マッキンゼー流――どんなときも常に前向きにマッキンゼー流仕事術

クライアントのことを第一に考えるとき、そこには同時に苦しさも付いてくるものです。マッキンゼーでは、まず自身が「問題解決」に至るまでにさまざまな困難を乗り越えるようにしています。

» 2013年09月18日 09時30分 公開
[大嶋祥誉Business Media 誠]

『マッキンゼー流仕事術』について

なぜ、マッキンゼー出身者は各業界で活躍できるのか? その秘密はマッキンゼーの新入社員研修にありました。本連載ではマッキンゼーの厳しい新人研修を著者のエピソードと共に紹介しながら、そこで叩き込まれるマッキンゼー流問題解決の基本を解説しています。

 この記事は2013年4月27日に発売されたソフトバンククリエイティブの『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(大嶋祥誉著)から抜粋、再編集したものです。


 クライアントのことを第一に考えるとき、そこには同時に苦しさも付いてくるものです。

 なぜなら、クライアントにインパクトのある「問題解決」を行うということは、まず私たち自身が、そこに至るまでにさまざまな困難を乗り越えなければならないからです。

 例えばこういうことです。

 クライアントにとって、現在13段しか跳べない跳び箱を20段跳ぶことがインパクトだとしましょう。跳び箱を20段跳ぶというゴールが定まったら、どのようにして安全かつ確実に跳べるのか、私たちが体を張って実証しなければなりません。

 「この跳び方をすれば理論上は大丈夫ですよ」というのでは、自分たちは汗もかかずにクライアントにリスクを押し付けてしまっているのと同じ。それでは、仕事をしているとはいえないのです。

 そもそもクライアントは、自分たちでも解決できるかもしれないけれど、もっと上のレベルの解決策が欲しい、極めて困難な状況を打開したい、といった動機でコンサルティングを依頼するわけです。

 どれも厳しい課題ばかりなのは、ある意味当然。だからこそ、わざわざ外部にコンサルティングフィーを支払って、それ以上のバリューを期待します。

 それなのに、課題や問題の難しさに後ろ向きになるコンサルタントがいたら話になりませんよね。新人のマッキンゼー人に、そんな厳しさが理解できるのだろうか? とも思いますが、だからこそ新人研修の最初に、「何があっても背を向けず、『自分には何ができるか』と考えることを忘れるな」ということを教えられます。

 逃げない、ということに関しては新人研修のときから既に始まっていました。研修最終段階のケーススタディでディスカッションのための資料をつくるのですが、もうその時点でクライアントに出しても恥ずかしくないレベルのものを求められます。

 もちろん、そんな資料づくりの経験なんてあるわけがないので、締め切り前の1週間は皆オフィスに泊まり込んで徹夜(新人研修なのに!)。間に合わなかったから途中まで完成というのもNGです。仕事だと考えれば当たり前。それでも「やらない」という選択肢はありませんでした。

 とにかくどんな状況でも後ろ向きにはならず、前を向く。この「どんなときも常に前向きに」という姿勢はPositive Mental Attitude と呼ばれ、「PMAが大事」というふうにマッキンゼーではよく言われました。

 ちょっとそこまではできないな、と思うかもしれませんが、案外、私たちは「最初からそういうもの」と思えば、少しぐらい大変なことでもできてしまうものなのです。

 逆に、そんなに頑張らなくても大丈夫と思っていたのに、後になってから「全然足りないからもっとやらないといけない」という状況になったときのほうが、頑張る気持ちをセットするのにすごく大変だったりしませんか?

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