マクドナルドがこだわった「らしさ」とは何か?トップ1%の人だけが実践している思考の法則(1/3 ページ)

企業にはそのサービスを印象付ける「ブランディング」、つまり「らしさ」が必要です。「らしさ」を壊して、むやみに多角化したり、ヒト、モノ、カネといった企業の持つ貴重なリソースを分散させたりすることは避けるべきです。

» 2013年02月26日 10時20分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 成功する一握りの人々だけが実践する、共通の「思考の法則」を知るには、いったん私たちが常識だと考えてきたルールをリセットする必要があります。そして、彼らの行動や考え方に注目し、そのエッセンスを吸収して、その根底にある思考のサイクルを身に付けることが重要です。

 成功者はみな、次にあげる5つのビジネスプロセスを何度も、高速回転で循環させています。私は、キーワードとなった5つの英単語の頭文字をとって「5Aサイクル」と呼んでいます。

  1. 顧客の抱える問題の「認知」(Awareness)
  2. 問題解決のための従来と異なる「アプローチ」(Approach)
  3. アイデアのスピーディな「実行」(Action)
  4. 仮説と実行結果の差異に対する「分析」(Analysis)
  5. マーケットニーズに合わせた柔軟な「適応」(Adjustment)

 さて、ここで問題です。

【問題】解答例にならって自分なりに考えてみましょう。

  • あなたはハンバーガーチェーンのオーナー社長。この10年、店舗数は順調に増えたが、1店当たりの売り上げは連続して減少。役員の中には、「ハンバーガーはもうあきられたから、カレーやチャーハンを出してみては?」を話も出ているほど。確かに、これまで興味がなかった人が来店してくれれば、新たなビジネスチャンスが得られそうだが……。


解答例A

  • 店舗が多ければ、メニューを増やすことで顧客の選択肢は増え、売り上げは上がるはず。店舗の数を強みにメニューの多様化を図って勝負すべき。

解答例B

  • むやみにメニューを増やすのには反対。ハンバーガー屋なのか何屋なのか、分からなくなる。

メニューを増やせば、人は増えるのか?

 「品ぞろえが増えれば、これまでハンバーガーに興味のなかった層も来てくれるかもしれない」

 確かに、店舗数が多ければ新しいカテゴリでヒット商品を生み出すことによって集客力、収益力が回復するかもしれない……。そう考えるのは、間違いではありません。ただし事業の「本筋」を忘れると短期的な収益で終わるだけでなく、ブランドイメージがあやふやになり、長期的にはマイナス効果に終わることもありうるのです。

 実は日本マクドナルドも、同じような状況に陥ったことがあります。1990年ごろ、マクドナルドは出店ラッシュでその数は日本全国で1000店を超えていました。しかし、店舗数の伸びとは裏腹に収益は急速に悪化していたのです。

 社内ではその原因を店が増えすぎたことによる「共食い状態」であると考えていました。ハンバーガーの需要は既に頭打ちだから、その限られた需要を多くの店舗で取り合う「共食い」だと。

 だからもはやハンバーガーにこだわらず、店舗数の多さを生かしてカレーやチャーハンなどメニューを増やせば、収益力は回復するのではないかという話が持ち上がったのです。そして実際に、カレーやチャーハンを提供したといいます。今となってはマクドナルドでカレーが販売されているのは、イメージしづらいですね……。ともかく、日本マクドナルドは7年連続で既存店売り上げが減少するという、崖っぷちに立っていました。

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マクドナルドがカレーを提供していた当時のCM

 ところが、Appleからヘッドハンティングされて日本マクドナルドへやってきた異端の経営者は、まったく別の見方をしました。むやみに多角化するのではなく基本に立ち戻ろうと考えました。

 「ハンバーガー屋は、ハンバーガーをおいしく、高い品質のサービスで提供することがコアビジネス」として、自分たちの原点に立ち戻ることにしたのです。

 あらためて飲食業の基本となる「QSC(おいしさ、サービス、清潔)運動」を促進し、不採算店を徹底的に閉鎖して優良店に絞った上で店舗オペレーターの教育や評価制度といった「質の改革」に乗り出したのです。

 結果、その後日本マクドナルドはなんと、8年連続の増収増益! 「マック(Mac)からマック(McDonald)へ転身」と冷やかされた新社長の原田泳幸氏は、一転、日本のカリスマ経営者の1人として知られるようになりました。

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