欧米で進む私物スマホの業務利用、日本は33%にとどまる

日本の74%のモバイルユーザーが私物端末を業務に活用するBYODを求める一方、実際に許可しているのは33%にとどまった。ジュニパーネットワークスの調査からは企業のモバイル活用状況が見えてきた。

» 2012年05月22日 18時55分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]

 スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末が普及するにつれ、ビジネス現場での関心が高まっているのが社員の私物端末を業務でも活用するBYOD(Bring Your Own Device)という動きだ。ジュニパーネットワークスが2012年3月に実施したモバイル端末ユーザーの世界動向調査「Trusted Mobility Index」によると、世界企業の56%がBYODを許可していることが分かった。

 一方日本については、BYODを許可しているのは33%。個人情報保護法への対応や情報漏えい事故といったセキュリティや管理面の不安から、関心度の割には導入が進んでいないのが実態のようだ。

 調査は米国、英国、ドイツ、日本、中国の5カ国の計4037人。18歳以上の一般社員約2500人とIT管理者約1500人が対象だ。企業規模は中堅・中小企業から大企業までサンプリングした。

1人平均3台の端末を用途に合わせて使い分け

 まずモバイル端末の利用状況は、ノートPC、タブレット、スマートフォン、携帯電話など、インターネットと接続する機器を1人当たり平均3台所持していた。全体の18%については、5台以上と回答している。

 「これまでは1台の端末で複数の業務をこなす風潮にあったが、今は用途に合わせて複数の端末を使い分ける時代。スマートフォンなどの普及で、モバイル端末への依存度は高まる傾向にある」(ジュニパーネットワークスのモバイル・セキュリティ・ソリューション・マネージャーを担当するデミトリス・ブース氏)

 モバイル端末を使う場面については、メールや通話などプライベートでの利用に加えて、会社のイントラネットにアクセスしたり仕事のデータを扱ったりと、全体の90%が自身のモバイル端末から何らかの機密データにアクセスしていることが分かった。76%については、オンラインバンキングや医療情報など、個人の機密情報を扱う目的でモバイル端末を利用していた。

74%のユーザーからBYOD導入を求める声

 BYODについては、全世界のユーザーのうち56%が会社で許可されていると回答。一方、日本は33%と5カ国中で最も導入率が低かった。ジュニパーネットワークスの近藤雅樹統括部長(マーケティング部)は「他国と比べると遅れているように見えるが、むしろ現状で33%というのはわれわれの予想よりも高かった。というのも、日本企業はセキュリティに対していい意味でも悪い意味でも慎重で、私物端末から会社のデータにアクセスしたり重要情報を扱ったりすることに抵抗がある」との見方を示した。

近藤雅樹統括部長

 近藤氏の言う通り企業サイドはセキュリティに慎重だ。だが現場はどうだろうか。調査によると日本企業の74%のユーザーが、会社がBYODを認めて必要なセキュリティ対策をとってほしいと回答。さらに端末の種類については、59%が型落ちした旧モデルなどではなく「スペック、機能、デザインが満足する端末を使いたい」といった要望を持っていた。一方、IT管理者からは42%が「現場の社員からBYOD認めてほしいと言われ、プレッシャーに感じている」との意見も見られた。


スマートフォンよりも携帯電話の業務利用が多い日本

 BYODを導入する企業は、具体的にどのモバイル端末を許可しているのだろうか。調査によると、世界的な割合ではiPhoneが48%、Androidが42%、Blackberryが41%、タブレット端末が47%(OS問わず)、携帯電話が43%。日本はiPhoneが26%、Androidが26%、Blackberryが5%、タブレット端末が23%、携帯電話が48%だった。

 日本の携帯電話は他国と比べて機能が豊富な機種が多く、中にはスマートフォン勝る機種があることが要因だという。

“勝手にBYOD”は少ないが安全対策は不十分――日本

 他4国と日本を比較した回答で、興味深い結果も分かった。私物端末を会社に無断で使用しているユーザーの割合が全体では41%に対し、日本は18%。この結果を反映してか、私物端末から企業データにアクセスしたことが原因で、セキュリティ上の問題が発生したことがあると答えた人の割合は、全体が30%、日本は17%にとどまった。

 このように、日本ユーザーはモバイル端末の職場での業務利用に対して、慎重な姿勢であることがうかがえる。しかし安全面については、十分な対策を講じているとはいえないようだ。

 安全対策に関する設問では、モバイル端末にデータをダウンロードする前に必ず規約を確認すると答えた日本ユーザーは56%。アプリケーションをインストールする際、データセキュリティ機能と設定を確認した上で手動設定を行うユーザーは49%、安全なWi-Fiネットワークのみを利用すると答えたユーザーはわずか14%だった。

 ジュニパーネットワークスではこの結果を受けて「会社のセキュリティポリシーに沿ってどんな対策が必要なのか、ウイルス対策ソフトは入れているか、ネットワークの設定はきちんと行っているかなど、安全対策への意識を高める必要がある」とコメントしている。

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