理性、に必要な能力の一部に「論理思考」がありますが、率直に言って私は「論理思考」と世間で呼ばれているものには、感情を覆す力はないと思います。
「『原発を選択しない』という私の意見に変わりはない」とA氏は言いました。実は、A氏がそういう感情を持つことは理解できる、というか予想できることではありました。A氏のライフスタイル、人生におけるポリシーをある程度知っていたので、そういう意見を持つのも無理はないことと分かっていたんです。
予想外だったのは、その感情を優先して「文書の真偽を今さら調べようもない」と、調べる努力自体を放棄する方向に走ったことです。そして、その直後に「原発についての知識をしっかり身に付けなければいけない。そっちの方が重要でしょ?」という言葉がつづく、これを矛盾と思っていない、というのが私にとっては衝撃でした。
でも、人間ってそういうものだと思うのですよ。ロジックには感情を覆す力は無い。だから、感情的に嫌いなもの、気に入らないものに対しては、「論理的にその対象を否定できる根拠」を探して極めてロジカルに「原発ゼロこそ日本の倫理」といった結論を出してしまえるのが人間というもので。
こういうわなは「論理思考」能力をいくら磨いても防げないようです。実際のところ、ロジカルシンキングを教えている人物が感情のわなにはまっているケースも山ほど見てきました(まあ、ロジカルシンキング講座でやってることなんて本当のロジカルシンキングじゃない、という意見もあることでしょうが……)。
そんなわけで、私としては「感情的になることは構わないが、感情的に人を非難することだけはしない」という方針でいきたいと思います。以前、糸井重里流の考え方を紹介したときにも書きましたが、感情的に人を非難してしまうと、それが間違いだったとしても撤回するのが難しくなるからです。
※この記事は、誠ブログの「読解力図解力と教える技術の謎解きブログ:ロジカルシンキングでは感情をくつがえすことはできない」より転載、編集しています。
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