ゲーム感覚の在庫管理システム、これまで使っていた紙の伝票を反映させる経費精算システム、リアルタイムで経営分析できる電子カタログ、年配の営業スタッフでも使える受発注システム――。こんなiPad向け業務ソリューションが展示されていた。
iPadを使った業務効率化の波が、中小企業にも波及している。導入を検討する企業が急増する一方で、数あるソリューションの中から「費用対効果」「使いやすさ」「運用のしやすさ」といった導入条件を満たすソリューションを見つけるのは難しいのが現状。中小企業の中には情報システム部を設置する余裕がないケースも多く、自社のシステムに最適化したシステム作りで難航するケースも少なくないという。
こうした中、iPad対応の業務システムを比較的安価なコストで構築できるソリューションとしてFileMakerシリーズが注目を集めている。最大の魅力は、iPadへの展開のしやすさ。PC/Macに対応する「FileMaker Pro」で開発した業務システムは、無料のiOSアプリ「FileMaker Go」を通じてiPadで利用できるため、アプリ開発にかかるコストを大幅に軽減でき、それが業務システム全体の開発コストの低減にもつながっている。
5月8日に開幕したモバイルソリューションの展示イベント「スマートフォン&モバイル EXPO春」のファイルメーカーブースでは、FileMaker製品を使った業務システムの開発を手がける11社のベンダーがブースを構え、iPadに対応する自社サービスを紹介している。その中から、中小企業の導入条件に合うソリューションをピックアップしてみた。
在庫管理をゲーム感覚で楽しく――。こんな在庫管理ソリューションを展示しているのがU-NEXUSだ。
在庫管理は、理論在庫と実際に数えて確認した在庫を照らし合わせる作業。従来は紙のチェックシートに記入していくのが一般的だったが、ここでiPadを使おうという動きが高まっている。
紙のシートを使ったチェックでは、紙とペンで両手がふさがってしまうために在庫数を確認しづらく、シート上のどこからどこまでを誰が担当しているかも分かりづらい。また、U-NEXUSの担当者によると、単調な作業が続くため、いかに集中力を持続させられるかも課題になっているという。
こうした現場の課題を解消しようと開発されたのがiPadに対応する在庫管理システム「在庫整備ing」(ざいこせーびんぐ)だ。タッチ操作で在庫の数を入力できるのでペンを持つ必要がなく、iPadをケースに入れて首にかけて使えば両手がふさがることもない。作業者の担当エリアはあらかじめ設定でき、ほかのスタッフがチェックしようとするとアラートが出るのでダブってチェックするのを防げる。本部システムとのネットワーク接続にも対応しており、数が異なる場合にすぐ連絡できるのもメリットの1つだ。
さらに作業を楽しくするための工夫も盛り込まれている。このシステムでは、チェック画面に理論在庫の数を表記せず、入力した在庫の数と異なる場合にアラートが出るようにしたのだ。「入力してみないと数が合っているかどうかが分からないので、ゲーム感覚でチェックできる」(説明員)。この機能は現場のスタッフから好評を博しているという。
導入コストも比較的安価に抑えられている。カスタマイズの内容によって料金は異なるが、初期費用が5万円からで、システムの月額利用料は1〜2万円。FileMaker Proは最低1本あれば導入でき、これに1IDあたり1000円前後の月額利用料がかかる。ネットワーク接続する場合にはもう少しコストがかかるが、中小企業でも無理なく導入できる価格に押さえられるという。
「作業を見える化できて、50人、100人規模の会社でも安く簡単に導入できるので、中小企業の経営者に受けている」(説明員)
今、使っている紙の伝票をiPadで使えるようにします――。テクニカル・ユニオンの「Account Note」は、こんなサービスをうたう電子決済システムだ。経費/交通費の精算や出張/休暇などの申請、稟議書など、“紙を回して印鑑で承認する”ワークフローを電子化し、iPadで使えるようにした。
ターゲットは、これらのワークフローを紙で行っている中小企業。紙からiPadに移行しても違和感なく使えるよう、親しみやすいUIデザインを採用し、発注の際に利用している紙の伝票を渡せば、それを反映させた形でカスタマイズするという。
導入コストは、カスタマイズの度合いによって異なるが、システムの料金が30万円前後から。FileMaker Proは最低1本導入すればよく、iPadで使う場合は無料のFileMaker Goをインストールする。
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