「もっと自発的に行動してくれたらなあ」――部下にこんな要望を持っていたとき、それをそのまま伝えてはいけません。では、部下の自発性を育てるには具体的にどんなことをすればいいのでしょう?
1971年生まれ。経営者、教師、コンサルタント、コーチ、カウンセラーなど、リーダー層を支えるビジネスコーチ。人材育成コンサルタント。
自身がプレッシャーの多い職場で精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。人や組織を育てるには、マネジメントの手法だけでは太刀打ちできないことを痛感。優れたリーダーたちが使う卓越したコミュニケーションスキルを学び、実践。チームの変革に成功する。実践の経験から、難しいコミュニケーションスキルを誰もが現場ですぐに使えるようにした独自の手法「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。実践的なコミュニケーション方法を伝えるコミュニケーショントレーナー。
米国NLP協会認定NLPトレーナー、NPO法人しごとのみらい理事長。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』(こう書房)、『イラッとしたときのあたまとこころの整理術―仕事に負けない自分の作り方』(ベストブック)がある。
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先日、30代の中間管理職Kさんが人材育成の悩みを打ち明けてくれました。Kさんによれば、上司から部下を積極的に行動させるように言われているそうなのですが、「もっと自発的に動け」と言っても、なかなか動いてくれないのだそうです。
部下を持つと「もっと自分で考えて行動してほしい」と思います。Kさんのような悩みを持つ中間管理職は、意外と多いのかもしれません。しかし、つい「自発的になりなさい」と直接的に伝えてしまうのは、上司自身もそう言われて育ってきたからなのかもしれません。
しかし自発性とは本来、誰かから言われたから行動を起こすのではなく「自ら進んで動く」ことです。「自発的になりなさい」と伝えている時点で、既に命令になっているので、「自ら」ではなくなってしまっていることに、多くの上司は気が付いていません。
さらに、「自発的になりなさい」という言葉の裏には「あなたは自発的ではありませんよ」ということを暗に伝えていることになるので、言われたほうは意外と傷つきます。
実際、私もサラリーマン時代に何度も「もっと自発的に行動しなさい」と言われましたが、そのたびに嫌な気分になりました。自分から提案したり、行動したりしたほうがいいことは分かっています。しかし実際には、上司に提案しても門前払いだったり、行動しようとしても「勝手に行動するな」と叱られたりすることが多かったのです。「言ってもムダ」「動きたくても動けない」状況でした。
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