相手に嫌な思いをさせずに、簡単に改善点を伝える方法ボクの不安が「働く力」に変わるとき(1/2 ページ)

「部下は褒めて育てろ」などと書いてあるビジネス書は多い。ただ褒めることはできても、改善点をどのように伝えたらいいのか、分からない人も多いだろう。そこで相手に嫌な思いをさせずに、簡単に改善点を伝える方法を紹介しよう。

» 2013年02月06日 11時00分 公開
[竹内義晴Business Media 誠]

ボクの不安が「働く力」に変わるとき:

 「毎日しんどいなあ。どうしたら、もっと楽しく働けるんだろう」――。

 先行き不透明なビジネス環境が続いている。ストレスが多くギスギスした人間関係の職場で、「いつか“うつ”になるかもしれない」と不安を感じながら働いている人も多いのでは。

 本連載『ボクの不安が「働く力」に変わるとき』では、労働者一人ひとりが抱えているメンタル面やモチベーションの課題、職場が抱えているコミュニケーションや人間関係の問題などを取り上げ、「どうしたら楽しく働く環境をつくれるか」をテーマに考えていく。

竹内義晴(たけうち よしはる)

 1971年生まれ。経営者、教師、コンサルタント、コーチ、カウンセラーなど、リーダー層を支えるビジネスコーチ。人材育成コンサルタント。

 自身がプレッシャーの多い職場で精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。人や組織を育てるには、マネジメントの手法だけでは太刀打ちできないことを痛感。優れたリーダーたちが使う卓越したコミュニケーションスキルを学び、実践。チームの変革に成功する。実践の経験から、難しいコミュニケーションスキルを誰もが現場ですぐに使えるようにした独自の手法「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。実践的なコミュニケーション方法を伝えるコミュニケーショントレーナー。

 米国NLP協会認定NLPトレーナー、NPO法人しごとのみらい理事長。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』(こう書房)がある。

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 ある講演先での出来事です。職場を円滑にするコミュニケーション法について、「改善点の伝え方」などを一通りお話したあと、リーダー層の参加者から次のような質問を受けました。

 「スタッフへの“褒めるコミュニケーション”はとても重要だと思います。私は改善点を伝える際に、一度褒めてから改善点を伝えるようにしているのですが、話の主旨は"改善点を伝える"ことなのに、スタッフは"褒められた"と受け取られることがよくあります。スタッフに嫌な想いを抱かせないようにしながらも、改善点をちゃんと伝えるためにはどうしたらよいのでしょうか?」

 いろんな情報を見ていると、スタッフの育成方法として、「褒めて育てるといい」という情報をよく見聞きしますね。スタッフのよいところを褒めるのは、リーダー側の観察力を養うとともに、スタッフが存在を認められたと感じ、自信と自己肯定感を抱きます。次のやる気を育てる意味でも、とても重要なことだと思います。

 一方、仕事の中では、褒めるシーンばかりではありません。スタッフに改善してほしい点があれば、きちんと伝える必要があります。

 しかし、これがなかなか難しい。改善点を伝えられる側も嫌な思いをするのかもしれませんが、それ以上に、伝える側は気を使うのです。以前聞いた話では、リーダー層の中には、「部下をうつにしてしまうのが怖くて、うまく叱れない」という方もいるそうです。

褒めてから、改善点を伝えるPMP法

 講演では、改善点の伝え方としてPMP法について触れました。ここで、PMP法について簡単に説明しておきましょう。

 私がリーダーの役割を与えられたとき、スタッフに上手く改善点を伝えることができませんでした。上から目線でプレッシャーをかけることしかできず、職場にイヤ〜な空気を漂わせた経験が幾度となくあります。と言うのも、私自身がスタッフの時代に叱咤されて育てられてきたので、上手な改善点の伝え方を知らなかったのです。

 そこで、いろんな伝え方を研究して編み出したのがPMP法でした。PMP法というと何か特別な伝え方に感じられるかもしれませんが、その伝え方はいたってシンプル。

  • P(プラス):スタッフの日常の頑張りをねぎらう
  • M(マイナス):改善点を伝える
  • P(プラス):期待していることを伝える

 改善点を真ん中に置いて、最初と最後を肯定的なメッセージで囲みます。全体的にはポジティブな印象として伝わるので、伝えられる側は嫌な印象が少ないし、伝える側もネガティブなメッセージを伝えるストレスが和らぐのです。プラス→マイナス→プラスの頭文字をとってPMP法です。簡単でしょう?

 例えば、スタッフから提出された書類の要点がまとまっていないときには、「早速書類を持ってきてくれたんだね。ありがとう(P:ねぎらい)。ここは、△△を○○にしてまとめると、もっと良くなるんじゃないかな(M:改善点)。○○さんならきっとできるよ。期待しているよ(P:期待)」のような感じです。

 口頭で伝えるときだけではなく、文字情報でしか伝えることができないメールでは特に有効です。いきなり「△△ができていないから、○○にしなさい」と伝えられると、印象的には思っている以上に否定的に伝わってしまうので。

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