎力』)。

 人が何か教えてくれた、注意してくれたという場合、ちゃんと「反応」を示すことと「愛嬌」があることが20代の成長を支える――というのだ。上記の彼女が実践したのはまさにこれだ。

 もちろん、笑顔の「にこにこさん」でいることは、若手だけに求められることではない。上司や先輩の立場の人だって笑顔を意識しておくに越したことはない。

 部下は上司の顔色をいつも伺っているものだ。話しかけた時、上司が不機嫌そうに見えたり、無表情だったりすると、部下はとても話しづらい。満面の笑みである必要はないが、ほのかな笑顔で応じるというのは、上に立つものにも求められる。

 結局、年齢や立場に関わらず、誰もが「笑顔」で「にこにこさん」でいることというのは、仕事をしやすくするために大事なことなのだ。

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 以前、初対面の方と会食した際、仕事の関係で遅刻した私が恐縮しながらテーブルにつくと、彼は、満面の笑みで「はじめまして!」と挨拶してくれた。ただでさえ緊張していたのに、笑顔で迎えられ、すぐリラックスでき、既に盛り上がっていた会話の輪にすんなり溶け込むことができた。笑顔には場を和ます力もある。

 私は後輩など他者に声をかけられた時、とにかく、口の端をきゅっと上げることから始めるようにしている。もちろんそれだけでは、奇妙な表情になるので、続いて頬を引き上げ、目まで微笑むように強く意識するようにしている。内面でそれだけ努力していることは他者に分からないだろうが、意識することが大事だと思っている。

 実は、人の話を真顔で聞く人はかなりいる。講師をしていてよく感じる。怒った表情、つまらなそうな表情で人の話を聴く癖がついている人は意外に多いのだ。個別に会話すれば皆、真剣に真面目に、しかも楽しみながら参加していることが分かる。つまり、自分の表情を自分で把握していないだけなのだ。

 だから、自分の表情を一度ビデオか写真に撮ってもらうとよいと思う。他者からどんな風に見えているのかを知れば、自分の表情を意識するようになる。私も20代の頃、ビデオを撮ってもらって愕然としたことがある。能面のような無表情で他者の話を聴いていたのだ。衝撃的な映像に「自覚」している自分の表情との違いを意識させられた体験だった。照れくさいものではあるが試す価値はある。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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