うつ病の人を対象にしたリワーク施設を経て社会復帰できたTさんに話を聞いた。「私は私のままでいいのだ」と思えるようになったというTさん。どのような変化があったのだろうか。
こんにちは、リヴァの伊藤です。うつ病からの社会復帰支援を始めて、おかげさまで1年以上が経過しました。卒業生は40人以上にもなり、順調な人、そうでない人さまざまな事例があります。今回は今月末で「オムソーリ」(うつ病の人を対象にした当社の復帰施設。リワーク施設ともいう)を卒業する人のインタビューを紹介したいと思います。
Tさん うつ病を発症してからは3年ほど経っていました。波は多少あったにせよ、ずっと“低空飛行”の状態でした。発症のきっかけは職場における仕事の進め方の違いによる人間関係の軋れきです。根本的な要因は、自己肯定感がいつも低かったこと、認知(考え方)の偏り、閉鎖的でノンアサーティブ(非主張的)な対人関係が大きかったと思います。
自己肯定感が低いのは、親子関係が主な原因だったと思っています。自己嫌悪に陥ることが多かったですね。認知の偏りは「べき思考」(こうすべきだと思いこんでしまうこと)、白黒思考、過小評価、根拠ない推論が強かったように思います。対人関係も相手を8割、自分を2割に考えて、常に相手に合わせること、相手からどう思われることを優先していました。自己主張することは、わがままだと思っていたのです。
Tさん 一番は自己肯定感を持てたこと。理由は下記の5つにまとめられると思います。
それ前までは、うつになってしまった自分もこれまでの自分の人生も受け入れることができなかったのですが、上記のような理由やカウンセリングなどを通じて、自分を少しずつ受け入れていけたように思います。今は「うつになりながらもよく頑張ってきたな」と考えられるようになりました。昔から生きづらさを抱えながらとても不器用だったけれど、がんばって生きてきたなと。
ほかにも変わったことはたくさんあります。認知の偏りも、認知行動療法を通じて自分の認知の偏りと自動思考のパターンが見えました。否定的な考えが浮かんだ時に、本当にそうか? と反証的に振り返る癖がつくようになりました。
対人関係についても、自分の感情を大切にしてよいこと、人にはその権利があることなど、アサーション(他人に対して配慮的な自己表現)の考えを学んだことで以前よりも自分の感情を素直に表現できるようになってきていると思います。自分に自信がなく、相手に拒絶されたり嫌われたりすることが恐くて自己開示もできませんでしたが、大切な人たちにはオープンにしていく勇気を持ちたいと思っています。