名刺を減らせば人脈が増える!? コンサルタント荒木亨二の作り方名刺は99枚しか残さない(1/3 ページ)

名刺を減らして人脈を活用することを提唱した書籍『名刺は99枚しか残さない』を書いたコンサルタントの荒木亨二さん。その独特な仕事術はどのように出来上がったのだろうか。

» 2012年06月04日 11時00分 公開
[文:青山祐輔, 聞き手:鷹木創,Business Media 誠]

 多くのビジネスパーソンにとって、日々の仕事の中で積み上げてきた名刺の数こそ、自らの仕事の歴史であり、築き上げた人脈の証でもある。それなのに荒木亨二さんは、あえて「名刺は99枚しか残さない」と宣言し、そして実行した。あまつさえそのノウハウを書籍として出版までしてしまった。

 荒木さんは、多くの業界にまたがってコンサルタントを行うフリーランサー。その仕事の内容や考え方、ビジネスノウハウなどの一端は誠ブログからもうかがえる。そこには現場の経験によって裏打ちされた、自ら築き上げてきた独特の思考が見え隠れする。

 そんな荒木さんは、いったいどのように仕事のキャリアを重ねてきたのだろうか? そこで“荒木亨二の作り方”を聞いた。


アルバイト先での“社内受注”が転機に

 そもそもどんな社会人経験を歩んできたのか。「恥ずかしながら」と話し始める荒木さん。「大学を卒業して半年間、会社員をしていたんだよね」。1996年に大手の化学繊維メーカーに新卒で入社。当初から幹部候補として期待されていたのだが「40年勤めて年収2000万円くらいか……」と考えた。「オレにはもっと価値がある」と思っていたのだ。

 大企業でそのまま勤めていれば数千万円の年収も夢ではなかった――だが、荒木さんは会社をわずか半年で辞めた。ただ、辞めたからと言って何ができるわけでもない。若いころにありがちな「オレなら何でもできる!」という“根拠なき自信”に荒木さんも取りつかれていたのかもしれない。会社を辞めてから20代後半までの数年間はアルバイトの生活が続く。転機は、奥さんが勤めていたPR会社を手伝うことになった時だ。

 この時の仕事は、PR会社のクライアントに報告するためのリポート作り。「どこそこの新聞に掲載されました」「テレビ番組で紹介されました」など、そのクライアントに関連することが掲載されたり紹介されたりした実績をまとめて報告書にするのだ。

 「アルバイトみたいなものだったんだけど、そのクライアントの掲載実績だけでなく、競合他社や業界に関連する記事も一緒に報告するようにしたんだよ。さらに、こうしたらもっと売れるとか、今の消費者はこう考えているとか、独自リポートも追加したんだ。時には企画書も。クライアントから頼まれてもいないのに、勝手なサービスとしてね。そしたらそれがウケてさ」

 簡単な工夫だが、社内でそんなリポートを出している人はいない。またたく間に「荒木のリポートはすごい」と噂になった。クライアントだけでなく、社内でも評判になり、いつの間にか「PR会社の社員がオレのところに仕事を頼むようになったんだ」

 こうして“社内受注”し始めると、社員よりもアルバイトの荒木さんの方に仕事が来るようになった。この時に実感したのが「同じ土俵で手間ひま掛けたり、きちんと相手とコミュニケーションを取ったりすれば、社員でもないオレにも仕事が回ってくる。これは自分のレーゾンデートル(存在価値)になる」ということ。大企業を辞めて数年、ようやく「自分自身を磨いていれば認めてくれる人がいて、自分の市場価値が高まる」ことに気付いたのだ。

 当時、バブル崩壊後の就職氷河期真っただ中。社員であっても、この先自分がどうしたらいいか分からない時代だった。「そういう端境(はざかい)期に、どうすれば他人に認めてもらえるのか、言い換えれば、どうすれば自分の個性を発揮できるのか、そのビジネス感覚をつかんだのは大きかったね。フリーランスになる“修行”ができてよかった」

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