前回に続いて、文章を書くときに「どこまで詳しく書くか、記述レベルの見極めが難しい」悩みについて、残り2つの改善策を紹介します。
アイデアクラフト・開米瑞浩の「説明書を書く悩み解決相談室」第38回です!
前回「相手が何をしようとしているかを考えて説明してますか?」で、分かりやすい文章を書こうとした場合に「どこまで詳しく書くか、記述レベルの見極めが難しい」と紹介しました。その原因は、おおまかに次の3つです。
そのうち、1つ目の「相手の関心事(目指す行動)が分かっていない」は、相手が何をしようとしているかを考えることで、改善できることを書きました。そこで今回は残りの2つについて書きます。
そもそも人間は、自分が持っている知識を元に、外部から得る情報を理解するものです。
この図でいう自分も相手も、それぞれの知っていることをベースにして、見聞きする情報を理解します。よって人に説明をするときには、相手がどれだけの予備知識を持っているのかを想定しなければ、一言も話せません。
例えば「どうして夕日は赤いの?」と聞かれたとします。その場合、質問してきたのが幼稚園児か小学生か中高生かで説明は違って当然です。幼稚園児に「光は色によって波長が違っていて、赤い光は波長が長い。夕方になると太陽光が空気中を長距離飛んで人の目に届くけれど、その間に赤以外の波長の短い光は散乱してしまうので、見えなくなる。だから夕日は赤くなる」と説明をしても、理解できるわけはないので、別な説明を考えなければいけません。
相手が大人でも本質は同じで、相手の知識レベルを想定して、それに応じて説明文を組み立てる必要があるのですが、これがなかなか難しいわけです。実は、相手の知識レベルを想定するには、自分自身が問題の性質をよく理解している必要があります。
つまり、原因の2つ目「相手の知識レベルが分かっていない」と3つ目「自分自身が問題の性質をよく分かっていない」は共通のものなんですね。そこで、対策も同じになります。
ポイントは「情報を断片化して、最適な順番になるように組み替えること」です。
断片化は、1文を短くすること。例えば前述の「夕日が赤い理由」についての説明を断片化すると、次のようになります。
元の文面に比べると、1文が短くなってますね。よく見てもらうと分かりますが、できるだけ「1つの文で1つのことしか言わないように」書きます(絶対に、というわけではありませんが)。
「光は色によって波長が違っていて、赤い光は波長が長い」では2つのことを言っているので、「1つの文で1つのことしか言わないように」分解してしまうわけです。これが、断片化です。
断片化すると文章がぶつ切りになるため、味わい深い名文ではなくなります。しかし、そもそもこの連載で目指している分かりすい説明書は文学ではないので、そんなことを気にする必要はありません。
それよりもずっと大事なのは、断片化すると、順番の組み替えがしやすくなることです。つまり、最初はA→B→Cの順番で書いたけれど、実はB→C→Aの方が分かりやすいのではないだろうか……? のような試行錯誤がしやすくなるんですね。
順番がまずいために分かりにくくなっている説明書は非常に多いものです。断片化して「最適な順番を考える」ことを習慣化するだけでこれは改善します。さらに、断片化して順番を考えることには大事なメリットがあります。それは、その過程を通じて、
のです。例えば「なぜ夕日は赤い?」への答を概要レベルの情報だけ書くとこうなります。
A:太陽光は白く見えても実際はさまざまな色の光が混ざっている
B:夕方になると赤い光以外は途中で消えてしまい、人の目まで届かない
C:だから夕日は赤く見える
「なぜ赤以外が途中で消えるのか?」の科学的メカニズムを省略して、このレベルの情報があれば間に合う場合もあります。概要レベルで話が済む場合は短く簡潔に説明できるので、概要と詳細は区別した方がいいんですね。ちなみに概要と詳細を区別するのはロジカルシンキングの基本中の基本でもあります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.