日本語のプロが教える、仕事に必要な「答え方」「話し方」より「答え方」

ビジネスにおける答え方には、決まった「型」があります。「打てば響く部下」と思われるために必要な「受け答え」の技術を、大手予備校で現代文、小論文を指導する「日本語のプロ」が伝授します。

» 2013年06月20日 10時30分 公開
[鈴木鋭智,Business Media 誠]

 職場で認められず、崖っぷちに立たされているあなた。

 就活や転職活動の過当競争にさらされているあなた。

 あなたが磨くべきなのは「話し方」でも「プレゼンテーション」でも「英語力」でもなく、「答え方」かもしれません。

上司 君、どうして売り上げが伸びないんだね?

社員A 少子化とデフレによって、マーケットが縮小したからです。

社員B 顧客管理を怠って、得意客を逃してしまいました。

 2人のうち、出世するのはBさん、リストラされるとしたらAさんです。

 上司の質問は「売れている社員と売れない君の違いは何だ?」という意味。「マーケットが縮小したから」では、答えになっていません。

面接官 弊社を志望する理由を教えてください。

応募者A 御社は業界トップのシェアを誇り、福利厚生も充実していて、MBA取得のための留学制度があることも大きな魅力だからです。

応募者B 御社の知育玩具を全国に広めて、日本の子どもたちの知的レベルを世界一にするためです。

 2人のうち、幹部候補として採用されるとしたらBさんです。

 面接官が聞きたいのは「あなたの野望」であって、「あなたの要望」ではありません。

 問われたことに、正しく答える。

 質問の意図を、正しく理解する。

 実はこの「受け答え」こそ、若手社員に求められる第1のスキルなのです。

 部下の仕事の9割は上司や顧客の質問に答えることで占められるからです。

 一方的に話す技術、すなわちスピーチやプレゼンテーションが必要になるのは、組織の中でもっと出世してから。若手社員とエグゼクティブでは求められるスキルが違うのです。

 もっとも「質問の意図を理解する」といっても「相手の気持ちを考える」「場の空気を読む」といった気配りの話ではありません。ましてやテレパシーでもありません。

 これは「国語」の領域です。

「特徴=他のものとの違い」「理由=きっかけ+目的」など、日本語には「こう問われたらこう答える」という受け答えのルールがいくつもあります。

 本来なら、小学校の国語の時間に教わっておくべき基本ルールです。

 しかし現在の国語教育において「受け答え」のトレーニングは最も手薄な分野。与えられた選択肢の中から選ぶだけというマークシート方式では「質問の意図」まで考えなくてもそれなりに点数が取れてしまうからです。

 いわゆる一流大学を出た人でも、思いつきで言い散らかしたり、言いたいことばかり一方的に話してしまう癖が抜けないのはそのためです。

 いくつかのルールをただ「知らない」というだけで、せっかく実力があるのに上司に誤解され、チャンスを逃してしまう。面接で大減点を食らってしまう。

 これは大変もったいない話です。

 予備校講師である私が、若手社員に向けたビジネス書を書く理由はここにあります。

 国語を教える側の1人として、責任を感じているのです。

学校では学ばない「答え方」

 私の本業は予備校で国語と小論文を教え、学習参考書を書くことです。

 そこで、本連載の基となった書籍『仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」』も問題集っぽく作ってみました。「受け答え」のルールを学ぶための問題を80問用意しています。ただ読んでもいいのですが、できれば「自分なら、どう答えるか」を考えてから読み進めてください。あなた自身の「答え方の癖」が見えてくるはずです。

 本連載では次回以降、その80問の中から8問をピックアップ。毎週公開していきます。

仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」について

 部下の仕事の9割は、聞かれたことに正しく答えることです。ビジネスにおける考え方には「こう聞かれたら、こう答える」という決まった型があります。「打てば響く部下」と思われるために必要な「受け答え」の技術を大手予備校で現代文、小論文を指導する「国語のプロ」が伝授します。

 この記事は2013年6月14日に発売された中経出版の『仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」』(鈴木鋭智著)から抜粋、再編集したものです。


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