新規事業アイデアを魅力的に語る方法とは新規事業アイデアの授業

新規事業のアイデアがあっても資金がなければ始められません。会社の上層部や外部の投資家をうならせて、アイデア実現のための資金をどうやって手に入れるのか、今回はその方法を考えてみましょう。

» 2012年12月27日 09時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 新規事業のアイデアがあっても、よほどのことがない限り、資金がなければ始められません。会社の上層部や外部の投資家をうならせて、アイデア実現のための資金をどうやって手に入れるのか、今回はその方法を考えてみましょう。

アイデアを語るための3要素

 読者のみなさんはプレゼンが得意かもしれません。もしかしたらスティーブ・ジョブズなみに魅力的なスライドを作れる人もいるかもしれません。しかし、新規事業のアイデアを伝える上でもっとも基本的な部分は、しっかり整理できているでしょうか? PowerPointの見栄えや、軽妙なスピーチテクニック以上に重要なものがあります。それは次の3つです。

  • 顧客に関するもの:顧客は誰か? 顧客のどんなニーズを満たすものか? 顧客はどのくらいいるのか?
  • 自社に関するもの:何を提供するのか? どう提供するのか? なぜ、我々がやる必要性があるのか?
  • 競合に関するもの:競合はどんなところか? 競合と比べて優位性は何か?

 そう、ビジネスフレームワークの基本形である3C分析をベースに考えるのです。顧客、自社、競合という3つの側面からアイデアを説明します。新規事業のアイデアを説明する際に、機能やディテールばかりに目がいく人もいますが、お金を引き出すためには経営的視点が欠かせません。そのためにもこの3つの側面で、質問に対してシンプルに答えられるようにしておきたいものです。

アイデアを阻むもの

 せっかくのアイデアも、実現までには多くの障害を乗り越えなければいけません。会社でGoサインが出るまででさえ、多くの反対者、懐疑的な人々を説得する必要があります。本連載の最終話として、そうした人々の賛同を得るための、ちょっとしたテクニックを紹介しておきます。

 まず、多くの経営幹部は客観性に乏しいものには賛成しません。どんなに担当者が熱弁をふるおうが、それを裏付けるデータを欲しがります。特に顧客のニーズが想定したものなのか、投資に見合うマーケットが存在するのかどうかは、気になる部分です。かならず、統計データやリサーチ結果など「数値」で論旨をフォローしましょう。

 また、論理的に正しいアイデアであっても、聞き手の心を動かさなければ、プロジェクトは始動しません。アフリカで飢餓が起こっている現状を統計的に知ったとしても、現地の人々の辛く厳しい生活に共感・共鳴しなければ、アクションが起こらないのと同じです。

 共感を呼ぶためには、アイデアに触れてもらうのが一番です。試作品を触ってもらう、味わってもらうことです。もし、サービスが目に見えないものであれば、想定顧客の声を生々しく伝えることです。ビデオなども有効でしょう。

 アイデアに共感しても、とにかくリスクを回避しようとする保守派の人もいます。新規事業に多額の資金が必要であれば、なおさらです。そうしたリスクを重視する人たちには、フィジビリティスタディ(市場テスト)の承認をもらいましょう。最初から大きな投資は誰だってリスクを感じます。

 かといって、せっかくのアイデアがリスク回避のため、つぶされるのももったいない話です。どんなに入念に調査したとしても、結局、ビジネスは実行しなければ分からない。だから、小さな規模でテストさせてくれ、というわけです。テストの結果で、さらに規模を大きくするか、中止するかを決めればいいと思います。とにかく、少しでもアイデアを世に問う機会を作ることが先決です。

 アイデアは、自分の子供のようなもの。産みの苦しみだけでなく、育てる苦労もあります。しかし、子供の成長によって親が成長するように、自分のアイデアを育み、大きくしていく過程は、あなたのビジネスマンとしての価値を大きく向上させることでしょう。

 不透明な世の中ですが、自分のアイデアに自信が持てれば、世の中の色が変わって見えます。ぜひ、読者のみなさんには自分の考えを世に問う感動を味わってもらいたいものです。


集中連載「新規事業アイデアの授業」について

 連載「新規事業アイデアの授業」は、5年にわたる人気講演「新規事業アイデアを生み出す実践フレームワーク」(講師:永田豊志、提供:Nアカデミー)から一部抜粋し、編集したもの。

 「図解思考」シリーズや「最強フレームワーカーへの道」でおなじみの著者・永田豊志が、新製品や新サービスなど新しいビジネスを生み出すためのアイデアづくりに役立つフレームワークを解説。映像学習にありがちな受動的な視聴ではなく、「発想シート」に視聴者がアイデアを書き込んで添削を受けるというインタラクティブなEラーニングになっているのが特徴となっている。

著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

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