年末調整とは? その書き方を理解しよう「大増税」時代に備えて(1/5 ページ)

読者の中にはなんとなく増税することを理解はしているが、そもそも税金の仕組みを分かっていない人が多いのではなかろうか。そんな読者もまずは年末調整から意識してみるといいだろう。

» 2012年11月22日 20時15分 公開

 日本は大増税時代を迎えようとしている。今年(2012年)は住民税の扶養控除が廃止になり、地球温暖化対策税も導入した。来年(2013年)からは所得税の復興増税。2014年には“本命”消費税が8%に増税、さらに住民税の復興増税が待っている。さらに2015年には消費税が10%への増税と、さながら“増税ラッシュ”といった様相だ。

増税スケジュール
2012年 6月 個人住民税増税 扶養控除の廃止/縮小
10月 地球温暖化対策税 化石燃料にCO2排出量の応じて課税
2013年 1月 所得税の復興増税 税額に2.1%上乗せ、25年間
2014年 4月 消費税増税 5%から8%へ
6月 個人住民税の復興増税 1000円/年、10年間
2015年 10月 消費税増税 8%から10%へ

 読者の中にはなんとなく増税することを理解はしているが、そもそも税金の仕組みを分かっていない人が多いのではなかろうか。筆者もサラリーマン時代は税金に対する理解は皆無に等しく、「扶養控除の控除ってなんだよ?」といった感じだった。

 サラリーマンの読者は、自分の税金とほんのわずかな接点ができるのが年末調整だ。今回は、年末調整の書き方とその意味を知ることで、少し税金に対する理解を深めていただきたいと思っている。また、個人事業主の方は年末が決算となる。独立して何年も経っている人は理解していると思うが、年末は節税の重要時期なので、2012年に独立した人に向けて節税方法を紹介したい。

年末調整の季節がやってきた

 生命保険に入っている読者は、保険会社から「生命保険料控除証明書」が手元に届いているはずだ。お勤めの会社によって時期は多少異なるが、すでに年末調整の紙が配られているだろう。サラリーマンにとっては年末恒例の行事だが、その意味をちゃんと理解しているだろうか。

 筆者は23年サラリーマンを続け、その後独立して6年が経った。独立し確定申告をするようになって、税金のことが少し理解できるようになった。サラリーマン時代は、例えば年末調整で生命保険の証明書を貼る際も、10万円を超えたら5万円の控除ということを理解していなかったので、手元にある証明書を全部貼り付けていた。10万円の証明書を1枚貼ればいいことに気付いたのは最後の2〜3年だった。

 住民税は地域によって差があり「豊田市はトヨタがあるから住民税が安い」などといった都市伝説も「へえ〜、そうなんだ」と鵜呑みにしていた。住民税が基本的に全国一律と知ったのは独立してからだ。

 いざ独立して、必要に迫られ税金の勉強をしてみると、思った以上に税金の知識は日々役に立つことが多いことに気付いた。例えば子ども手当に関するニュースの中で財源が扶養控除の廃止と聞くと、サラリーマン時代の筆者は「ふ〜ん」で終わったと思うが、「おいおい、子供のいる家庭を増税して財源にしちゃ駄目でしょ」と、その詐欺的な政策に気付くようになった。ほんの少し税金のことが分かると、世の中のこと、会社のこと、個人のことに対する見方が変わるかもしれない。

急ぐ人は国税庁へGO

 いやいや俺は税金の知識はいらないから、書き方だけ早く知りたいという人もいるだろう。そんな人は国税庁が用意した記載例をダウンロードしていただきたい。以前は個人のサイトにアップされた記入例を筆者は参考にしていたが、最近は真似したわけではないと思うが似たような記入例を国税庁が用意してくれている。

税金の仕組み

 最初にサラリーマンの方の税金の仕組みをザックリと確認してみよう。サラリーマンの所得税は以下の計算式で算出できる。

  • 給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
  • 給与所得−各種所得控除=課税所得
  • 課税所得×税率=所得税

 いきなり意味不明な給与所得控除、各種所得控除という言葉が登場したので順番に説明していこう。1つ目のキーワード給与所得控除は収入に応じて一定額を課税の対象から差し引いて(控除して)くれるもので、例えば年収が360万円〜660万円の場合は収入金額×20%+54万円という計算式となっている。年収400万円なら134万円とかなりの金額だ。自営業(個人事業主)の経費に相当するなどと説明されることが多いが、自営業の経費は実際に支出した経費なのに対し、給与所得控除は支出しなくても課税対象から控除され金額も大きいので、自営業者からみるとうらやましい控除となっている。

給与等の収入金額(年収) 給与所得控除額
162万5000円以下 65万円
162万5000円〜180万円以下 収入金額×40%
180万円〜360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円〜660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円〜1000万円以下 収入金額×10%+120万円
1000万円〜 収入金額×5%+170万円

 2つ目のキーワード各種所得控除は厚生年金、健康保険、雇用保険といった社会保険料控除と基礎控除、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、医療費控除などのことだ。これらも課税の対象から差し引かれ(控除され)、結果として納税額が減ることになる。

所得税の主な控除一覧
控除名 金額 概要
基礎控除 38万円 全員が一律に受けられる控除
配偶者控除 38万円 所得が38万円(控除前103万円)以下の奥さん(配偶者)がいると受けられる控除
配偶者特別控除 〜38万円 所得が38万円を超え76万円未満(控除前103〜141万円)の奥さんがいる場合の控除
扶養控除 38万円+α 高校生以上の子供や親の面倒をみていると受けられる控除。大学生、70歳以上は増額
寡婦控除 27万円+α 夫と死別、離婚した女性のための控除。条件により増額
寡夫控除 27万円 妻と死別、離婚し子を扶養、所得500万円以下の男性のための控除
社会保険料控除 その年の支払額 年金や健康保険、雇用保険を納めた分の控除
一般生命保険料控除 旧:〜5万円、新:〜4万円 それぞれの生命保険の支払いがあると受けられる控除。旧制度の契約の場合10万円が限度額。新制度の契約の場合12万円が限度額。
介護医療保険料控除 新:〜4万円 -
個人年金保険料控除 旧:〜5万円、新:〜4万円 -
地震保険料控除 〜5万円 地震保険の支払いがあると受けられる控除
医療費控除 その年の支払額−10万円 年間の医療費の10万円又は所得金額の5%を超えた分に対する控除

 この中で、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、医療費控除などは個人個人の差が大きい。特に独身と家族持ちでは控除額が大幅に異なっている。逆の言い方をすると、専業主婦の奥さんがいて、大学生の息子がいて、お婆ちゃんと同居していると独身の人よりお金がかかるから、税金を少し減らしましょうという仕組みになっている。

インフレ時代の確定申告
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