ビジネスパーソンの多くが当たり前のようにモバイルデバイスを使う時代になった。モバイル、そしてクラウドは私たちの世界の中に知らないうちに入り込んでいるのだ。
本連載は2012年11月に発売した『モバイルクラウド』(中経出版刊)から一部抜粋しています。
爆発的に増える巨大なデータ量(ビッグデータ)の先には「モバイルクラウド」という新たなソリューショントレンドが生まれつつあります。しかしモバイルクラウドの本質は、「ノマド」「ソーシャル」「スマートデバイス」などとともに語られてきた「ワークスタイルのシフト」にあります。本書はモバイルクラウドが私達の暮らしに与えるインパクトを語る一冊です。
取引先への移動中、電車の中でふと回りを見渡すと、数年前とはすっかり景色が変わっていることに気付く。ほとんどの人が手元のスマートフォン、またはタブレット端末を見つめている。
そう言う私自身も当たり前のようにモバイルデバイスを使い、ネットワークの向こう側、いわゆるクラウドにアクセスしている。そう、既に「モバイルクラウド」は、私たちの世界の中に知らないうちに入り込んでいるのだ。
聞き慣れない言葉かもしれないが、私がモバイルクラウドというコンセプトを提唱し始めたのは、2008年のことだ。当時、日本で発売したばかりのiPhoneを見て、危機感を募らせたことをいまでも鮮明に覚えている。
ハイテク、通信、メディア領域のコンサルタントの立場から見たとき、アップルが仕掛けようとしているビジネスモデルの大転換は、国内の企業(通信事業者、端末事業者)にかなりの打撃を与えると確信したからだ。
iPhoneは、音楽プレイヤーと電話が一緒になったデバイスなどではなかった。アップルの狙いは、音楽プレイヤーとコンピュータをモバイルデバイスの形で提供することにあったのだ。それゆえ、企業のモバイルへの対応は必至であり、その実現のためにはクラウドの活用が不可欠である──私は一貫してこう語ってきた。
しかも、モバイルクラウドの生み出すインパクトは、通信や端末を手掛ける事業者だけにとどまらない。むしろ、あらゆるビジネス領域を超えて、個人の仕事や生活にまで変化をもたらそうとしている。
だから、今の働き方やライフスタイルに積極的に変化をもたらしたい人は、この領域で起こりつつあることを見据えておくべきだろう。
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