スマートブックに初めて記した意気込みは「Next Collaboration」――Evernote CEOが目指すものEvernote×MOLESKINE

Evernoteは、MOLESKINEとコラボレーションした製品「Evernoteスマートノートブック」を発表した。今回のコラボレーションがEvernoteやMOLESKINEについてどういう意味を持っているのだろうか。

» 2012年09月07日 09時00分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]

 既報の通り、Evernoteのフィル・リービンCEOが来日し、MOLESKINEとコラボレーションした製品「Evernoteスマートノートブック」を有楽町ロフト店内で発表した。詳しい内容や製品ラインアップはそちらを見ていただくとして、ここでは、今回のコラボレーションがEvernoteやMOLESKINEについてどういう意味を持っているのか解説していこう。


紙のノートでEvernoteのプレミアムアカウントは増えるか

スマートノートブックについて説明するフィル・リービン氏。自らもモレスキンユーザーであり文房具が大好きだそう
ユーザーからのサインのリクエストに答えるフィル氏。フレンドリーな人柄だ

 今回の製品の特徴は、MOLESKINEという世界的に知名度の高いノートが、Evernoteというこちらも全世界にユーザーをもつクラウドサービスがコラボレーションしたことだろう。先行する日本製スマートノート(スマートフォンと連動するノート)を追う形で登場することになったが、MOLESKINEもEvernoteも、それぞれのユーザー層を積極的に取り込む狙いだ。

 MOLESKINE側としては、それまでデジタルツールを中心に使っていたEvernoteユーザーに自らの存在を知ってもらえる。Evernote側も同様だ。とくに「Evernoteはもの自体を作っているわけではありません。それだけにEvernoteのロゴが入った商品が店頭に置かれることには一種の感慨があります」(Evernote)。つまり、文房具やノートなどが好きなユーザーに対して、Evernoteのことを改めて認識してもらう格好の機会ができたわけだ。

 「Evernoteスマートノートブック」に、3カ月間のEvernoteプレミアムアカウント利用権がついていることも重要だ。Evernoteユーザーならばご存じのように、プレミアムアカウントでは、月額450円または年額4000円で、アップロード容量の上限が1Gバイトまでに増えたり、取り込んだPDFファイル内の検索が可能になったりするなど、さまざまな機能が利用できるようになる。「スマートノートブック」を購入するだけで、3カ月間はこれらの各種機能が無料で利用できるようになるのだ。

 もちろんスマートノートブックのEvernote連係機能は無料アカウントユーザーでも利用できる。だからこそ、それまでプレミアムアカウントを使ったことのなかったユーザーに対し、その便利さを実感してもらい、そのうちの何%かだけでもプレミアムアカウントを契約してもらうことも大きな目的のはずである。

記入面もデザインもスペシャル版のスマートノートブック

 このような役割を担うEvernoteスマートノートブックは、そのデザイン面にも趣向を凝らした。まずノートは、ドットが連続する罫線を採用。Evernoteのアプリと連係することで、台形補正や暗い部分を補正するようになっている。補正によって記入した文字がより鮮明に認識できる効果もある。

 表紙デザインは、Evernoteのクリエイティブディレクターを務めるGabe Campodonico氏によるものだ。氏はNIKEやアップル、L.L.Beanなどのプロダクトデザインを手がけ、現在ではEvernoteのデザインを担当している。スマートノートブックは、ノートPCやスマートフォン、ペンやカメラといった各種アイテムが型押しされている。この手法自体は、従来からのMOLESKINEのジャーナルシリーズ各種と共通するものだが、全体のデザインやEvernoteカラーである緑色の縦バンドなどはGabe氏によってデザインされている。


「Evernoteスマートノートブック」のラージサイズ。Evernoteのスマートフォン用アプリと組み合わせることで、影の補正や台形補正などの機能を実現。Evernoteにアップすることで、手書きした情報のタグ付けや共有が実現する。現時点では、iOS用のみだが、将来的にはAndroidにも対応予定。右の写真はスマートノートブックの記入面。罫線はドットの連続となっている。上部中央のようなアイコンシールが付属し、専用アプリによってタグとして認識される。画像は通常のデジタルカメラで撮影

撮影したものをEvernoteに取り込んだところ。飛行機のアイコンを「トラベル」のタグとして認識している。右は撮影したイメージの影を自動補正しているところ。このカットで言えば、先ほどのカットで出ていた影がほぼなくなっている

 「Evernoteは、技術と同じぐらい(UIも含む)デザインを重視しています」(Evernote)ということだ。単にガジェットやギミックというだけでなく、洗練されたデザインを持ち、ユーザーに製品自体のデザインも受け入れられること。Evernoteにとっては、MOLESKINEとのコラボレーションはそういう点からも必然だったことがうかがえる。

ノートに最初に書いたのは“Next Collaboration”

 記者会見当日は、MOLESKINEのアレッサンドロ・ファソーリ氏とともに現れたフィル・リービン氏はスマートノートに関し、開発の意図やその経過などを説明した。

 「スマートノートブックを手に入れて最初に書いたのは?」という筆者の問いに「Next Collaboration」とリービン氏。スマートノートブック完成の時点ですでに次のことがリービン氏の頭の中にはあり、それは今も形になる途中なのだろう。次はどんな製品やサービスが出てくるのだろうか――。

著者紹介:舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

 手帳評論家・デジアナリスト。最新刊『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)が好評発売中。『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)は台湾での翻訳出版が決定している。その他の主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)などがある。誠Biz.IDの連載記事「手帳201x」「文具書評」の一部を再編集した電子書籍「文具を読む・文具本を読む 老舗ブランド編」を発売


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