「2位じゃダメなんですか?」への正しい答え方「話し方」より「答え方」

冷静に考えれば分かるのですが、相手の勢いや地位に怖気づいてしまうと気の弱い人は質問を反語、すなわち「叱られた」と勘違いしてせっかくの主張を引っ込めてしまいがち。正しい答え方を身に付けましょう。

» 2013年07月11日 10時30分 公開
[鈴木鋭智,Business Media 誠]

仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」について

 部下の仕事の9割は、聞かれたことに正しく答えることです。ビジネスにおける答え方には「こう聞かれたら、こう答える」という決まった型があります。「打てば響く部下」と思われるために必要な「受け答え」の技術を大手予備校で現代文、小論文を指導する「国語のプロ」が伝授します。

 この記事は2013年6月14日に発売された中経出版の『仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」』(鈴木鋭智著)から抜粋、再編集したものです。


 「いまの日本、このままでいいのでしょうか?」

 疑問形ですが、いいかどうか自分でも分からず判断を求めているわけではありません。「いいのでしょうか?(いや、よくないぞ)」と言いたいわけです。

 学校で習う疑問形の用法には2種類あります。

  1. 相手の答えを求める疑問、質問
  2. 実は否定を意味する反語

 通常の会話ではなんとなく文脈で質問か反語かの区別は付きます。子どもでも「何度言ったら分かるの!?」と叱られて「5回かな」と火に油を注いだりしませんよね。

問題「再生可能エネルギー開発で世界一にこだわって巨額の予算を計上していますが、2位じゃダメなんですか?」

× す、すいません、おっしゃる通り2位でもいいです……。

○ 誰もできないことを最初にやるから特許を取れて特許料が得られるんです。2番では特許料を払う側になるんです。


 ここで引き下がっては、これまで費やした巨額の開発費が水の泡。問い詰められた担当者は責任重大です。

 まず、大臣の「2位じゃダメなんですか?」という疑問形が「質問」なのか、「反語」なのかを確認しましょう。

 選挙の街頭演説ではなく会議での発言ですから、大臣は予算計上の理由を聞いてその是非を判断する立場にあります。政治家の個人的な価値観など誰も求めてはいません。

 従ってこの「2位じゃダメなんですか?」は「2位でいいでしょ」という反語ではなく、「1位と2位の違いを説明してください」という文字通りの質問なのです。

 このように冷静に考えれば分かるのですが、相手の勢いや地位に怖気づいてしまうと気の弱い人は質問を反語、すなわち「叱られた」と勘違いしてせっかくの主張を引っ込めてしまいがち。これでは議論が途切れてしまいます。そして質問した側も、周囲から「横暴だ」「科学技術を軽視している」などと誤解されてしまうわけです。

 疑問形=質問と反語を区別する

 誤解の原因は、質問を受ける側の心理だけではありません。質問する側も誤解されないように工夫する余地はあります。

 それは疑問形で終わらないこと。

 「2位じゃダメなんですか? その理由を説明してください」

 「2位じゃダメなんですか? 私は2位で十分だと思います」

 疑問形のあとに一言付け加えることによって、質問か反語か、その意図がはっきりするのです。

問題「『ねえ、ちょっと。おたくのダイエットサプリ、飲んでも飲んでも全然やせないんだけど、一体どうやったらCMみたいにやせられるわけ? あんたと話しても仕方がないから、ちゃんと話の分かる上の人を出してくれない?』さて、店長にどう伝える?」

× 店長! お客様から怒りのクレームです! もう2カ月も前のご購入なので返金の対象にならないとはちょっと言いにくくて……。責任者を出せってうるさいので、店長、あとをお願いします!

○ お客様から、どうしたらダイエットサプリの効果が出るかというお問い合わせです。詳しいカウンセリングをご所望なので、店長にお願いしてもよろしいでしょうか?


 実際に言われたのは「どうしたら効果が出るか」「詳しい説明を受けたい」の2点です。ところが、伝える人がお客様を怖がると「金返せ」「責任者出てこい」と翻訳してしまい、店長がお客様の前に出るときには契約書を携えて完全対決モード。これでは、お客様も「なんでこの店はこんなにとげとげしいんだろう?」と不審に思います。

 職場の「伝言ゲーム」では、自分の感情で内容を変えないように気を付けましょう。

今回のまとめ:疑問形=質問と反語を区別する


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