100円ショップの文具を割り切って使い倒すなら――『100円ショップ文具術』文具書評

文具の魅力の1つは何と言っても手軽さ。特に100円ショップで販売している文具は手に取りやすい。この100円ショップ文具を割りきって使い倒そうというのが書籍『100円ショップ文具術』である。

» 2012年07月18日 10時00分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]

 文具の魅力とはなんだろうか。機能やデザインも魅力だが、その1つは手軽さにもあるだろう。

 安価ゆえに手が出しやすく、使い方の工夫もしやすい。今回紹介するのは文具のそんな側面に焦点を当て使い方と応用、カスタマイズ方法を紹介する書籍『[整理・勉強・手帳・ノート]の100円ショップ文具術』(共著:文房具朝食会、多田健次、刊:ダイヤモンド社、以下100円ショップ文具術)である。


100円ショップは“もっともメジャー”な文具店

 仕事術のツールとして、文具は昔から定番的な人気を集めている。古くはB6サイズの京大カードから、最近の各種スマート文具に至るまで、常に机の上にあり、頭の中のアイデアを具現化する必須ツールとしての地位に揺るぎがない。成果物がほとんどデジタルデータになった昨今でもである。

 そんな文具だが最大の魅力は、手軽さであり安さだ。最近でこそモレスキンをはじめとする高級輸入文具や高価格かつ高機能な国産文具が相次いで登場しているが、多くの人が文具を愛している理由の1つは、価格の手軽さにもあることに異論はないだろう。

 そこで登場すべくして登場したのがこの『100円ショップ文具術』である。同書の前書きには、そのことを裏付けるデータについて以下のような記述がある。

 マイボイスコム株式会社が2009年に実施した調査によれば、文房具の購入先でもっとも多いのは、54.1%で100円ショップです。(『100円ショップ文具術』前書き)

 多くの人たちが100円ショップで文具を購入している理由は、そこで売っている文具が手軽で身近な存在であることが要因だろう。身近であり、求めやすい価格であり、ややもすると粗悪な印象もある100円ショップだが、『100円ショップ文具術』は100円ショップの文具を手放しで肯定しているわけではない。

 本書では、100円ショップの文具を厳選したり、アイデアにあふれる応用方法を考えたり、カスタマイズの素材として紹介したりし、整理や勉強、読書、手帳などに利用できる48の文具術のヒントを示している。そのまま使うのではなく割り切ることで、安価な100円ショップの文具を使い倒そうというわけだ。

アイデアが光る“転用技”の数々

マグネットシート各種。ダイソー、キャンドゥ、セリアで販売

 登場するのはいわゆる文具に限らない。例えば、最初に登場する粘着テープ付きマグネットシート。これをスチール製定規の表面に貼り付けることで、磁力を利用してスチール製机の側面にぴったりとくっつけることが可能だ。収納場所になやむスチール製定規の収納アイデアとしては悪くない。このほかにもふせんや電卓と組み合わせるワザも登場する。

 デスクがスチール製でない人向けの提案もある。それがブックエンドの活用だ。100円ショップのスチール製ブックエンドを導入。マグネットシートを併用することでメモスタンドや簡易領収書ホルダー、またテーブルタップと組み合わせてコンセントスタンドを作る例が紹介されており、やってみたくなること請け合いだ。

 そのほか、ワイヤーネットでのデスク裏面の収納などは、見てびっくりやって納得のワザだろう。



ブックエンドの応用ワザ。メモやテーブルタップ、クリップなどとの合わせワザだ。この手があったのかと、思わず膝を打ってしまった

厳選100円ノート――「ダイスキン」も

ダイソーで売っているモレスキン風ノート、通称「ダイスキン」。A6に加え、オリジナルなA7サイズも

 文具の定番であるノートも100円ショップのアイテムときくと品質への不安がよぎる。『100円ショップ文具術』では厳選して紹介。その1つが「ジャバラ式つながりアルバム」だ。

 基本的にはジャバラ式になったアルバムで、箴言を書いて落ち込んだときに見直したり、収納機能を生かして目標を書いたカードを入れて閲覧したりといろいろな活用法を紹介している。

 一部の文具好きには有名なあの「ダイスキン」も登場する。外見はモレスキンそっくりだが手触りなどが異なる。なによりも価格が手ごろなので、どんどんメモが書ける。またオリジナルにはないA7サイズは、小さくてメモに適している。

 オリジナル版にあるような“物語”はないものの、ある意味ではオリジナルよりも、メモ帳本来の魅力をもったアイテムかもしれない。

文具との新しい付き合い方

1台2役、一石二鳥のクリップ電卓。こんなものがあったのかという驚きもあるが、なかなか便利そう

 このほかにも、100枚100円の情報カード(5×3サイズ)やカードケース、目標達成をサポートするカラフルなシールなどが登場する。

 「A4ホワイトボードステッカー」は、ノートに挟んでおいたり、電話のそばに置くことですぐにメモがとれるし、電卓とクリップが合体した「クリップ電卓」のようなアイデア製品も出てくる。モバイルPCやスマートフォン活用に役立つテーブルタップやUSB充電ケーブルなどが100円ショップでも手に入るアイテムとして紹介しており、ぱらぱらとページをめくるだけでも飽きさせない。


A4ホワイトボードステッカー。ノートに書くにはちょっとというラフなアイデアをすぐさま書き留めたいときに便利

 これらのアイデア商品的なアイテムは、一般の雑貨店だと一芸の割に高価になりがちだが、100円ショップなら値札を見ることなく気軽にレジに持って行ける。『100円ショップ文具術』に掲載している“ワザ”を読めば、自分なりの活用法を編み出したくなるはずだ。

 100円ショップと聞くと、その品質や品ぞろえにはどうしても粗悪品的なニュアンスがつきまとう。だが『100円ショップ文具術』に登場するアイテムを見ていると、それが実に使えそうな文具に見えてくるから不思議だ。

 もっと別の見方をすれば、これは“100円文具ベストヒットカタログ”と言えるかもしれない。確かに手ごろだが玉石混淆(こんこう)とも思われる100円ショップの文具の中で、使えるものだけをチョイスしたセレクトカタログ兼活用ガイドではないだろうか。これらのアイテムを脇役として上手く活用することを提案する『100円ショップ文具術』は、文具や100円ショップとの新しいつきあい方をも示唆しているのである。

著者紹介:舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

 手帳評論家。最新刊『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)が好評発売中。『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)は台湾での翻訳出版が決定している。その他の主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)などがある。誠Biz.IDの連載記事「手帳201x」「文具書評」の一部を再編集した電子書籍「文具を読む・文具本を読む 老舗ブランド編」を発売


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