「解決策」はたいてい副作用を伴います。それをしっかり把握しない限り、新しい政策を採用するわけにはいきません。電力に関して新しい政策を考えるのであれば、電力がそもそもどのような仕組みで作られて供給されているのかという「ベース構造」を把握して、そこから予想できる「副作用」を洗い出した上でなければいけないのです。
もちろんそれは非常に難しいのですが、それでもやらなければいけないことです。というわけで1つ、思いっきり簡略化した例をお見せしましょう。「ベース構造」を極端に簡略化してありますが、とりあえずこのぐらいでも、何もないよりは役に立ちます。
再生可能エネルギーが主力になることは現実的に見てありえませんので、少なくとも向こう50年は発電の主力は火力になります。したがって「燃料調達→発電→送配電→消費」というフローがベース構造として存在することになります。
ここで「発送電分離」論というのは、発電と送配電の事業者を分離することによって発電事業者間の競争を促し、電力供給体制の無駄を削減し、電力料金の低下を図る、という政策ですが、果たして副作用はないのでしょうか?
実は「ベース構造」をこの程度にでも分解しておくと、それぞれについて「副作用はないのか?」と考えられるのがいいところです。つまり
以上3つの質問を比べてみてください。質問1は、範囲を限定していませんが、質問2と3はそれぞれ「燃料調達」「電力消費」と範囲を限定しています。不思議なもので、こうして範囲を限定したほうが人は多くのことに気がつくものです。「気がつく」ためには考える範囲を限定する必要があり、限定するために「ベース構造を分解しておくこと」は非常に有効なのです。ちなみに「問題」は短期間でころころ変わっても「ベース構造」の部分は何十年も変わらないのが普通ですので、考えたことが無駄にならないのもありがたいですね。
以上「ベース構造・問題・解決策・副作用」というパターンの有効性をぜひ改めて認識してください。
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