タブレットからいつでも自宅や会社のPCにアクセスできる、すごいヤツ――リモートデスクトップ「Splashtop」ビジネスタブレットのお供に(3/3 ページ)

» 2013年09月20日 13時00分 公開
[森田秀一,Business Media 誠]
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 また、ソフトウェアキーボードの表示中は、画面上部にさらに「Shift」「Ctrl」「Alt」などのボタンが表示される。これらを組み合わせることで、キーボードショートカットなども利用可能だ。つまり、Windowsがハングアップしても、Ctrl+Alt+Delでの再起動ができてしまう。

Photo 文字入力はタブレット側のシステムを使える。画面上部には各種の特殊キーも

 画面の表示速度や入力の遅延については、ほとんど問題を感じなかった。マウスカーソルの移動も非常に自然で、イライラすることはなかった。ローカルネットワーク内でのリモートデスクトップの利用は、実用性が十分に確保されているといえるだろう。

外出先からの接続には、一定の通信速度が必要に

 外出先や職場内LANなど、異なるネットワークからリモートアクセスする場合でも、基本的な利用感は一緒だ。ただし、アプリ内から「Anywhere Access Pack」という定期購入型サービスに契約しておく必要がある。Androidアプリ経由の課金による価格は月1.99ドルから。割安な年額プランもある。

 まずはNexus 7をauのiPhone 5にWi-Fiでテザリング接続する方法を試してみた。利用したモバイルネットワークはLTE。スピードテストサイトで調べたところ、LTE回線部分の通信速度は下り15Mbps、上り3Mbpsほどだった。

Photo 外部ネットワークから接続する場合は、「Anywhere Access Pack」に契約しよう(画面=左)。異なるネットワークに接続する場合は、接続先PCの一覧にパラボラアンテナが表示される(画面=右)

 実際につないでみたところ、驚くほど快適だった。ローカルネットワーク接続との差異がほとんど分からないほどだ。マウスの追従性は十分だし、ダブルクリックが上手く入力できないということもない。これならば、万一に備えてPCの電源をリモートデスクトップのためにオンにしておく価値は十分あるだろう。

 また、いわゆる「NAT越え」問題も、今回は発生していないようだ。「接続失敗」などの表示が出ることもあったが、再度操作し直せば、ほぼ100%接続できた。

 ただし、すべてのモバイル環境で何の問題もなく接続できるかは、検証を重ねる必要があるだろう。極端に旧式のルーターであったり、プライベートIPアドレスを割り振るタイプのプロバイダーなどを使っている場合に果たしてどうなるか。また、企業によってはセキュリティを確保するために利用できる通信サービスを制限している場合もあるだろう。

Photo 音声をモバイル端末側(アクセス元)で聞くことができる

 ここで、動画や音楽の再生も試してみた。Splashtopでは、PC側のスピーカーに出力されるはずの音声を、リモートアクセス元のタブレット端末で聞くという機能も備えているのだ。

 音楽については途切れ途切れになることもなく、十分な聴取に耐えると言っていい。Windows側でブラウザを立ち上げ、Radiko.jpを10数分聞いてみたが、途切れることもなかった。

 映像については。さすがにHD級(1280×720ピクセル)のMP4動画を見る場合はコマ落ちが発生していたが、その間も音声は何の問題もなく再生された。また、画面に映る人物の口の動きとセリフがずれることもない。腰を据えて映画を見るといった用途には合わないかもしれないが、講演者の発言内容を確認する程度なら十分だ。

 ただし、外出先からのリモートアクセスについては、回線速度が大きく影響するようだ。今回の検証に使ったNexus 7は3G接続にも対応したモデルだ(LTEは非対応)。これに低価格MVNOのSIMカードを装着し、テザリングせず直接インターネットに接続する方法でもSplashtopを試してみた。

 この3G接続時の通信速度は、スピードテストサイトでのチェックによると、下り3Mbps、上り0.01Mbps。さすがにこのスピードではまともに動かないようだ。マウスカーソルを操作する以前に、「アプリが反応していません」とエラーメッセージがでるほどで、とても使える状態ではない。

 もう少しいろいろな通信速度で試さなければ結論を出すことはできないが、LTEやテザリングなどといった回線形態には関係なく、アクセス元(外出先のタブレットなど)からアクセス先端末(自宅のPCなど)間の通信速度こそが、Splashtopを快適に使う上で重要なのだろう。下り速度だけでなく、操作内容を伝送する以上は上り速度も関わってくるはずだ。

データはクラウドに、OS依存ソフトはSplashtopでリモート操作

 以上、Splashtopの利用感を見てきた。筆者は本稿の執筆前から、個人的にSplashtopを使っていたので、ローカルネットワーク内での操作が快適であることは予測の範囲内だった。しかしLTEテザリングを絡めたリモートアクセスが十分実用的だった点には心底驚いた。

 一方で、時代の変化に伴ってリモートデスクトップに求められる機能が変わってきているとも思う。特に、データファイルの扱いだ。動画や音声はともかく、小容量の文書ファイルはローカルPCに保存しておくよりクラウド(オンラインストレージ)にアップロードしておいたほうが何かと便利だ。そもそも、リモートデスクトップに備えてPCの電源をいれっぱなしにしておく手間も減らせる。

Photo 例えば、WMV形式の動画ファイルを再生するにはWindows Media Playerが欠かせない。こういったWindows限定のソフトをAndroidから操作するような時にも、Splashtopは役立つだろう

 今後のリモートデスクトップは、「そのプラットフォーム(OS)でしか動かないソフトをリモート操作する」という用途にシフトしていくのではないだろうか。それは例えば、企業内の在庫管理・発注用システムのクライアントとして利用するような使い方だ。近年ではブラウザベースのシステムが増え、OS依存のシステムは減っていると思うが、それでもまだWindowsでしか動作しないものはあるはず。これらのシステムをモバイル環境で利用するためには、リモートデスクトップが役立つだろう。

 要望を挙げるとすると、まずはなんといっても日本語サポートの充実だ。アプリや公式サイトの主要な部分は日本語化されているが、サポート情報はほぼ英語のままなので、早急な対応を望みたい。

 また、課金前に体験する手段が皆無なので、Anywhere Access Packの無料試用キャンペーンなども積極的に実施してほしいと思う。一度使ってみれば、これを便利と感じる人は多いはずだ。

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