ブラザーのドキュメントスキャナ「ADS-2500W」が話題だ。無線LAN機能とタッチパネルの内蔵により、PCやスマートフォンを使わずにクラウドへアップロードできる。とにかく気軽にできるので「とりあえずスキャン」しておくと、あとから簡単に書類を探せるようになる。
ブラザーのドキュメントスキャナ「ADS-2500W」が話題だ。無線LAN機能とタッチパネルの内蔵により、PCやスマートフォンを使わずにクラウドへアップロードできるという。PCだけでなく、スマートデバイスすら不要というわけだ。その使い勝手を試してみた。
いわゆる“自炊”や、タッチパネル端末の普及にともなって、ドキュメントスキャナが注目を集めるようになって久しい。何十枚もの書類をドキュメントスキャナで一気に読み込み、持ち運びやすいスマートフォンやタブレット端末を使って自由な姿勢で読む。そんなスタイルが普及しつつある。
そのドキュメントスキャナといえば、PFUの「ScanSnap」シリーズが有名。2011年11月には最新モデル「iX500」をリリースするなど、着実な進化を遂げている。
今回紹介するADS-2500Wは、ブラザーにとって初の国内向けドキュメントスキャナ。未知数な部分が多いかも? とは思ったが、そこはさすがに複合機で実績あるメーカー。一通りセットアップなどを試したが、機能不足を感じることはなかった。最新ドライバは一括パッケージされたものがWebサイトで簡単に入手できるし、Windows 8にももちろん対応している。
冒頭で述べた通り、ADS-2500Wはネットワーク対応になっているのも大きな魅力だ。本体背面の有線LAN端子、あるいは無線LANでネットワークに接続できる。このため、ネットワーク対応プリンタと似た感覚でスキャナを使えるわけだ。
特に無線LAN接続時は、ADS-2500Wの設置自由度が極めて高くなる。書類を無理なくセットできる場所、かつ電源の確保さえできればいいので、極論すれば別室に置くことすらできる。「PCからUSBケーブルが届く範囲にしか設置できない」ということもない。
加えて、USBケーブルでの接続でもネットワーク接続でも、機能差は基本的にない。ADS-2500Wを無線LAN接続した状態で、かつ同機内蔵タッチパネルの操作でスキャンを実行し、Windows PCにデータを送る(ファイルとして保存する)ことも難なく行える。競合のiX500は無線LANを内蔵しているもののPCとのネットワーク接続ができない(2013年1月時点。スマートフォンとの接続は発売当初からサポート済み)ため、より本格的なスキャナ活用を模索している人にはおすすめしにくい。しかし、ADS-2500Wならその心配はない。「ドキュメントスキャナを導入したいけれども置き場所がなくて……」という人にこそ役立つ機器だろう。
スマートデバイス連係も十分だ。「Brother iPrint&Scan」アプリがiOS用、Android用それぞれリリースされており、ワイヤレスでスキャンが実行できる。iOS版を試した限り、解像度を変更できないなどの不満点もあるが、接続設定などは非常に簡単で使いやすい。
しかし、ADS-2500Wの魅力は「レイアウトフリー」だけに留まらない。そもそもPCやスマートフォンすら不要で、外部のクラウドサービスへスキャンデータをアップロードする「クラウド接続機能」があるのだ。
さて、この機能を使ってアップロードできる先は、現状でDropbox、Evernote、Google ドライブ、Picasa、Flickr、SkyDrive、Box。1月31日時点ではこの8種類となっており、その他のオンラインストレージを追加することはできない。
セットアップは少々独特だが、難しくはない。サービスごとに必要となるのが「仮登録ID」だが、これはPCなりスマートフォンなりでブラウザーを使って専用サイトにアクセスすることで入手できる。ここでは実際に、Google ドライブとの連係方法を見てみよう。
まず専用サイトにアクセスする。すると、連係できるサービスを表示するので、ここでGoogle ドライブを選択。続いて、Google ドライブのサイトに遷移するので、Googleアカウントでログインする。最近はGoogleの「2段階認証プロセス」(ワンタイムパスワードによる認証)を利用している人も少なからずいると思うが、それも問題なくクリアできる(=固有パスワードをわざわざ発行する手間がかからない)。あとはアカウント接続をひもづけるための確認メッセージを表示するので、了承すれば、仮登録ID(11桁の数字)を発行。これでブラウザ側での作業は完了だ。
今度は、ネットワーク接続されたADS-2500W側で作業しよう。タッチパネルから「クラウド」-「Google ドライブ」とメニューを選択していくと、先ほどの仮登録IDを入力する画面になる。このあたりは、タッチパネルを内蔵するADS-2500Wだからこそ実現できた操作性だ。また、事前の認証をPCやスマートフォンであらかた済ませておくという点も、煩雑さを軽減してくれている。
なおこの連係設定時には、4桁のPINによる保護の有無が設定できる。複数人でADS-2500Wを共有する職場であっても、間違ってアカウント利用される懸念はかなり排除できるだろう。
難点はある。一度決めた設定値をあとから変更するという概念がそもそもない。なので、アカウントの設定自体はそのままで、表示名やPINの値だけを変更したい場合には、仮登録IDを取得するところからやり直しになる。既存アカウントの削除も必要になるだろうし、一手間かかるのは間違いない。できれば改善を期待したい。
もう1つ、アップロードできるファイルの種類はクラウドごと制限があるようだ。Google ドライブでは、スキャン原稿は必ずPDFとなる。一方、Picasa(Google+のアルバム)はJPGのみだが、Dropboxへはスキャン時にADS-2500WのタッチパネルでPDFかJPGかを選べる。各クラウドの成立背景もあるのだろうが、もう少し分かりやすくメニュー表示で説明してほしい(設定値をグレーアウトさせて変更できないことを明示する等)。
初回セットアップを済ませておけば、あとはもうPCもスマートフォンも使わずに、スキャンデータをアップロードできてしまう。解像度、モノクロ/カラー、両面スキャンの可否もスキャンのたびに変更できるので、メモ的な書類のアップロードであれば実用上問題はないだろう。
とはいえ、PCからのスキャンに加えて、設定値が制限されるのは事実。例えば、傾き補正を適用させるかといったことまでは無理だ。また、アップロード前にプレビューを見るといったことも流石にできない。同様に、トリミングや天地の回転も不可能。このあたりは利用者の割り切りも必要になりそうだ。
さて、スキャンしたデータは一体どのようなかたちでクラウドに保存できるのだろうか。Google ドライブでは「マイドライブ」の直下に「From_BrotherDevice」というフォルダを自動作成し、そこへどんどん蓄積していく。ファイル名は数字の羅列。完全な乱数ではないが、日付でもないため、命名ルールは正直いってよく分からない。ただ、Google ドライブのWeb画面からリネームやフォルダ移動ができるので、よほどファイルを溜め込まない限りは整理できるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.