どんな人でもビジネスには失敗はつきものだし、ビジネスの世界に限らず失態をおかして謝らなければならないときはある。そんなとき、相手の心象を悪くしない話し方ができる人は、どんなふうに謝るのだろうか。
例えば、寝坊して遅刻したとしよう。この場合、正直に「寝坊しました」という言い方もあるし、車で来ていたなら「車の調子が悪い」と言うこともできるだろう。
じつはこの場合は「すみませんでした」「申し訳ありません」とだけ言うのが正解だ。つまり「遅刻した理由を言う」のは、必ずしも正しい選択とはならない。
むしろ、この場合なら“潔い”姿を見せたほうがよい。そのほうがさわやかである。
「すみませんでした」
「大事なときにまずいことをしちゃいました」
「本当に申し訳ありませんでした」
と、心から頭を下げてしまうほうがいいこともある。
「渋滞して」とか「電車に乗り遅れた」などと長々と言い訳をすると「もっと早く起きなさい」とか、「ちゃんと準備の時間も取らなくてはダメだ」などと余計に怒られることになる。
理由を言わないほうがスマートになるもう1つのケースとして、スケジュールの変更がある。
「たいへん申し訳ありません。お約束の日にちをズラしてもらえませんか。ちょっとバタバタしていまして」とか、「急な用件が入ってしまい、どうしてもふさがってしまって」というようなバタバタとか急な用、という言い方にして「はっきり言わない」のがスマートな言い方になる。
こんなときには、なにも正直にペラペラ理由を言ってはいけない。
私も最近、同じようなことをやられて“イヤな気分”になったことを覚えている。2週間前から約束していたのを、前日になって「申し訳ありませんが、入稿が迫ったものですからお会いする日にちを変えてもらえませんか」というのである。
確かに入稿は大切だが、あくまでも先約優先というのはビジネスマナーの基本だ。自分の仕事の遅れのためにあなたとの約束は先に延ばします、ということになり、言われる側はあまり気分はよくない。
つまり、「理由」をつけてしまうと、そのほうが自分との約束よりも「大切」「優先度が高い」と相手が判断したことになる。
もちろん、人が亡くなったとかの緊急事態なら納得できる。が、それ以外の理由は言わないで濁すのが、ベストのときもあると知ってほしい。「スミマセン、その日に同僚との打ち合わせが入ってしまって」と言ったら、同僚との打ち合わせのほうが自分よりも大事なのかと思われて当然だ。
「ちょっと、学生時代の友人と急に飲むことになりまして」などと言う人はいないと思うが、そこまで言う必要はないということだ。
以上から、詫びる時の作法として正しいのは、
の、2つである。むしろ、まともに「理屈で説明しよう」「納得させよう」などとしないほうがいい。これは、企業の不祥時の際のトップの“言い訳”を見たらよく分かるだろう。言い訳は、すればするほど墓穴を掘るのである。
(次回は、知らないことは「知らない」と素直に言う、について)
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