拠点は沖縄、ビジネスは都市部――ネットを駆使した3人の男の働き方Re:Work !(4/4 ページ)

» 2013年01月16日 10時10分 公開
[三河賢文,Business Media 誠]
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仕事をするのに、オフィスはいらなかった

砂川 真一郎(すなかわ・しんいちろう)さん(33歳)

宮古島出身、那覇市在住。大学卒業後、テレビ局や広告会社、Web関連企業を経て独立。WebサイトのデザインやWebサービス、スマートフォンアプリの企画・開発などを行うモノリスを立ち上げ、現在1人のパートナーとともにWeb制作やEC事業を営む。


 独立し、「モノリス」という会社を立ち上げて、Web制作やEC事業を営んでいる砂川さん。しかし独立に至るまでの経緯は、まさに波乱万丈だった。まず琉球大学を卒業後、テレビ局でアルバイトを始めた。主に映像素材の管理や予告編の編集などをしていたという。しかし正社員になることは難しく、悩んだ末にアルバイトを辞めて2カ月ほど掛けてバイク旅行へと旅立った。しかし旅を終えたとき、あることに気づいたのだ。

 「この先、どうするか考えてない」

 そこで砂川さんは、自分で何かをしっかり作る仕事に就こうと考え、広告会社に入社。プランニングや営業などを2年ほど経験したが、なんと社長が海外へと突然逃亡したという。いきなり働く場を失った砂川さんは、東京や大阪にも拠点を持つWeb関連企業からの誘いで沖縄支社長として転身。しかし会社との方針が合わず何度も衝突してしまった。

 そのとき考えたのが、「だったら1人でやりたい」ということ。これが、モノリスのスタートである。

――モノリスを立ち上げたころの話を聞かせてください

 モノリスは、前職から3人の社員を連れて立ち上げました。Web制作をメインとして、小規模なシステム開発も手掛けたのがスタートです。

 私はもともとプランニングを得意としているので、デザインスキルなんて素人とさほど変わりません。コーディングだって同じです。ですから、彼らの専門スキルがあってこそモノリスは立ち上げられたと思っています。

 しかし程なく1人は専門学校の教員として活躍するようになり、もう1人は友人の誘いで別の会社へ。いつの間にか、2人だけになってしまいました。

――人が減ったことで何か変わりましたか?

 もともと個々人の力量内で業務を行っていたので、2人が抜けることで突然大変になることはありませんでした。事前に相談も受けていましたし、将来あってのことなので、尊重しました。

 変わったのは、働き方です。私が事務所に戻らなくなったんですよ。それぞれ自由に働くスタイルに変わりました。本心では、モノリスが出発した事務所を形だけでも残したかったんですけどね。しかし不要になったものをいつまでも残しておくことは出来ず、手放しました。

 Wi-Fiルータを持っていれば、どこでも仕事は出来ますからね。那覇を中心にいろいろなところを転々として仕事をするようになり、そのまま帰るパターンが普通になってしまいました。そんなある日、もう1人のパートナーからこう言われたんです。

 「1人でいても仕方がないので、僕も家で仕事して良いですか?」このとき、僕たちの仕事にオフィスは不要なんだと感じました。確かに私はずっと外にいるし、彼が事務所でやっている仕事はインターネットがつながれば家でもできるわけです。当然といえば、当然の流れですよね。

 ただし週1回は必ず会いますし、2日に1回はSkypeでミーティングをしています。誰も見ていないとついサボりがちですし、お互いの状況が見えないのは、一緒に仕事をする上でやはり問題ですから。

 それ以外は、お互い自由なスタイルで仕事をするようになりました。

――いわゆるノマドスタイルになって、何か変化はありましたか?

 仕事と普段の生活とに、区切りが付けられないのが悩みです。事務所があれば、「事務所に入る」というスイッチがありました。しかしどこでも仕事ができるようになると、家に帰っても仕事をしてしまうんですよね。

 特に子どもが生まれて、家で仕事をすべきかどうかは非常に悩みました。実際にはそれでも家で仕事をしてしまっているのですが、その分、仕事への集中力は高まったと思います。

 カフェで仕事をする場合は、コーヒー1杯で2〜3時間。これ以上は、気持ちの面でも居続けられません。1日に2〜3個所を周りながら仕事をするのですが、この仕事時間をとにかく集中して濃いものにするようになったんです。そうすれば、いくら家で仕事をするとは言っても、ちゃんと家族との時間を取れますからね。

 あとは、何か仕事の中に息抜きも入れていきたいなと思っています。例えば私がいろいろな場所で仕事をして、そのリポートをブログにまとめるなんて面白そうじゃないですか? 実はEC事業のモノリスストアを立ち上げたのも、少しこの息抜き的な要素があるんです。ずっと受託制作、開発だけしているより、自分たちから発信できるものを作ったら楽しいだろうと。

 今は拡張子パンツとキーボードクッションを販売していますが、これらは全て自分たちで企画した商品です。今後もモノリスストアで扱う新しい商品を開発していきたいですし、そうやって仕事の中に息抜きを入れたいと思っています。

――何か、メッセージがあればどうぞ

 会社員なら、まず会社員であることの幸せをかみしめて欲しいです。月末に決まって給与が入るなんて、普通に思っているかもしれませんが素晴らしいことなんですよ。しかしその上で、もっと楽しいことを求めるのであれば、飛び出してみることも1つの手だと思います。

 結局は、全て自分自身の選択なんですよね。何か転機が訪れると思っている人もいますが、そうではなく、自分の選択によっていつでもできるんです。本当に良い思える方向に、どんどん進んでいったら良いんじゃないでしょうか。

 それは何も、いきなり会社を飛び出せということではありません。インターネットが普及して、仕事にしても何にしても場所なんて関係なくなりました。だから、空いた時間で少しその「楽しい」をつまみ食いしてみてはどうでしょうか。興味のあることに、まず少しでも良いから身を投じてみるわけです。そうしたら、何か新しいものが見つかるかもしれないですよ。


 このようにインターネットの力によって、今や仕事は場所を選ばない時代となった。必要なのは「何をしたいか」という目標を持ち、そのために必要なものを自ら探し、そして活用すること。そして新たな一歩に恐れず、積極的にトライしてみることのようである。

 今回は沖縄を拠点にする3人に取材をしたが、これは国内全土、あるいは海外であっても可能なことだ。「今」に疑問を抱いているのであれば、ぜひともまず動き出してみてもらいたいと思う。

 とはいえ現在仕事に追われる人々にとっては、会社を離れた彼らが実際に毎日をどう過ごしているのか。想像ができないのではないだろうか。そこで次回は、今回取材させて頂いた川平さんに再びスポットを当て、日々のワーク&ライフスタイルを紹介したい。

著者紹介:三河賢文(みかわ・まさふみ)

 1983年岩手県生まれ、宮城県育ち。人材コンサルティング会社、Web関連会社での勤務を経て、2010年6月にナレッジ・リンクスとして独立。「時間の自由」を第一としたワークスタイルを実践中。多くのSOHOやフリーランスワーカーとパートナー関係を持ち、業務機会の提供を行っている。プライベートでは2人の子どもを持ち、マラソンやトライアスロンにも挑戦。ITやビジネス全般を中心とした執筆活動も行う。



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