人はポジティブなものを提供されるよりも、ネガティブなものを解消してくれるもののほうに対価を支払いやすい特性があります。あなたがビジネスプロデューサーなら、「不」をもっと意識して生活し、そこからビジネスチャンスを見つけるべきです。
成功する一握りの人々だけが実践する、共通の「思考の法則」を知るには、いったん私たちが常識だと考えてきたルールをリセットする必要があります。そして、彼らの行動や考え方に注目し、そのエッセンスを吸収して、その根底にある思考のサイクルを身に付けることが重要です。
成功者はみな、次にあげる5つのビジネスプロセスを何度も、高速回転で循環させています。私は、キーワードとなった5つの英単語の頭文字をとって「5Aサイクル」と呼んでいます。
さて、ここで問題です。
米国のとあるビジネスマンの元に1通の催促状が来ました。送付元はレンタルビデオ大手のブロックバスターで、内容は延滞しているレンタルDVD『アポロ13』の延滞料40ドルを直ちに払うように求めるものでした。このビジネスマンは、多額の延滞料を請求されて、何を考えたでしょうか?
普通はどのようにすれば延滞料を払わずに済むかとか、妻にどう打ち明けるか、あるいは逆ギレしてビデオ屋に怒鳴りこむといったチョイスくらいしか考えられないと思います。しかし、そのビジネスマンは違いました。
彼はブロックバスターからの催促状を見て、「延滞料を気にする必要のないレンタル屋はできないだろうか」と考えました。
そして、もし月額定額料金で何枚でもDVDが借りられるサービスがあれば、うけるのではないか、と思ったわけです。自分の体験した不満を解消するビジネスが実現すれば、同じような不満を感じる人々の共感が得られるはずだと確信したのでした。
彼の名前はリード・ヘイスティングスといい、日本ではなじみがないですが、今やネットフリックス社という業界1位のオンラインDVDレンタル会社の創業者兼CEOです。
1997年に創業したネットフリックスはその後、急成長を続け、2010年には2000万人の顧客を持ちます。最近では、DVDだけでなくインターネット経由で映画やドラマを定額料金でストリーミング配信する事業も始めました。米国では、お茶の間の映像サービスとして広く普及し、2011年の売り上げは8.7億ドルを超えるまでになりました。
一方、ヘイスティングス氏に催促状を送った当のブロックバスターは当時、全米3000店舗を持ち、ビデオやDVDのレンタルを行っていました。それがネットフリックスを始めとする無店舗型のDVDレンタルや無料のインターネット動画サービスの普及により、経営が悪化。2010年には連邦破産法第11条を申請して、破産してしまいました。ブロックバスターがヘイスティングス氏に延滞料を請求したことがきっかけで、形成が逆転したというのは興味深い話です。
業界大手というのは、顧客の不満に鈍感になりがちです。ビジネスがうまくいっていると、顧客に不満はないはずだと勘違いしてしまうのかもしれませんね。『ビジョナリーカンパニー』の筆者、ジェームズ・C・コリンズは優れた企業が衰退していく第一のプロセスが「うまくいっているときに傲慢(ごうまん)になること」と指摘しています。
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